◆国際協力のゴールとは
なるほどですね。例えばフェアトレード(※発展途上国で作られた作物や製品を適正な価格で継続的に取引することによって、生産者の持続的な生活向上を支える仕組み)などはだんだん身近になってきているなっていうイメージはあるんですけど、
一方で、募金をしても、こんなたった1円がどこかの誰かのためになるのかな?みたいなイメージもすごく強くて。私1人が何かやったところで世界中にある大変な思いをしている人たち全員を救えるわけじゃないとか、そういう風に考えちゃうんですよね。あんまり意味ないんじゃないのかなって。

永遠のテーマよね。

そういうところってどうなんですか。1人がやったところで世界は救えるのかな、意味あるのかなって。私わからないので教えてください!

真夢さん、グッドクエスチョンです!

やった!(にやり)

私はパラグアイと関わりが長くて、パラグアイ農村部で女性や子どもへの支援など、社会開発に長く関わらせて頂いているのですが、日本にも貧困問題はあるし何で新宿のホームレスのことなどをやらないのとか、何でアフリカのことはやらないのといったことはよく言われるんですよね。
もちろん仕事ではアジアにもアフリカにも行きますし、日本のホームレスの方たちが対峙している問題にも胸を痛めています。日本国内のシングルマザーの方が抱える問題にも同様に胸を痛めています。でも、1人の人間が生まれてから死ぬまでの間にできることってやっぱり限りがあると思うんです。

自分が胸を痛める社会問題やジェンダー問題があるからそれを全部やるって、もちろんやりたいけれど神様じゃないから全部はできない。なので、やれることをやりたいって思ったときにやるという行動がもしかしたらすごく正しいのかなって。
私はアフリカの子どもにも出会う機会を頂きましたし、バングラデシュの農村でドメスティック・バイオレンスに苦しむ女性にも出会いました。支援させて頂きたいと強く思う方はたくさんいたけれども、じゃあその方に自分が深く寄り添えるかっていったら、時間や物理的な制約でやっぱりできない。
パラグアイ研究者としてはパラグアイに行くことが多いので、自分にとって一番寄り添えるチャンスを頂いているパラグアイでニーズがある以上はやらせて頂きたいって思っていますの。だからやってみようかなって思ってコンビニでお金を入れる行為っていうのは、自分にできることをやってみようと思って、行動を起こした、という点ですごく意味があると思うんですよね。

漠然としてですけど、だんだん国際協力の輪郭がつかめてきた気がします。今まで何も知らなかったけど、知らないって怖いですね……。

やっぱり先生に言われたからパラグアイに行っても楽しくないと思うし、一方で、自分で行きたいと思って行ったら主体的な学びもあり楽しいと思うんですよ。
やっぱり自分の中でこれならいいなって納得できること、それをやればいいのかなって思うんですよね。
そうして一歩踏み出せば、色々なものが見えてきて、見ていくうちに自分自身も変わっていくと思うし、募金はいやだって思うかもしれないし、もう国際協力なんかしないって思うかもしれない。一方で、やっぱり現地の方たちと関わりたい、関わることでみえるものがある、だから現場に行かなきゃだめだって思うかもしれない。
そして、がっつり国際協力の世界に身を置きたいって思うかもしれない。あるいは起業してたくさん収益をあげて、ビル・ゲイツみたいにいっぱい稼いだらNGO作ったり募金するみたいなのも一つの生き方だと思いますね。

紗栄子さんも500万2千円の募金をしたとinstagramにUPし、炎上しましたよね!
そうね。でも、それも一つの貢献だと思います。1億人いたら国際協力のやり方って1億通りありますし、自分が納得したことをやるのが一番じゃないかな。もちろん、相手が迷惑なことは困りますけれども(苦笑)

今のお話を聞いてると、何か一人一人がやることによって、塵も積もれば山となるみたいな考え方で国際協力をするというふうに考えを転換すれば、自分がやってることにも意味があるのかなっていうような気持ちにはなりました。
お、すばらしい。ちゃんと理解と展開と成長があって、これは感動的ですね!

先生!!! (笑)


でも、最終的に国際協力のゴールは何なのかなって、改めて思います。
またいい質問ですね!
それも命題なんだけど、私が最近思ってることは、コモンズかなと。

コモンズ?

はい。経済成長や開発・発展ってこれからはなかなか難しいと思うんですよね。地球環境はもう危機的な状況の中で、世界人口は増加し続けている。これからは、低成長・低開発な社会が良いと言われています。こんな流れを若い人たちで作り上げて、今の社会を変えていかないといけないと思うんですよね。
低成長や豊かさへの問い直し、シェアリングエコノミー、コモンズですが、わかりやすい例がブックオフかな。昔は絶対流行らないっていわれたんですよ。でも、読んだ本でもう要らない本をブックオフに持って行き欲しい方が安く購入できるとても良い仕組みですよね。
それから発電なんかも、地域で発電してそれをためるような技術が盛んに研究されているので、原子力発電に頼らなくてもエネルギーを地域で循環できる、自分たちの地域のことは自分たちでやっていこうっていう流れは大変良いと思います。

あ、知ってます!シェアリング・エコロジーですね!
シェアリング・エコノミーね。


はっ、、、

「……」

シェ、シェアハウスとか流行ってますもんね!

……そうね。それもとても良い流れだと思います。
今までだと高いビル造って、例えば横浜にある立派な高い建造物の屋上で夜景を見て美しいって私も思うけれども、他の美しさも再考すべきだと思うんです。
例えばパラグアイの農村には本当に豊かな緑があって、青い空があって、永遠に続く地平線があって、テラロッサっていう赤土道がとっても美しくて。その地域に住む方々にとってこのような農村は降雨後はぬかるむし、村から出れなくなるので大変ですけれどもでも、私たちから見たら本当に美しい。
そういう美しさをみんなで再発見することで、多分、開発っていう概念が変わると思うんですよね。

田舎のおばあちゃんちって都会にはない良さがありますよね。
そうなのよね。だから行き着くところって、もう今までのような新しいものを作って古いものは価値がないっていうようなものではない、今あるものの価値を認めていくような新たな価値観の創造と共有が必要ですよね。イノベーションっていうのかな。
新自由主義的な価値観で新しいものを作って稼げる人が稼いでいくっていうものじゃなくってそんなに発展しなくてもいいから省エネでいいからみんながハッピーになるっていう、そういう社会を作りたいなって。昔から「豊かさ」のあり方については再考されてきましたが、ウルグアイの大統領であるホセ・ムヒカ氏の言葉は身にしみますね。

でも、まだそういう力がマスになってないと思うので、そういうかたちの国際協力がどんどん生まれてくると良いなと思います。科学技術は進み、インターネットがパラグアイの農村部に届く日はそう遠くないかもしれない。そうすれば、農村の素晴らしさを守りながら、その農村のすばらしさを広めることができ、そこに若者の力があって、お金が新しく流れていく。そういう国際協力をこれからは生み出していきたいなっていうのが私の夢です。
◆最後に

国際協力って実はそこで働く人もいるので人件費、すなわち間接経費も必要なわけですよね。でも、このような間接経費は、日本人の心にはあまり響かない気がします。
だけれども、例えば学校を造るのに100万かかるとしたら、その100万円を最大限に活かすために、現地で必死で調整し、立ち働いている人がいるわけです。ですので、学校建設に使われる直接経費も調整する方に支払われる間接経費も両方大切なわけです。募金箱に入れた1円がそういう使われていくっていうことを知れば一人ひとりが行う募金もとても意味があると思っています。
近年、若者がインターネットでクリックしたらお金が募金できるようなワンクリック募金とか、フェアトレードのラベルを見て商品を買ってみるとか、もう一歩進んで応援したいプロジェクトに募金をするといった色々な取り組みが生まれています。


本を読んでみるでもいい。話を聞きに行ってみるでもいい。まずは知ることから始める。そして納得のいってできることをやる。これが私たち誰でもができる国際協力なのかもしれない。なんてことを柄にもなく考えさせられました(真夢♡)
……
……
どこかで生まれるギモンに答えを出すため、女子大生ひよっ子インタビュアーはまた走り出す……!(続く)

◆まだ本を知らないアジアの子どもたちへ10万冊の絵本を届けたい!シャンティ国際ボランティア会

日本最大のクラウドファンディングサービスであるREADYFORで、設立から35周年を迎えるシャンティ国際ボランティア会が、アジア5か国に10万冊の絵本を届けるため、クラウドファンディングを実施中です。
まだ本を知らないアジアの子どもたちへ10万冊の絵本を届けたい!(このプロジェクトは2016年6月30日(木)23時で終了となります。)
内戦、貧困、自然災害が原因で、アジアにはまだ本を知らない子どもたちがいます。本を通して、子どもたちは文字を覚えることができます。先人の叡智や歴史から学ぶことができます。世界への視野を広げることができます。そして何より、人の喜びや悲しみを理解することができます。本を開くことは、未来を拓くこと、そう私は信じています。
1981年に設立されたシャンティは、今年で35周年を迎えます。そしてこの2016年、35周年の節目に、私たちはカンボジア、ラオス、タイにあるミャンマー(ビルマ)難民キャンプ、ミャンマー、そしてアフガニスタンの子どもたちに10万冊の絵本を届けたいと考えています。
一冊でも多くの本を一人でも多くの子どもたちに一緒に届けたい。
本を開くことは、未来を拓くこと。
子どもたちの未来へ向けた一ページを、一緒にめくっていただけませんか?
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今できるときにできることをやる。藤掛教授の話を聞き、もしちょっとでも何か国際協力やってみたいなと思ったなら、READYFORでシャンティ国際ボランティア会を支援してみてはいかがでしょうか?
(文・森井悠太/カメラマン・横須賀馨介)
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