ミスチルCDジャケットの真相『アイデアが生まれる、一歩手前のだいじな話』

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アイデアが生まれる、一歩手前のだいじな話

  • 著者:森本千絵
  • 出版社:サンマーク出版
  • 発売日:2015/04/14

 

多くの人が一度は憧れる職業…広告代理店クリエイティブ部門。その第一線で長年活躍してきたアートディレクター森本千絵さんによる、広告世界の話やものづくりに対する考え方や生き方をしるした素敵な自叙伝です。森本さんが博報堂時代に手がけたMr.ChildrenのCDジャケットや新聞広告など、一度は見たことがあるデザインの制作秘話が満載です。

とくに桜井和寿との打ち合わせ時のエピソードなど、ミスチルファンにはたまらない内容が多いです。

思えば、アートディレクターやクリエイティブディレクターというのは不思議な職業です。医者やパイロットのように免許がつくものではありません。近所の公園であそんでいる子供たちのなかにも、もうすでに立派なクリエイティブディレクターがいたりします。子供とはいえ、あそびや学校のなかで、立派なディレクションをしていたりするものです。

正直、電通や博報堂のクリエイティブな人たちは、よほどの才能か強運の持ち主ではないかぎり、なりたくてもなれる職業ではありません。多くの人が憧れる職業だからこそ、森本さんは「こうしたらこうなれる」という方法論ではなく、自身の気持ちの在り方や感覚的な話に触れて、ちょっとでも気持ちを楽にしてクリエイティブなものづくりを読者に楽しんでもらえるようにと書かれています。

人間のからだの七割が水

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森本さんの代表作にMr.Children「HOME」のCDジャケットがあります。プールのなかで作られた家系図の写真には森本さんの生き方や考え方がとても深くしみこんでいるんです。

驚くことに、このCDジャケットの製作…

はじめはレコード会社から「HOME」というシンプルなタイトルであること。そして、ボーカルの桜井和寿さんからメールで

「人間のからだの七割が水でできているくらい当たり前のもの」

という伝言をもらっていただけでした。アイデアを考えては煮詰まり、締め切りが迫っていたころ、病室にいた祖母が突然、洗礼を受けてクリスチャンになりたいと言い出しました。自分の葬式は色とりどりのお花を飾ることが出来る教会で行いたいという理由でした。

教会のなかで祖母の兄弟、娘、息子たち側にわかれ、家系図どおりに並んでいると、「ここにいる誰もが私とつながっている。もしここにいる誰かが欠けていたら私という存在はなかったんだ」という感慨におそわれたそうです。

このことが「HOME」そのもので「人間のからだの七割が水」という感覚にちかいものと感じたと。その瞬間アルバムジャケットは家系図にしよう。自分のちからではどうしようにもできない水のなかで撮影するというアイデアが生まれました。

Mr.children HOME

森本さんはこの水のなかを流れている感じ、自分をからっぽにする感じを大切にしています。無意味に力んでも面白いアイデアは生まれてきません。流れに身をまかせ、心をからっぽにして、ふわ~と流れていく感じ。自分の身の回りに転がっているアイデアや仕事相手の方々がもつエネルギーを感じ取ることが出来たら、自ずとアイデアが湧いてくると。

 流された場所で、どう生きるか。

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20代から広告業界の第一線で注目され、多くの広告賞を受賞してきた森本さん。順風満帆のような学生時代をおくってきたかのように思えますが、実は美大受験に失敗しているのです。中学3年から、美大予備校に通っていたので本人も確実に受かると思いきや、筆記試験に不合格。結局、武蔵野美術大学短期大学部から補欠合格をもらうも、プライドが許さず、断るつもりでいました。

「人生は入口が大切なのではなく、入ったその場所であなたがどう生きていくかで決まる。だからこういう運や縁に流されて生きなさい」

母親から言われたひとことに森本さんは多くの影響を受けました。結局、補欠合格で入学し、二年間の短大時代には尋常じゃない量のデザインを制作し、昼夜コピーライターの勉強もしていきました。

そして、100人に1人ほどしか受からない四年制大学への編入試験にみごと合格。就職活動では4年間で作り上げた膨大な作品や、博報堂の先輩に「つまらない」と言われ続けるも、めげずに半年間書き続けたポスターなど、尋常じゃない量の作品を…なんと2トントラックで試験会場に運搬し、周囲を驚かせました。

そして電通と博報堂、両方に合格。

人一倍遠まわりをして、つくり続けてきたからこそ、今の自分がいる。
「どこの場所に入るのかではなく、流された場所であなたがどう生きるのか」が大切と森本さんは言っています。プライドが消えた美大受験失敗の挫折から、人一倍ものづくりに真剣に取り組んできた森本さん。そのなかでもアイデアは最後の一滴がおもしろいと言っています。考えて、考えて、考え抜いた先に、思いついた一滴が、多くの人のこころに届くのだと。からだに染み込むくらい音楽を聴き、アイデアを出し尽くしていく。どんなにつらいことがあっても、めげずに作品を作り続けなければいけない。人一倍作り続けた先に、何かが見えてくると。

この本を読むと森本さんがいかに縁というものを大切にする方なのかがわかります。

ちなみに森本さんが独立して作った会社名は「goen°」です。

エネルギーの塊みたいな人と多く出会って、多くのことを吸収していく。その人と人とのあいだをふわ~とただよう中でうまれてくるアイデアを大切にしていく。

クリエイター向けの発想法の本は世の中に多く出回っていますが、この本は「こうしたらこうなれる」という部分を言っているのではなく、こころのあり方、考え方を通じて多くの刺激を私たちに与えてくれます。
方法論をいくら学んでも、所詮他人の模倣でしかありません。「こうしたらこうなれる」という部分から少しでも解放され、自身のオリジナルな部分に気付くきっかけをこの本はくれます。

最後に森本さんは「人生の岐路にあったら、私は明るい方を選ぶ」と言っています。こころを動かし周りを明るくしていく森本さんの生き方にあなたも多くの刺激を受けるはずです。

悩みを解決するポイント

  • こころをからっぽにして、ものづくりに身構えない
  • 流された場所で、どう生きるのか
  • アイデアは最後の一滴がおもしろい

アイデアが生まれる、一歩手前のだいじな話

  • 著者:森本千絵
  • 出版社:サンマーク出版
  • 発売日:2015/04/14

モデルプロフィール

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  • 名前:福田千織
  • 生年月日:1996/9/24
  • 出身地:東京都
  • 職業:日本女子大学
  • 受賞歴:ミス日本女子大学 準グランプリ、フレッシュキャンパスコンテストJJ賞
  • 趣味:お買い物
  • Twitter:@ccccccccc_c

(カメラマン・横須賀馨介)

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Myコーデ

WRITERこの記事を書いた人

kikuchan

6月9日(ロックな日)生まれ。 映像制作会社勤務。TSUTAYAから年賀状が届くほどの映画マニア。年間350本の映画鑑賞。 「映画ばかり見てないで、勉強しなさい」と言われて育つ。 学生時代は映画の新人賞受賞。文学だけでなく、あらゆる本を読むようにしてます。 好きな本:『竜馬がゆく』『スティーブ・ジョブズ』 趣味:座禅