職業:革命家。『チェ・ゲバラ伝』

チェ・ゲバラ伝 増補版

  • 著者:三好徹
  • 出版社:文藝春秋
  • 発売日:2014/4/10

ときに、結晶のような人間がいる。
金、性、出世、見栄、つまるところの人間らしい欲……そんなものを超越した人間。己の信念を貫くため、不純物を削ぎ落とし、生き様そのものが結晶のような美を放つ人間。
今回、紹介するのは「チェ・ゲバラ」だ。彼は、あくまでも自分は一介のゲリラ戦士、革命家であると考えていた。チェは裕福な家に生まれ、医者の資格を持ち、最終的にはキューバのNo.2まで上り詰めた地位をすべて捨て、もう一度革命家に戻る稀有な経歴を持つ。彼を突き動かしたのは、「抑圧された人々を救いたい」とする己の信念のみだった。

チェ・ゲバラとは?

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グリーンの戦闘服に身を包み、葉巻に、ひげに、澄んだ瞳。
それが革命家チェ・ゲバラの外見の特徴だ。驚くことに、国連の会議であってもこのスタイルを貫いている。周りは当然スーツなのだが。

キューバ革命の背景を簡単に記載しよう。
1950年のキューバといえば、悪政で知られるバチスタ政権が汚職の限りを尽くしていた。農民は搾取され続け、お世辞にも国家としての機能はもはや果たしてはいなかった。国民の識字率も先進国には及ばないし、産業といえば砂糖しかないモノカルチャー経済のキューバ。そこに、私腹を肥やし続けるバチスタが政権を握っていた。
「この状況は打破するには、話し合いなどと生ぬるい抗議では難しい。武力でもってのみ、バチスタ政権を討つことができる」
武力による革命。チェは生涯、一貫してこの思想を持っていた。

ブエノスアイレス大学医学部を卒業し、医師免許を取得した彼はある一人の男と出会う。後のキューバ革命の指導者になるフィデル・カストロだ。
この男との出会いが1959年のキューバ革命の奇跡を起こすのだ。

チェ・ゲバラとは何者か。
それは、不公平と不正が許せない澄んだ瞳の革命家。無口だが、勤勉で不屈の信念を持ったゲリラ戦士でもある。そして何より、他人のために動ける献身の精神を持っていた。ここが、俗人とは決定的に違うところだろう。

祖国か、死か。退路のないキューバ革命

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カストロと意気投合したチェは、悪政からキューバを解放させるため、自分の人生を革命に捧げることを決意する。反乱軍を結成し、バチスタを討つため同志たちをかき集めた。82名のゲリラ兵士が集まり、「グランマ号」と共にキューバへ出航するところから革命は始まる。

いざ、キューバへ上陸するも、政府軍から急襲され、大打撃を負う反乱軍。なんと、この一回の急襲で反乱軍は散り散りになり、生存者は17名にまで落ちたのだ。
もはや、絶望と言ってよかった。カストロだけが「まだ希望はある」と意気込んでいたが、兵士の士気は風前の灯火。ここで敵からの弾丸を喰らっていたら、脱走兵が10名を突破していたかもしれない。

しかし、歴史はキューバ革命を成就させている。
ここからが、カストロとチェが率いる反乱軍の反撃だった。ゲリラ無敗伝説が始まる。

ラ・プラタ兵営の襲撃から、最後の州都サンタクララ市の総攻撃まで実に25ヶ月にも及ぶゲリラ日記の詳細が書かれている。本項では割愛するが、記者出身の著者が書くデータと取材に裏付けられたゲリラの日々は必見だ。ゲリラの戦術や、脱走兵の処置、食糧確保のサバイバル様子があますとこなく記述されている。

彼は完全な革命家だよ

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チェと命運を共にしたカストロは、「彼は完全な革命家だよ」とたびたび評価している。
この場合の完全とは、能力を指すのではない。精神である。
昨今、スキルや能力を主眼に置いた実用書の流行とは反対だが、本書では「チェ・ゲバラの革命家たる思想と精神」を学ぶことができる。
自分の生活は最低限に、他者のためだけを考えたチェ・ゲバラ。その本質は、先日紹介した二人にも似ているかもしれない。

・私は貧乏などではない『ホセ・ムヒカの言葉』

・人道往くのは、杉原千畝『六千人の命のビザ』

チェはキューバ革命成功後、大臣の職を捨て、未だ悪政が横行していたボリビアに向かい、驚くべきことだが全てを捨てもう一度ゲリラ戦士を選んだ。著者も、こんな革命家を今までに聞いたことがないと記述している。それはそうだろう。
一度革命を成功させれば、国の重役ポストが待っている。レーニンのように普通は、政治家として国を引っ張るポジションを任される。だが、彼には最愛の友カストロがいた。カストロはキューバ代表として、国を引っ張る。ならば、僕は……。

カストロに「別れの手紙」を書いたチェ。そこには、「僕はまだやることがやる。僕は革命家として必要とされている」との趣旨が書かれており、「チェ・ゲバラは公式にキューバにおける全責任から解放されたことを示す。また、革命家として戦地に往く」と衝撃の記述をしている。
彼は、死ぬまで革命家であり続けたのだ。
そして、39歳の誕生日に、チェはこんな日記を書いていた。

わたしは三十九歳になった。ゲリラ戦士としての自分の将来について考えねばならぬ年齢に、容赦なく近づいている。いまのところ、「文句なし」である。『ボリビア日記』6月14日

世界で唯一、彼を「職業:革命家」と言っていいのかもしれない。

チェ・ゲバラ伝 増補版

  • 著者:三好徹
  • 出版社:文藝春秋
  • 発売日:2014/4/10

モデルプロフィール

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  • 名前:田上瑛莉香
  • 生年月日:1996/11/19
  • 出身地:東京都
  • 職業:慶應義塾大学総合政策学部
  • 受賞歴:ミス慶應SFCコンテスト2016準グランプリ
  • 趣味・一言:スポーツ・読書・アカペラ
  • 最近の悩み:生活リズムの乱れ
  • Twitter:@mskeiosfc16no5

(カメラマン:伊藤広将)

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WRITERこの記事を書いた人

小幡 道啓

累計2億円以上の借金王の元に生まれ、怒号と罵声が飛び交う家庭で育ったアウトローだが、底ぬけにポジティブ。飲み会でも「父親が行方不明です」と不謹慎なネタを言ってはスベっている。Amazon Kindle販売員時代には年間NO.1売上を達成。現在は、「逆境でのユーモア」をモットーに本to美女編集部編集長。