出口はどこにある・・・『遭難フリーター』 

遭難フリーター

  • 著者:岩淵 弘樹
  • 出版社:幻冬舎
  • 発売日:2010/12

映画化もされた『遭難フリーター』
1年間派遣労働者として働く自分を描いたセルフドキュメンタリー。

派遣労働者やフリーターはまさしく“下流”と言える。社会的弱者が何を考え、どうしたがっているのかが、もがきながらも表現されている。
“下流の生きざま”なんて言うのもおこがましいのかもしれない。だが、著者はもがき苦しんだ。

本書は、底辺を知るにはあまりにも生々しいものだ。嫌悪感を抱く人もいるだろう。だが、考えさせられるに違いない。

なにも変わらない地獄

reika_usui3_1

山形の映像大学生であった著者・岩淵弘樹。教科書などを扱っている出版社に内定が出ていたが、留年してしまい取り消し。
著者は当時借金があった。その返済と「実家を出たい」との思いから、寮付きの派遣社員に応募した。
当時は珍しかった派遣の募集。派遣の内容もわからないまま応募し採用された。

配属先は埼玉のキャノンの工場。
時給1250円。これから何十年働いても、給料が上がることはない。派遣社員はゴミ箱を自由に使うことさえできない。職場は「ワケあり」な人達が集まる。無断欠勤する人や、何も覚えれない人、ときどき奇声を叫ぶ人もいた。
仕事内容は単調なものだ。生産ラインと向かい合って一日中同じ作業を繰り返す。思考力など一切必要ない。
肉体を酷使するわけではない。精神がすり減っていくのだ。著者はこう述べている。

地獄だ。足も腰も痛くなってくるが、それ以上に「俺じゃなくてもできるじゃん」という虚しさが、仕事へのテンションをグイグイ下げる。あーつまんねえ。この重く辛い「惰性」に耐えうるには、強靭な精神力を持つか、そもそも精神性なんざ捨て肉体だけの反復ロボットになるか、そのどちらかしかないように思う。中途半端に自意識を残していては、絶対にこの作業を続けていられない。

機械の歯車のように一定の作業を繰り返し続けるだけの毎日、なにも変わらない。
昨日と同じ今日が終わり、今日と同じ明日がやってくる。虚しさと疲労だけが日毎に蓄積されていく。

著者が孤独だった。孤独は被害者意識を高めていく。工場で孤立すると逃げ場がない。愚痴を吐く相手すらいない。誰もかれもが敵に見えてくる。なぜ自分がこんなところに。自分の明日はどうなるのか。

だが、著者はこの地獄のような日々に感謝している。
工場で働いていた人たちとの出会いは、23歳の社会人として右も左も分からない自分を客観的にさせることがあったが、一人一人があらゆる事情を抱えて生きていることを知らせてくれる、社会の小さなサインだった。だから、一つ一つを見つめていくことで、自分は自分自身の生き方を見つけることができたからだ。

なぜ日々を撮ったか?

reika_usui_2

そもそも、なぜ自分の日々を撮影し映画にしようと思ったのか。大それた理由はない。

家庭用ビデオカメラで雑巾のように擦れていく自身の姿を撮影し、携帯電話で揺れ続ける心理をブログに打ち込み続けた。その行為はときに孤独を紛らわせ、ときに底のない自己卑下へと陥れた。今にして思えば、そうやって自分の真情を際限なく吐露し、目の前の現実を対象化することで、にじみ出る苦汁を麻痺させたかったのかもしれない。そうでもしなければ、繰り返す労働の途方もないサイクルからとうに逃げ出していたのかもしれない。

そんな抗いの記録が『遭難フリーター』という形で噴出した。
映画『遭難フリーター』は自分で自分にカメラを向けながら、ゴキブリみたいな人間の生命力を伝えられたらと思って作った。

映画『遭難フリーター』と本書との決定的な違いは、ビデオカメラを持ち込むことができなかった工場内の、現場で働く肉声、経歴、印象を細かく記録したことだ。

遭難フリーター

  • 著者:岩淵 弘樹
  • 出版社:幻冬舎
  • 発売日:2010/12

モデルプロフィール

reika_usui2_profirm
  • 名前:臼井嶺華
  • 生年月日:1997/5/5
  • 出身地:タイ
  • 職業:上智大学
  • 受賞歴:ミスオブサークル「ベストオブリゼウィーク」&「Astonish賞」/キャンパスコレクション@Tokyo
  • 趣味・一言:猫とまったり♡︎&ダンス 
  • 最近の悩み:冬休み太りがまだ・・・
  • Twitter:@ReikaRabit
(カメラマン:伊藤広将)

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Myコーデ

WRITERこの記事を書いた人

タバオ

大学受験に失敗し、1年浪人するも不合格。コンビニ、土方、ヒーローショウ、環境調査隊、家電量販店のアルバイトを経験するが、やがてはニートにまで落ちる。だが、失うものがないからこそ、開き直れる! 高卒だっていいじゃない。ニートだったからって何なのさ! よく読むのは、歴史小説と漫画。好きな歴史小説『播磨灘物語』、漫画『NHKにようこそ!』。