ディスカヴァー・トゥエンティワン 干場弓子社長が語る、若者を不幸にしている嫌いな言葉とは

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「師匠があなたの悩みを解決します」がコンセプトの「師匠語り」。記念すべき一人目の師匠は、ディスカヴァー・トゥエンティワンの干場弓子社長。出版不況、本が売れないと叫ばれる中、『超訳・ニーチェの言葉』で100万部以上のヒットを飛ばし、ベストセラーを次々と世の中に送り出し、常に新しい価値観を創造し続けている出版社だ。

「師匠語り」は書評コーナーと連動企画でもあり、今週のテーマは「明日を見据える」。あの勝間和代氏や小宮一慶氏の仕掛人でもある干場社長にキャリアプランについて伺ったら、早速師匠らしく尖った持論が飛び交った。

若者を不幸にしている最も嫌いな言葉とは

最初から申し訳ないんですけれど、仕事にまつわる私の嫌いな言葉ワースト3のひとつが、「キャリアプラン」なの。嫌いというより、若い人たちを不幸にしている言葉といった方がいいかな。元々アメリカからきた言葉で、人材開発系の会社があるときから広めた言葉じゃないかと思うんですけれど、これが就活生や若い社会人を不幸にしている。

そもそも、自分はこの仕事をやりたい、こういうキャリアを築きたい、と最初に考えるのは、エントリーシートを書くときでしょうか。いわゆる「自己分析」をしながら、ね?

でも、学生なんだから、まだほとんど社会のこと、業種、職種の実際がわかっているわけではない。にもかかわらず、面接で自分を他の就活生と差別化するためにも、自分の強みを見つけて強調していかなければならない。そうやって、いつの間にか自分の強みというものを、ある意味「捏造」していくわけです。

まあ、それで無事入社できたら、それはそれ、自分には自分でもまだ気づかない才能があるかもしれない、というか、それこそものすごくあるはずで、それは自分では考えても見なかったような仕事を命じられたり、任されたりする中で、体験的に知っていくことだと思うんですけれど、ところが、「自分はこれをやりたい」と決めると、それとは外れた部署に配属になったりすると、「私のキャリアプランが……」「私は企画をしたいと思っていたのでその仕事はできません」「こんなはずじゃなかった。本当に私がやりたかったことはこれじゃない」となってくる。

でもね、それって自分で自分の可能性を潰すことでしょう? だって、学生時代にはまったく知らなかった世界が広がっている。知らないことだらけ。その中で初めて気づく自分の才能もある。

いずれにしろ、人生も仕事も、思った通りにはいかない。だから楽しい。だって、決めたときから、日々成長するわけだから。なので、可能性を見つけることを邪魔するようなキャリアプランなんて考えるな!と言いたいの。

私自身、自分が社長に向いてるなんて、思ったこともなかった。受けてから数年もそう思っていた。ただ、頼まれて、やることになり、そして、周りを見回してみれば確かにわたしのほうができるみたい、ほかに譲れる人がいないから続けたほうがいいか、そんなふうに思って続けてきた。そして、やるからには責任を果たさなきゃ、と、目の前のことに一生懸命にやっていたら気付けば今になっていました。

別に、こうやって社長になって取材を受けたい、高い服を買いたい、立派なビルにオフィスを借りたいとか、そういう野望や目標は一切ありませんでした。ただ、途中から案外自分に向いているかも、と思い始めました。基本的に人から命令されるの、嫌いだし(笑)

だから、自分の将来について、あれこれ迷っている暇があったら、「目の前のことに情熱を傾けること」。これがすごく大事です。

Have toを「Want to にする

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だいたい、「私の本当にやりたいことじゃないみたい」とか言って今の仕事にやる気を失っているときというのは、ただ、目の前のことから逃げているだけの時なんです。そういうときは、やりたいことがやれる環境にいっても、少し経つと、やっぱり同じことを言い出す。「これは僕のやりたいことではなかった……」

内定者研修などでよく言うのは、「普通の人は「Want to」を「Have to」にしてしまう。でも、優秀な人は、「Want to」をずっと「Want to」にしていられる。でも、もっと優秀な人は、「「Have toを「Want to にする」と。

例えば、「野球をやりたい」「ピアノを習いたい」となって自分から習いに行ったり、部活に入ったとしても、いつも楽しんで練習に行くと思う?「練習しなければならない」となってしまうでしょう?

だからやりたいことにこだわらなくてもいいんです。とりあえず責任感でやっていたけどやりたいことになっているのって、優秀かどうかはともかく、結構幸せよ、私自身のことですが(笑)

心配しなくても大丈夫。本当にやりたいことだったら、もうやってるはずだから。本当にやりたいことは、全てを投げ打ってでもやってしまうのが、人間だから。

以前、うちの会社の本を読んで、会社を辞めて20代後半でハリウッドへ行った人がいました。売れっ子にはなっていませんが、有名な映画やドラマなどに出ていたりします。大スターになっていないけれど、その人は本当にやりたいことをやっています。そうなったら、もう誰にも止められない。その人自身にも。

思ったことと違ってもとにかく一生懸命やってみる。その先に初めてやりたいことが見えてきます。今やっていることがやりたいことになっていきますから。そして、不思議なことに、そうやって、これが自分の天職だ!と思った頃に、また別の仕事、別のチャンスが降ってきたりするものです。

何かを一生懸命やっている人は、他のこともできそうで、それを見た人が、チャンスを連れてくるのです。そしたら、「いや、これって決めたから」なんてしがみつかないで、挑戦してみる。多くの成功者は、そうやって、当初思っていたのとは違う、グラフに書いたら、折れたりしながらも、最終的には、目指す地点に着いていたりするものだとおもいます。

チャンスは人が連れてくる

___人生に悩んだときに僕(本to美女編集部 編集長:森井)は本を読む。社員さんが一人また一人と辞め、残り一人になったこともあると聞いたが、干場社長が会社や自分の将来について迷った時、どうやって未来を見据えていったのか?

今お話ししたように、つねにチャンスは人が連れて」きます。勉強そのものはチャンスを連れてきてはくれない。では、なぜ勉強するかというと、「チャンスを連れてきてくれる人」に出会える自分であるため。

 森井君が勉強しているかどうかは別としても、普通の若者とは違うものを持っていると思うからこうしてお会いしているわけであって、それが普通の勉強していない大学生だと付き合わない。そもそも、私に会いに来ようともしないでしょうし。

だからこそ、チャンスを連れてきてくれる人に出会えるような自分を育てておかなければならないの。出会ったときに、学び取れるだけの感性を養ってこられたか。そして出会った人から120%学ぶという素直さがないと、出会いをチャンスとすることはできないでしょうね。

でもね、ここで誤解してほしくないのは、偉い人に会うためには自分も偉くならないといけないとか、今はまだ会える自分じゃない、とか言って、会うための準備に一生懸命になるのもいけないの。勉強というのは、地位とか資格といったものではなくて、その人なりの問題意識とか感性とか、そういうことです。

人を一瞬で不安にする、たった二つのこと

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いずれにしろ、迷ったら、行動しろ、今に集中しろ、ということですね。
一瞬で不安になれる方法知ってる?
それは「先のことを考えること」と二つに分けること」

いま、若いひとは、とくに就活生は、不安だとおもいます。当然です。この先、日本はどうなるのか? 自分の老後は年金ないだろうし、とか。。でも、私の青春時代だって、くらーーい昭和だったのよ。ベトナム戦争とか冷戦とか原爆で地球おしまいとか、オイルショックで就職は超氷河期だったし。でも、若かったから、自分が老人になる人のことなんて想像できなかったのね。

先のことを考えるとどうしても不安になるのです。今、目の前にあることを一生懸命やっているとおのずと道は開けます!
一瞬で不安になれる方法には、もう一つあります。
それは、「二つに分けること」!

幸せな瞬間は、いろいろな幸せがあるとは思いますが、誰かと一緒にいて気持ちがある瞬間、一体感があるときってとても幸せじゃない?
一方で、不幸になったり、不安になったりするのは、誰かに嫉妬をしたり、どっちが勝っているか負けているかとか。どこかで分けるときだと思いません?
そうすると、必然的に「ひとりぼっちに対する恐怖」がついてくる。そして、不安になる。

あなたと私、のように。二元論で二つに分けることで、思考は発達してきましたが、仏教的に分かれたものを一つにするのが、いわば「悟り」じゃないかと思います。そして、それが人間の幸せの本質だと思います。

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そうそう、先ほどキャリアプランの話をしましたが、もう一つの嫌いな言葉。それはワークライフバランスです!(笑)

お金のために自分の時間を売って働くという仕事ももちろんあるわけですが、少なくともこのサイトを見ている人達はそうではないと思うの。人生の起きている時間のほとんどを過ごす仕事こそ、成長の場、人生の一番の楽しみの場、自己実現の場としなかったら、つまらないでしょう?

私はプライベートで友人と話している時にビジネスアイデアをもらうこともあるし、子育てからも学んできた。デパートで買い物している時や映画を見ていても何かしら思いつく。もちろん、逆もある。仕事で学んだことが個人の生活を豊かにしてる。

でも、それは出版だからじゃないと思います。どんな仕事でも、そういうことってあると思います。

二つに分けた瞬間に人は不幸になるといいましたが、まさに、ワークライフバランスというように、ワークとライフを二つに分けた瞬間から、不幸が始まる。一体感が失われてしまうんじゃないでしょうか。

師匠、語る

最後に、最後の三つ目の「嫌いな言葉」をあげます。それは、「ロールモデル」!

ときどき、「輝く女性」「女性活用」関連での取材も受けるのですが、「干場さんのロールモデルは誰ですか」「今の課題は働く女性のロールモデルがいないことですよね」と言われます。でも、私が若かった頃はロールモデルなんていませんでした。女性は寿退社が当たり前。ましてや、結婚して子どもを産んで、お受験させて、企業の管理職になる、なんて人は、ほとんどいませんでした。少なくとも、身の回りにはいませんでした。

だから、甘えるな!と言いたいな。ロールモデルがいないからできないと言うのは言い訳じゃない? むしろ、チャンスだと考えるべきだと思います。だって、自分が今の自分の会社で、パイオニアになれるから。

ロールモデルがいないなら、自分がロールモデルになればいいんです。

 

干場社長の“ジブン本”

風と共に去りぬ(マーガレット・ミッチェル)

自分の人生を形成した”ジブン本”を聞いたら、恋愛観については『風と共に去りぬ』(マーガレット・ミッチェル)にすごく影響されていると返ってきた。自分の家族や土地を守るため、妹の婚約者を取ってしまうスカーレットの力強い生き方。中学の時に読んで以来、何度も読み返しているし映画でも何回も見ていて、善悪を超え、たくましい生き方に感化されたと語っていた。

編集後記

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一番印象に残っている言葉は「ロールモデルがいないなら、自分がロールモデルになればいい」だ。会社の肩書きで生きることなく、自分の看板で生き、行動で人生を切り開いてきた干場社長らしい力強い生き方が表れている。

『風と共に去りぬ』以外にも、読んで初めて経営に目覚めた『V字回復の経営』(三枝匡)や、コミュニケーションについて書かれた古典的名著『人を動かす』(D・カーネギー)等も紹介してくださったが、自分は一冊では形成されないし、読んだだけでは変わらない。普段から本は読むが、基本的に悩んだ時には本を読まないし、解決策を本に求めることもあまりしないと言う。

インタビュー最中終始、行動する大切さと人によって人生が変わってきたことについて熱く語ってくださった。迷った時は、具体的な解決方法を持った人に話を聞きに行って、行動によって解決する。その人に会って話を聞いてもらうために、まずは勉強が必要だということが痛いほど学べた取材だった。チャンスは人からしか回ってこないのだから。

(カメラマン・飯原貢樹/文・森井悠太)

今週の悩みを解決する3ヶ条

  1. 先のことについて考えることと、二つに分けることは人を不幸にする
  2. 目の前のことに情熱を傾ける
  3. チャンスは人が連れてきてくれる。その人に会うためにふだんから勉強し続ける

プロフィール

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干場弓子(ほしばゆみこ)

株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン取締役社長。ビジネス書大賞主宰。日本書籍出版協会理事。1985年、株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン設立以来、経営全般に携わり、書店との直取引で成功を収めた。2011年には『超訳 ニーチェの言葉』が同社初の100万部を突破。 自らも編集者として、勝間和代さんの各書籍、小宮一慶さんのビジネスマンシリーズを手がけるほか、編集部全般も統括し、CDサイズ・携書、Dis+coverサイエンス・ディスカヴァーレボリューションズなど各シリーズを立ち上げてきた。電子書籍やグローバル展開への先進的な取り組みでも注目を集めている。







WRITERこの記事をかいた人

森井 悠太

「本to美女」編集長。 1990年生まれ。慶應卒。一浪、一留、一休学と余すことなく学生生活を送る。2016年1月から株式会社SENSATIONにジョイン。 芸能事務所のスカウトマンを経験。渋谷でNo.1スカウトマンになれた経験を書き、第10回出版甲子園で準グランプリを受賞。モラトリアム症候群で、某大手IT企業の内定を入社ギリギリで辞退。結果、ニートとなる。その後、銀座で会員制のバーテンダーを経て、「本to美女」を立ち上げる。 キャッチコピーはアクティブなヒキコモリ。生粋のHONZ被害者でもある。