編集者から経営者になる。クロスメディア・パブリッシング小早川社長が語る、サラリーマン編集者には負けない自信と覚悟

「人間の悩みは全て本で解決できる」

 これが私、本to美女編集部 森井の持論だ。

本企画、編集部が行く!「徒然、読書旅」では、読書家の書斎やオフィスを尋ね、読書論を聞く。

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いきなり私事で大変恐縮だが、学生時代、『銀座の教え』(クロスメディア・パブリッシング)という本を読み、銀座に興味を持ち、いてもたってもいられなくなり実際に銀座で会員制のBarでアルバイトを始めた。また『オタクの息子に悩んでます』(幻冬舎新書)という本を読んで「美女と一緒に、本であなたの悩みを解決します」という弊メディアの書評企画のコンセプトの発想を得た。

私が今まで生きてきた人生の転機にはいつも本があり、本が答えを導いてくれた。

そこで今回「徒然、読書旅」の第一弾として、「本が悩みを解決してくれる」ということを伝えるべく、まさに「働く人々の役立つ」ビジネス書を作っているクロスメディア・パブリッシング社へ伺った。

社長・小早川幸一郎さんの人生において、「どんな本を読み、その本を読むことでどう変わり、いかに仕事に活かしてきたのか」を尋ねてみた。

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小早川 幸一郎(こばやかわ・こういちろう)

1975年 千葉県生まれ。コンピュータ書、ビジネス書の編集者を経て、2005年に株式会社クロスメディア・パブリッシングを設立。http://www.cm-publishing.co.jp/

影響を受けた本は、ない

__自分の人生や価値観を形成した“ジブン本”は何ですか?

まず始めに言っておかなければならないのは、本を紹介する企画なのに申し訳ないんだけど、あまり自分は人に影響されないタイプなので、価値観が変わるような決定的に影響された本はありません。

ただ読む本ごとに勉強させてもらっています。例えば、誰も知らないような営業の本でも、この人すごく良いこと言っているなぁと、得るものがあったので明日仕事で試してみようとか、試してみて実際に売り上げ上がったぞ、といった小さな感動は日々本からもらっています。

自分の限界を知ることと、可能性に気付くことの順序が逆 

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__何か特定の思い入れの本があるというよりは読んだ本からその都度吸収し、学んでこられたのですね。

はい。私は30歳になる一日前の29歳で独立しました。20代前半から後半まではひたすら仕事。あんまり先のことは考えず、朝から晩まで修行だと思って仕事をしていました。

20代はひたすら仕事をして実力を付けるしかない、自分の可能性を探るしかない。

それなのに、みんな順序が逆です。

若いと無限に可能性があってなんでもできるみたいな感覚になっているのに、30代とかになって仕事していくうちに自分の限界を知る。

これは逆だと思います。

自分の場合はとにかく頑張って、年を取るに連れて自分の可能性がもっと増えていきました。

__可能性が広がっていく人と限界が見える人の違いは何なんですか?

その差は、ずばり量。仕事量です。量をこなさない人はだめ。

小学校で頭が良かった人でも勉強しなくなって落ちていく人もいれば、小学校の頃はそうでもなかったのに中学からすごい勉強して伸びていく人もいたでしょう?

仕事も同じ。そしてそれの一助となるのが本です。

ビジネスパーソンなら本を読むこと。先人たちの成功と失敗が書いてあるので、レバレッジがききやすい。

ひたすら頑張って手探りで身につけたことも、実は1500円くらいで本に書いてあったりする。「なんだ、もっと早く知れば良かった」と思うことは多々あります。それぐらい本は役立つのです。

そして、スキルや能力がつくと考える余裕が出てくるので、「こういうことがしたい!」と考える余白が出てきます。

そうなった時に、会社でこのまま出世するのか、やりたいことはこれだったのかと転職を考えるのか、自信がついたので別の場所で自分の可能性を試そうと思うのか。僕の場合はそれが起業でした。

自分の課題を解決するために本を作っていた

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__編集者だった頃の本作りにおいての信条は?

「自分が買いたい本を作る。」

これです。今でもスタッフによく言うのですが、君のような人は巨万(ごまん)といる。自分が本当にお金を出してでも欲しい本をつくれよ。その方が、変にマーケティングをしたり、流行にのっかるよりも売れる本が作れるよ。

ビジネスマナー、営業、コミュニケーション、タイムマネジメント、独立・起業。私が20代の編集者だった頃は、そういう自分の課題や興味のあることに関しての本ばかり作ってきました。そういうことって意外と学校で教えてくれないですからね。

20代で軍艦を買えるなら、自分はもっとできるはずだ~「歴史書」で奮い立たせる~

__冒頭で決定的に影響された本はないと言っていましたが、今までも好んでよく読む本や本のジャンルはありますか?

歴史作家の本は好きでよく読みますね。

津本陽、童門冬二、半藤一利。特に司馬遼太郎『世に棲む日日』が好きです。

幕末の長州藩の話。前半の主人公・吉田松陰から始まって、吉田松陰が亡くなってからは高杉晋作が後半の主人公。もう二人ともメチャメチャです。高杉晋作なんか、藩に勝手に軍艦を買ってますからね。

明治維新の主人公って皆20代で表舞台に登場しているんですよね。維新の三傑の西郷隆盛や大久保利通、木戸孝允だって20代、30代で歴史に残るような偉業をなしています。坂本龍馬は31歳で死んでいるけど、それで日本を変えるすごいことをやっているし。長州の吉田松陰や高杉晋作だって、20代で風のように散っていきました。

こういう人達は純粋にすごいなぁと、偉人ほどではないけど自分はもっとできるはずだと思わされます。

周りは会社がどうだとか、上司がどうだとか言っているけど、そんなの言い訳に過ぎない。

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だけどそういうことを許してくれる上司がいて、それに対して自分の命懸けて頑張りますって言って。

__世界観がいいですね。男なら読んだら必ず燃えます。

そうなんですよ。何より元気をもらえる。読んで自分と重ねることで元気をもらい、奮い立たせることができるんです。

読んで学んだことはすぐ試す~「ビジネス書」はこう仕事に活かせ~

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__20代の頃は目の前の仕事に活きる本を読んでいたと言っていましたが、経営者になってからはどういった本を読まれてきましたか?

起業家や経営者の自伝が好きでよく読みます。AppleやGoogle、Amazon、Microsoftなど革新的な企業と創業者についての本やジャック・ウェルチやルイス・ガースナーなどのプロ経営者の本、孫正義さんや柳井正さんなどの日本の起業家の本、同世代の起業家の本、ユニークな経営者や企業の本など、毎週、何かしら経営者や企業の本は読んでいます。

本を読むだけではなく、経営者になってからは、自分のような中小、スタートアップの経営者に向けた経営の本ばかり作っていました。そして、取材と銘打ってビジネスのプロフェッショナルに会っては、経営の問題を解くヒントを教えてもらっていました。編集者、出版社冥利につきます。

学生の頃に憧れたリチャード・ブランソンや、経営者となってから経営者の参考としている稲盛和夫さんには、出版前に原稿を読んでいただき、本の推薦文をいただきました。うれしかったですね。

サラリーマンのときも起業してからも、本の内容をシュミレーションしながら読みます。

__自分だったらどうするかと?

はい。自分がうまくいかなかったのはこれをやっていなかったからなのかとか。これは良い言葉だな、このテクニックを上司に使ってみようとか、読み終わったらすぐやってみて、これは友達に教えてみよう、こっちはスタッフに教えてあげようと、考えながら読みます。

__具体的に何か1冊あげるならば、どの本をどう仕事に活かしてきましたか?

うーん、そうですね、例えば皆さんが読んだ本でいったら『スティーブ・ジョブズⅠ・Ⅱ』

この本からは、「デザインへのこだわり」や「商品ラインナップを絞り込む」などが参考になりました。言葉だと、「消費者は自分の欲しいものを知らない。だから見せないとわからない」ということを学び、実際に試してみました。

40代は、スキルよりコンディショニング

__経営者になられて10年ちょっと。またさらに読む本のジャンルは変わってきましたか?

変わってきましたね。今「イキイキと働く世の中を作る」をコンセプトに本を作っています。疲れている人、多いですよね。私もですが(苦笑)。

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私はずっとサッカーをやっていたのですが、試合はコンディションが悪いと良いパフォーマンスを発揮できない。仕事も試合みたいなもので、しっかりと睡眠を取って、栄養のある物を食べていないといい仕事ができないし、心も病んでいたら力を発揮できません。

そこの仕事以外の周辺の生活習慣の改善というところをいま攻めていて、そっち系の本ばかり読んでいます。脳科学、ダイエット、ヨガ、マインドフルネスとか。

うちの本で恐縮ですが『考えすぎる脳、楽をしたい遺伝子』がおもしろいですよ。

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脳は楽しいことをしたい。酒、会話、ゲームする、朝までカラオケする。

でも体は楽したいんです。酒を飲んでも遺伝子的にはもう飲みたくないよ、朝までカラオケしててももう帰ろうよ、家帰って寝ようよとか。

この脳と遺伝子のバランスが崩れると鬱になるんです。最近は特に働き過ぎなスタッフにもっと休んだ方がいいんじゃないの? と言うようになりました。

あとは脳科学と言えば、池谷裕二さんの本はおもしろいですね。最近『脳はなにげに不公平』を読みました。

「目の前の人のマネをすると好感度が上がる、上流階級の人のほうがモラルが低い、手を握るだけで記憶力がアップする」など雑学としても会話に出せます。

今読んでいる本だと、講談社ブルーバックスの『ジムに通う前に読む本』。今日も朝7時からジムに通っていたんだけど、この本のおかげでトレーニングの正確な順序を知れました。

今までは走ってからマシンとかをしてたんですが、これを読んでからは、マシンをしてから走ったほうがいいということに知りました。

マシンをして燃焼をしやすい体にしてから、走って有酸素運動をして燃焼させたほうが良い。またどこを鍛えるためにはどの機械を使って、どう鍛えればいいのか等。

体と脳はつながっていて、仕事の集中力や記憶力を上げるには運動をすべきと、科学的にや、医学的に書いているので参考になります。

何十年も生きてきて、自分の体のことは自分のことだけど、意外と知らないことばかりです。若いときはみんな外への興味ばっかりだけど、年を重ねると自分の内なるもの、セルフ・インサイトでもいうんですかね。そういう方向に向かっていくと思います。

編集者よりプロフェッショナルでいたい

何か健康のことばかり話していると、年寄りみたいな感じですが、ハードワークするための健康ですから。

私は若いときから出世をするために働いてきました。私が言う「出世」とは、“世に出る”という意味です。会社で部長になったとか、給料が上がったとか、正直、そんなことはどうでもよかったです。そんなことより、世の中で評価される価値ある仕事、事業をつくりたいという思いで朝から晩まで働いてきましたし、それを実現するために起業して自分の会社をつくりました。「あの仕事やったの俺だぜ」とか「あの商品、俺の会社のだぜ」ってカッコイイじゃないですか。ただそれだけ。

よく、会社や上司、仕事に不平不満がある人がいますが、じゃあ自分でやればいいんじゃんって思いますし、生意気言っている人にはそう言いますよ。まぁ、そうは言っても会社経営には覚悟が必要ですから、そう簡単にはいかないかもしれませんが。会社は法務局に書類を提出すればつくれますが、続けるのは大変ですしね。

私も創業時の1年ぐらいは無給、無休で働いていましたからね。まぁ、そんな感じで自分のお金と責任で本を作っていますから、サラリーマン編集者にはまったく負ける気がしません。私より売れてる本をつくっている編集者は世間にはいますが、ビジネスマンとしては負ける気がしませんね。

センスとは選ぶこと

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だからこそ新しいことをしてほしいので、スタッフ採用では「センス」のある人を採用するようにしています。

__センスがあるとは具体的にどういう人のことを言うですか?

「センスとは選ぶことなんです」。

例えば、恋人や服、住む場所だってそう。その選び方。

著者、タイトル、デザインではもちろんのこと、センスがない人は特に二番煎じが多い。オリジナリティがない。売れている著者を選ぶとか。出版社をやっているからには、二番煎じだけはやりたくないよね。

当社のビジョンは「あらゆるメディアを通じて働く人々に役立つ事業を行うことで、世の中に類を見ない企業となる」。出版事業は過程でしかありません。

編集者として思われるのは、あんまり好きではなくて、今日もほんとは本の話より経営者としての話をしたかったんだけどね。でも、経営者としては自分はまだまだ偉そうに語れる立場ではありませんが(苦笑)。

だからこそ、出版社と思われたくないし、終わりたくない。出版社で終わらせるつもりはありません。

 (文・森井悠太/カメラマン・湯川うらら)

世に棲む日日〈1〉

  • 著者:司馬 遼太郎
  • 出版社:文藝春秋
  • 発売日:2003/3/10

 

スティーブ・ジョブズ I・II

  • 著者:ウォルター・アイザクソン
  • 出版社:講談社
  • 発売日:2011/11/5

 

考えすぎる脳、楽をしたい遺伝子

  • 著者:長沼 毅
  • 出版社:クロスメディア・パブリッシング
  • 発売日:2015/4/23

 

脳はなにげに不公平 パテカトルの万脳薬

  • 著者:池谷裕二
  • 出版社:朝日新聞出版
  • 発売日:2016/3/18

 

ジムに通う前に読む本―スポーツ科学からみたトレーニング

  • 著者:桜井 静香
  • 出版社:講談社
  • 発売日:2010/8/20

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Myコーデ

WRITERこの記事を書いた人

森井 悠太

「本to美女」副編集長。 1990年生まれ。慶應卒。一浪、一留、一休学と余すことなく学生生活を送る。2016年1月から株式会社SENSATIONにジョイン。 芸能事務所のスカウトマンを経験。渋谷でNo.1スカウトマンになれた経験を書き、第10回出版甲子園で準グランプリを受賞。モラトリアム症候群で、某大手IT企業の内定を入社ギリギリで辞退。結果、ニートとなる。その後、銀座で会員制のバーテンダーを経て、「本to美女」に参画。 キャッチコピーはアクティブなヒキコモリ。生粋のHONZ被害者でもある。