企画の次の段階へ『デザインのデザイン』

日本国旗
突然ですが、上のデザインはなんでしょうか。日本国旗ですね。
白い背景に、赤い丸が一つだけ。これ以上シンプルなデザインはありません。

ところで、この赤い丸の意味はなんでしょうか?

A,これは神道のご神体である太陽を表す
B,平和国家に変わった象徴としての赤丸である
C.白飯の上にぽつんとある梅干しを象徴している

実は、答えはどれでもありません。
正確な意味はないのです。しかし、私たちはデザインからイメージを連想します。
デザインの持つ意味はなんなのか。『デザインのデザイン』(原研哉)にヒントが書いてありました。

これまでアイデアの発想法を中心に選書してきましたが、今回はそれを形にしていく工程。デザインとは何なのか、をこの本から紐解いていきましょう。

Point1.デザインから連想されること~情報の建築という考え方~

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冒頭の国旗、赤い丸には意味自体なにも含まれていません。
しかし、人々は赤い丸から様々なイメージを連想し、太陽だとか白米の梅干しだとか意味をプラスしていきます。デザインから連想することは、実は結構多いのです。

著者は長野オリンピックの開会式・閉会式のプログラムをデザインしたデザイナーです。
オリンピックのデザインですから、世界中が注目しますし、日本のデザインセンスが問われる絶好の機会です。この緊張の場において、著者・原は「紙」に注目しました。

雪を踏む記憶を呼び覚ます。

冬のオリンピックなので、このイメージをどうにかして来場者に伝えたい。そう考えた著者は白くふっくらとした紙を用意し、そこに文字を入力する際に、金型で紙が凹むように押す加工を施しました。そうすることで、まるで新雪に足跡がぽつりぽつりと現れるような冬を表現することに成功したのです。
また、文字にも工夫を凝らし、光が差すと透けるように加工。これにより、氷のように透明な文字を作り上げました。

デザイン、一つ一つは言葉を発していません。
しかし、私たちには確かに雪を踏む記憶が呼び覚まされます。これはどういうことなのか、著者は「情報の建築」という考え方で説明しています。

デザイナーは受け手の脳の中に情報の建築を行っている。
視覚、触覚、聴覚、嗅覚、味覚さらに、それらの複合された刺激が脳の中で組み合わさって一つの「イメージ」、つまり情報が建築されていくんだと語っています。デザイナーが思い描く「建物」(雪の踏む記憶)が、受け手の脳の中でイメージできていたら、それは成功と言えるでしょう。

さらに、この脳の中の建物は感覚器官から得られる外部情報だけではなく、それによって呼び起こされた「記憶」も関係します。石焼き芋の匂いを嗅げば、『三丁目の夕日』のような懐かしい思い出が連想されるなど、二次的に連想されることを指します。

成功したデザインは、「記憶」を呼び覚ますのが上手なデザインである。あるいは、そう言っても差し支えないのかもしれません。

Point2.デザイナーは医者のようなものである。

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本書では何回も「デザインとは何か」とまるで著者自身が自問自答しているかのように繰り返し出てきています。その都度、シチュエーションを交えつつ解答を示してくれるのですが、今回は敢えて「アイデアをデザインする」とはどういうことなのか。本書からヒントを貰いたいと思います。

一言、「デザイナーは医者である」との例えが活きるでしょう。
デザイナーは本来、コミュニケーションの問題を様々なメディアを通したデザインで治療する医者のようなものである、と比喩しています。患者が「頭痛薬」を求めているからといって、そのまま頭痛薬を渡してはいけません。どのような症状なのか、どんな薬が一番最適なのか医者自身が考え、デザインという形で表現していく。つまり、患者は気づいていないけど「本当はこれが欲しかった!」という欲求のツボをつくこと。

著者は無印良品のデザインにも携わっています。
無印良品のコンセプトは「これがいい」ではなくて、「これでいい」。数多のブランドが自社にしかない個性を追求していく最中で、無印良品は敢えて個性を消し、どの商品も個性はないが確実に良いモノだと主張する戦略を打っています。塗料にも金をかけず、その分だけ品質に回す。

この戦略は一見、奇天烈のようにも思えますが、消費者には受け入られました。
なぜ、おしゃれでモダンな欧州家具を買わずに、無印良品じゃなければならないのか。それは、究極にシンプルで質が良い物だったからです。「おしゃれな家具が欲しい」という欲求にだけ答えていては見えてこなかった戦略でしょう。本当に欲しかった家具は、シンプルだけど質が良く、周りの家具を邪魔しないもの。この処方箋に気がつくことができるかが、著者の言う「デザイナーは医者である」との意味でしょう。

アイデアをデザインにする際も、同様です。
「質の良いトイレットペーパーが欲しい」と言われれば、単純に素材の質を上げるのではなく、例えば芯の部分を四角にする。そうすることで「コロコロ」と紙が必要以上にめくれる必要がなく、回した分だけ出てくるとか。
「身に付けても恥ずかしくない大人用のおむつが欲しい」と言われれば、おむつだけでなく上も用意し、ウェア一式という考え方をしてみるとか。本書では写真を交えつつ、こうしたデザイン案の実例が幾多も紹介されています。
デザインは、デザイン関係者のためだけにあるものではありません。
企画屋として、デザインとはどういうことなのか。その本質を知るだけでも、本書は一読の価値があります。企画の次の段階を知るのに、とても頼りになる一冊だと感じました。

こんなお悩みを解決!

  1. 人に上手くアイデアを伝えられない
    →分かります。自分一人だけ「面白い!」って確信してテンションが上がっている状況ですね。それは本当にもったいないです。口で伝えられなければ、絵で伝えましょう。もしくは、それに近しいイメージの写真を用意しましょう。視覚に訴えれば、高確率で同じイメージを持つことができます。ただし、画力は重要です。本当に重要なので、絵の練習は怠らないようにしてください(笑)。

デザインのデザイン

  • 著者:原研哉
  • 出版日:2003/10/22
  • 出版社:岩波書店

モデルプロフィール

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  • 名前:秋澤里南
  • 生年月日:1995/03/18
  • 出身地:埼玉県
  • 職業:慶應義塾大学
  • 受賞歴:ミスワールド2014日本大会 タレント部門1位
  • 趣味:読書・ホットヨガ・ランニング

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本to美女選書

WRITERこの記事を書いた人

小幡 道啓

累計2億円以上の借金王の元に生まれ、怒号と罵声が飛び交う家庭で育ったアウトローだが、底ぬけにポジティブ。飲み会でも「父親が行方不明です」と不謹慎なネタを言ってはスベっている。Amazon Kindle販売員時代には年間NO.1売上を達成。現在は、「逆境でのユーモア」をモットーに本to美女編集部編集長。