(左から、矢端名結、谷元星奈、吉田将英)
2016年7月29日に電通若者研究部が『若者離れ 電通が考える未来のためのコミュニケーション術』を発売しました。未来のためのコミュニケーションとは?
電通若者研究部代表 吉田将英さんと、女子大生二人がお送りする「今の若者ってなんなの」講座のはじまりです。
今の若者って何を考えてるの?
矢端:早速ですが、今の若者の基本的な価値観ってどんなものでしょうか。
谷元:若者の自分でもよく分かってないんです。
吉田:これは実際、難しいですよ。
谷元:どこからどこまでが若者なんですか?
吉田:僕らは年齢での定義をあまり重要視していません。それこそ、おじいちゃんみたいな大学生もいるじゃないですか。反対に、すごい若いおばさんもいたりする。
ちなみに、お二人はゆとり世代ですか?
矢端・谷元:そうです。
吉田:言われると、どう思います?

吉田将英(Masahide Yoshida) 1985年生まれ。2008年慶應義塾大学卒業後、前職を経て2012年電通に入社。電通ワカモンでは代表としてプロジェクトプロデュースとインサイト研究を担当。兼務として、経営全般をアイデアで活性化する未来創造グループに所属し、さまざまな企業と協働プロジェクトを実施。2009年JAAA広告論文新人部門入賞。PARC CERTIFIED FIELDWORKER(認定エスノグラファ)。
谷元:ちょっとイラっとはします。これでも塾も小学校から通って、ガリガリ勉強をやっていたんですよ。なのにゆとり、ゆとりって言われて。
吉田:これはいわゆるレッテル貼りです。「最近の若いやつは」って言い方はよくされますけど、色んな人がいるのに全部まとめて、「ゆとり」ラベルを一個だけバンって貼って分かったつもりになるのは横暴ですよね。
そういう一言でまとめるのは乱暴でよくない! というのが僕たちのスタンスです。
谷元:確かに。若者で一括りにされるとムムって思っちゃいます。
矢端:今、周りの人がみんなLINEやTwitterをやっているんですけど、人によって使い方が全然違うんですよ。大人から見れば同じに見えるかもしれませんが。

矢端名結(Miyu Yabata) 1993年生まれ、立教大学文学部。普段は、大学に通いながら学生キャスターとして『abema news』『みのもんたのよるバズ』に出演。普段はよく群馬に帰省して愛犬に癒されたり、映画館に行って映画を見たり。最近のオススメは「君の名は」。
谷元:私は、「なんでそんな自分のプライベートを晒すんだ」っていう感覚をSNSに持っています。でも、繋がってる安心感はあるのかも。
矢端:会ってないのに、会ってるみたいな感覚だよね。
谷元:繋がりが希薄になっている分、どこかで繋ぎ止めておきたいっていう心理はあるのかもしれません。
吉田:それはあるかもしれないですね。やっぱり、みんな「何者かでありたい」というか、みんな急に名刺を作りたくなる時期があるじゃないですか。○○大学 3年生の何とかです!みたいな。
ぷちメモ!①名刺
大学生にはある日突然、名刺を作りたくなる時期がくるぞ!それも無駄にデザインに凝るんだ!
それは、やっぱり何者かになりたい。
就活のエントリーシートが分かりやすいと思うんですけど、書くことないな~って悩みますよね。
Q.あなたを一言で表すと?
「いやそんなの別にねーし!」みたいな。
昔は何者かが分かりやすかったんです。
狭いコミュニティ内で、「あ、○○さんちのお嬢さん」と分かりやすかった。
今はSNSの普及で世界が広がっちゃって、「あの子って何キャラ?」と言われてしまいます。外の目がすごい増えたんですね。
例えば、自分は楽しそうにサークルをやっているだけなのに、高校まで同じコミュニティで同じような成績で遊んでいた友達が、シリコンバレーでインターンしているみたいな情報が見えちゃう。知りたい、知りたくないにかかわらず。
それを見て、「俺、こんなことしていていいのかな」と自我に悩んじゃう。
ある人は身動きが取れなくなったりとか、ある人は外づら作りにいっちゃうとか。
「私はリア充!」みたいな外づらを作って、いいね! いいね!ってもらうんだけど、家帰って突然「死にたい…」って呟いちゃったり。

谷元星奈(Sena Tanimoto)
1995年生まれ。千葉大学法政経学部。1年生の頃、ミス千葉大に選ばれミスオブミスにも出場。2年の4月からノンノ読者モデルとして活動。現在はAbemaTVとBS朝日にて学生キャスター。趣味は料理、好きな食べ物はハンバーグ。モットーは一日一善。
谷元:絶対そうですよね!
矢端:ゆとり世代より前の人の方が、”自分を持っている”人が多かったんですか?
ぷちメモ!②自分を持っている。
ブレない姿勢のこと。「自分持ってんな~」は褒め言葉であり、この境地を目指し、日夜若者は自分探しをしているぞ!
吉田:いや、そこも難しくて。ただ、昔の人の方が自分を持たなくてもレールが敷かれていたと思います。例えば、いい大学に入って、いい会社に入って、部長さんになれば安泰だからっていう空気がありました。だけど、今は大企業も潰れる世の中ですから何かと安心できません。
矢端:とはいえ、今の若者は自由に生きろって言われて困ってると思うんです。
吉田:そうですね。やっぱり、自由って困るじゃないですか。
谷元:普通がまず分からないですからね。昔に比べてインターネットがすぐ開けて、情報がありすぎて。
矢端:こう生きろっていう指針がないから困ってるんですかね。
吉田:大人もみなさんのための指針が分からないと思うんですよ。
ポジティブに捉えれば「やりたいことはやれる」って言えるけど、ネガティブに捉えると「やりたいようにやれって急に言われても困るよ」っていう気もしますよね。
キャラを使い分けている若者たち。
矢端:著書で、今の若者はコミュニティごとにキャラを使い分けていると仰っています。なんで今の若者はキャラを使い分けるんですか?
ぷちメモ!③キャラを使い分ける。
天然キャラ、いじられキャラ、陰キャラなど複数のキャラを使い分けること。なぜ今の若者は複数キャラを持つのかを、これから吉田さんに聞いていくよ!
吉田: 今は行く先がものすごく増えていて、地元、バイト先A、バイト先B、ゼミ、サークル1、サークル2と様々なコミュニティがあります。
「バイト先では私結構、真面目キャラだから! 」
「俺、地元ではマジ下ネタ言うキャラなんですよ」みたいな人もいたり。

ほら、同じキャラが通用しなくなるときってあるじゃないですか。
例えば、地元ではボスキャラだったけど、頑張って受験して都心の結構有名な大学に行ったらそのキャラは通用しなくて、スーパーサブに立ち位置を変えちゃうとか。サッカーみたいなものですよ。欧州に移籍したらボランチになりましたみたいな。
矢端:私もキャラを使い分けているかもしれない。
吉田:矢端さんは普段、どういうキャラですか?
矢端:著書の中から選ぶと、「自己プロデュースキャラ」です。SNSに載せる写真とかも、キラキラした友達と一緒に写ったり、美味しそうなグルメ写真ばっかり載せてるから、周りのみんなに「いっつもキラキラしてるよね」って言われる。
谷元:そりゃあだってキラキラしてる瞬間の写真しか載せないから、そうなるよね(笑)。
矢端:うん(笑)。ちょっとこれ、私のインスタグラムなんですけど。
20代女子二人のSNS
矢端:私は人と一緒にいる写真が多いです。
吉田:確かに多いですね。
矢端:私たち、いま学生キャスターをしているんです。この前AbemaTVのパーティーがあって、芸能人の方とか沢山きたんですよ。

吉田:うわー、これは華やか。
矢端:そういうのを載せたんですね。こういう写真を載せるのってどんな心理が働いているんですか?笑。
吉田:これは……笑。
赤裸々に話してくれてありがとうございます。やっぱり誰かと一緒にいるとか、私はこういう知り合いが沢山いるっていうのは、充実した生活を送っている風に見えるからですかね。
矢端:それはあるかもしれないです。このコーナー恥ずかしいなぁ(笑)。
吉田:谷元さんはいかがですか?
谷元:私はこの中だったら「マイペース」じゃないかな。普段はご飯ばっかり載せてます。
矢端:手作りなんですよ! 彼女、料理が上手いんです。
吉田:まじすか!

谷元:ほんとに日記みたいに使ってるかも。キラキラした瞬間だけじゃなくて普段のご飯とか、自分の好きな小物とか載せてます。だから、すごいマイペースに使ってますね。
吉田:自分で作っているっていうのがポイントな気がします。
私が作ったよ-って感覚だと、他人のいいねが欲しいってよりは、自分が後で見返すときの思い出だったり。
谷元:そうです、そうです! 昨日、イカ食べたよ~とか。
ワインでパーティーだ!っていう写真ってよりは、こういう当たり前のご飯とか、その瞬間を忘れないように記録しています。
キャラの使い分けは悪いことじゃない。
矢端:キャラを使い分けるのって悪いことなんですか?
吉田:いや、別に悪いことではないと思います。
本当にこれだけコミュニティが複雑化したら、使い分けるのは悪いことじゃないし、何より自分の身を守るために必要だと思うんですよ。
前に、保険をかけるって言った大学生がいて。
「一個のキャラで突っ込んでいって、それで批判されたら立ち直れないじゃないですか」と言っていました。キャラクターの使い分けがあれば、本当の本体をクリティカルに傷つけられなくて済むというか。
キャラの使い分けで上手に生きていくっていう。
谷元:世渡りが上手いってことですよね。
吉田:そうそう。
谷元:でも、それって大事なことだと思います。周りに馴染むために若者が適応していったのかもしれませんね。
吉田:そうですね。調整とか、バランスって意味では悪いことじゃありませんよ。
大人と若者
矢端:今の若者から尊敬されない大人はどういう人ですか?
吉田:逆にお二人はどういう大人が嫌いですか?
矢端:頭ごなしに怒ってくる大人はちょっと…って思います。
谷元:「いいからやれ!」みたいな怒り方は、私もいや。
吉田:怖いけど、尊敬される人も中にはいるじゃないですか。
だから怖いから嫌われるってよりも、僕はこう聞かれてよく言うのは”結局、楽しそうに生きている大人が尊敬される”と思うんです。
それ好きでやってるんだろうなとか、誇りを持ってやってるんだろうなとか。
誇りがあるが故に若い人に厳しく当たる人とかは、そりゃそうだろうなってみんなも納得する。
ただ八つ当たりしてるよなって感じだと、「なんなのあいつマジで?」みたいに、思われていまいます。

矢端:それは思います。八つ当たり大人はすぐに分かります。
吉田:そうですよね。
楽しそうに、何か好きなことがあって生きてるとか、やりたいことがあるとか。楽しいっていうのはピエロみたいなFunnyって意味じゃなくて、興味があることとか、あとは使命でもいいと思います。仕事は好きじゃないけど、俺はお前たちを大人になるまで育てるぞっていう大人とか。
矢端:あ、それかっこいい。
吉田:”なにか、これ”のために生きている人はかっこいいですよね。
異文化コミュニケーションの姿勢
矢端:若者の心は複雑です。それを大人が正しく理解できるのでしょうか?また、どういうコミュニケーションをとればよいのでしょう。
吉田:やっぱり、僕が思うのは、違う前提を受け入れられる人だと思うんです。異文化交流の例が分かりやすい。相手が外国人だと分かったら、日本人の前提を押し付けたりしませんよね?
ところが、自分も元々若者だったから、「俺も君ぐらいの歳のときさ」みたいな感じで、昔の前提が通用するって錯覚に陥る人がよくいます。
授業で忙しくてって言っても「俺らの頃は授業なんて出なくてよかったんだ。わがまま言ってないでバイトに来い」っていう大人は「うわ~」って思われちゃう。
そういう大人は、例えば今や就活で成績表の提出が企業から求められるようになっている事実を知ろうともしてなかったりする。
今の若者と、昔の若者は環境が違います。
違う前提をちゃんと認識した上で、会話を成り立たせるって、異文化コミュニケーションの基本じゃないですか。
だから、今と昔は違うかもしれないって前提で話してくれる人は素敵ですよね。
谷元:素敵です!私も大人の考え方、勉強していきたいです。
吉田:それが相互理解の一歩目ですよね。今回出した本が、大人と若者のコミュニケーションを一歩先に進めていけるものになればと思っています。それが、「未来のためのコミュニケーション術」っていうタイトルの真意です。
若者離れ 電通が考える未来のためのコミュニケーション術
- 著者:吉田 将英 (著), 奈木 れい (著), 小木 真 (著), 佐藤 瞳 (著), 電通若者研究部 (編集)
- 出版社:エムディエヌコーポレーション
- 発売日:2016/7/29
〈編集部レビュー〉
「大人がちょっと前提を疑って譲歩してくれるだけで、お互いが分かり合える」と語ってくれた吉田さん。若者ライターとして共感できる点が沢山あった。世の大人たちの「最近の若いもんは」病を完治させる特効薬だと感じたし、若者にも是非読んでほしい。大人と若者が相互理解できる翻訳書のような一冊であった。
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