私、はっきり言いすぎかな…『タイニー・タイニー・ハッピー』

タイニー・タイニー・ハッピー

  • 著者:飛鳥井千砂
  • 出版社:角川書店
  • 発売日:2011/8/25

人間模様が交錯する8つの物語

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自分の仲のいい友達同士が付き合うと、例えばそのカップルが喧嘩をした時も、自分は彼氏側からも彼女側からも相談を受け、喧嘩している当人たちにはわからない、お互いの気持ちを自分だけははっきり知っている。本書を読むと、そんな気持ちを味わえる。

『タイニー・タイニー・ハッピー』とは東京郊外にある大型ショッピングセンターだ。そこで働く「北川徹」。徹の同僚の「川野」に部下の「小山理恵」。徹の妻「北川美咲」。美咲の友人「森崎純一」と「結城香織」。純一の彼女の「真壁笑子」。そして香織の彼氏の「相原カズ」。8つの短編の主人公となるこの8名は、誰もが持ちうるリアルな悩みを抱えている。だが、それぞれの人間関係の中で8人が8人なりの答えを少しずつ見つけていく、ほっこりする物語だ。。
今回はその中で、はっきり物を言う性格のせいで会社内の女子から嫌われる「小山理恵」の物語を取り上げる。

フェードアウト

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関西支店から異動してきて10ヶ月の小山理恵は、自分が正しいと思うことははっきりと言わないと気が済まない。今となっては死語かもしれないが、いわゆるKY(空気読めない)だ。会社の飲み会で、幹事が「全員ビールで」と注文するとすかさず理恵は、「私ビール嫌いなので、ダイキリで」と言う。

異動してきてから何かと良くしてくれる上司の川野に誘われ夜ご飯を食べた後、「家にコーヒーを飲みに来ないか?」という川野の言葉に対して深く考えず家へお邪魔すると、いきなりキスされそうになり川野をひっぱたいてしまう。
翌日出勤するや否や、周りに社員がいる中で、「昨日は叩いてすみませんでした。でも私は悪くないと思います。」と宣言する。

部署の女子だけで催される女子会では、上司と不倫していると噂の同僚の悪口をまくしたてる2人組に対し、
「その人のいいところなんて、好きになった人にしかわからないんじゃないの?無関係の人がとやかく言うことじゃないんじゃないかな」と言い放つ。
ちなみに理恵は、全員参加のはずの女子会に当初は誘われておらず、たまたま男の同僚との会話の中で女子会の存在を知り、参加することとなったのだった。

女子会が終わった後の電車で乗り合わせた女上司の大原さんは、理恵に対してこう言う。
「小山さんの、そういうはっきりしたところとか裏表のないところ、私は好きよ。でもあの子達の人の悪口を裏でいうとか、そういうところも嫌いじゃない、むしろ好き」
「大人ってさ、そういう駆け引きとかずるいところとかないとやっていけないじゃない?きつい言い方になるけど、上司に言ってもいいことかどうか見極められなかったり、自分のこと好きかどうか、この歳になってわからなかったり、そういう人の方が社会性には欠けると思うな。理屈ではそっちの方が正しいんだけどね」

最初、理恵はこの言葉を受け入れることができなかった。どうすればいいのかわからなかった。次の日理恵は、人生で初めてずる休みをして大阪へと向かう。何ヶ月も連絡を取っていない彼氏の元へと行くためだ。彼氏と直接向き合い、理恵らしく自分の思うことを素直に伝え、彼氏の思いを直球で聞き、心のわだかまりをなくした理恵は、明るい日差しの中で前向きに思う。

「おしゃべり好きのお客さんのグチなんかを話してみようか。悪口ではなく、世間話として。それくらいの力の抜き方をしたほうが、私もここでの生活を楽しめるのかもしれない。」
「タイミングとか、駆け引きとか。そういうのを楽しんでみるのもアリなのかもしれない。だんだん川野さんにフェードインするということも、許されるのだろう。」

最後に差し込むあたたかい光

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八つの物語全てに共通するのが、倦怠期だったり、男へ色目使ったり、そんなに好きじゃない人と付き合っていたり。人間のどうしても抱いてしまうちょっと汚い部分と向き合う主人公を、丁寧に描き出しているところだ。

そして例えば「小山理恵」の物語に対して、深く関係してくる「川野」が主人公の物語があり、「真壁笑子」の物語に対して、結婚している「北川美咲」への恋心を持ちながら笑子と付き合う「森崎純一」の物語がある。一つの物語に多くの人が絡み合い、その登場人物一人一人に物語が用意されているから、それぞれの心情が読者にだけ独り占めできる。

それがたまらなく楽しい。知らぬ間に物語に引き込まれ、読み終わったらなんだか暖かい気持ちになる。「小さな小さな幸せ」を実感できる作品だ。

タイニー・タイニー・ハッピー

  • 著者:飛鳥井千砂
  • 出版社:角川書店
  • 発売日:2011/8/25

モデルプロフィール

mari_asai_profile
  • 名前:浅井麻里
  • 生年月日:1988/6/25
  • 出身地:名古屋
  • 職業:フリーモデル、ブロガー、ライター
  • 受賞歴:WSD(早稲田)アイドルプロジェクト (一般ネット投票1位&審査員特別賞&グランプリ)
  • 趣味・一言:ディズニーに行くこと(ランド&シーの年パス持ち3年目、カリフォルニアとハワイと香港のディズニーにも行きました!)、旅行 
  • 最近の悩み:旅行好きで写真を撮りすぎて、ブログとかにアップする写真整理ができない!
  • Twitter:@v_Maari_v
  • Insta:mari_asai_625 
  • Blog:http://ameblo.jp/dear-you-from-mari/

(カメラマン:伊藤広将)

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