ピクサー社長が本音を語る『ピクサー流 創造するちから』

ピクサー流 創造するちから―小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法

  • 著者:エド・キャットムル、エイミー・ワラス
  • 出版社:ダイヤモンド社
  • 発売日:2014/10/3

 

みなさんはクリエイティブな空間に入った経験がありますか?
私は就活中に何度か経験しました。とあるベンチャー企業を受けた際、ビルのなかに川が流れていて驚いたものです。川のほとりのバーベキュー場で平然とパソコンをひらく社員の方々……
なんで会社のなかに川が…そしてバーベキュー場があるんだ?

優秀な会社ほどあそび心にあふれています。出社して、ただ並べられたとおりに机に座り作業をしても何も楽しいことが起こりません。そして、成功している会社ほど社員の方々がイキイキとしています。社員のひとりと話しているだけで社長さんの人柄がわかってくるものです。

では世界屈指のクリエイターが揃うピクサーでは、どのような経営方針がなされているのでしょうか?
どのようなチームが形成され、映画を世に出していくのでしょう?
答えはこの本のなかにあります。ピクサーの現社長が、ピクサー創立時の話、スティーブジョブズとの親交、アニメーションづくりへの思いなど、これまで語られてこなかったピクサー映画の裏話が書かれています。ルーカスフィルムに捨てられ、ディズニーにも捨てられた会社がなぜ、世界屈指のアニメ工房になれたのか?
クリエイティブな組織を生み出す秘訣を知りたい方、ピクサーに学んでいきましょう。

 会議室の机を取っ払え!

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ピクサーの社屋の一番の特徴は、社員同士をしきる壁が極端に少ないことです。
会議室においても長い机は取っ払い、監督からスタッフまで階級に関係なく意見を言える環境を意識的に作っています。スタッフの役職順に座らせると、意見を言いづらい空気が生まれてしまうのだと、社長のエド・キャットムル氏は言います。

役職に関係なく、いつでも誰とでも意見を語り合う環境。これこそが創造的な企業文化を生み出していく。
マネージャーとして、いい組織を作り出すことに力を注いできた社長は誰でも意見を言い合える場、ブレイントラストという会議を作っていきました。これは卓越した作品を作るために、スタッフ同士が話し合いをする場であり、問題の発見と解決に努める時間です。スタッフは率直に意見を言い合い、アイデアを皆で育てていく。

とくに面白い点が、会議の内容自体に権限がないことです。
上役の人がこうしろと言ってもスタッフは自分が思ったことを実践していくのです。

問題の解決策をスタッフに強制するのではなく、自らが考え行動していく企業文化が根付いているのです。クリエイティブな組織において、人が一番大切だ。率直な意見を言い合える場がクリエイティブなものを生み出していくのです。

 クリエイティブな仕事ほど失敗しろ

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クリエイティブな分野では失敗が許されるべきなのです。

あのジェームズキャメロンも語っています。「アビス」という興行的に失敗した作品がなければ、「ターミネーター2」「タイタニック」は生まれなかったと。「アビス」の製作時に、液体のCG化と水中撮影に挑戦したことが、次の映画制作にどれほど活きてきたことか
(「ターミネーター2」の水銀男をつくるのにどれほど大変だったのだろう……)

ピクサーでは失敗が起こった時に、問題を起こした社員を見つけるよりも解決策を考えることに全力を注いでいます。失敗がつぎの成功につながることを意識的に知っているからです。

「トイストーリー2」の制作時には大事件が起こりました。データのバックアップの操作ミスで、数か月分の作業データが消えてしまったのです。ウッディとバズのデータがすべて消えてしまうという前代未聞のトラブルに社員全員が焦りました。しかし、監督たちはミスをした犯人捜しをするよりも、ウッディとバズをピクサーのパソコンのなかに戻すことだけを考えていきました。

結果的に、産休中に自宅で作業をしていた女性のパソコンのなかに、データ喪失まえのウッディとバズの姿があり、バックアップが取れたそうです。

スタッフは皆全力で仕事をしている。誰かを見せしめにして偶発的なトラブルを回避できると思うのはおろそかだ。社員に自分たちの問題は自分で対処するということを大切にしてもらいたいという社長の願いが実践された機会でした。この事件があったことで、過酷な労働のなかでも、スムーズに進行し、制作を進めていくマネージメントの方法が考えられていきました。

 ピクサー生みの親 スティーブジョブズの面影

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ピクサー創立者のひとりにスティーブ・ジョブズがいることを知っていましたか?ルーカスフィルムから自腹でピクサーを買い取り、優秀な監督たちに自由気ままにアニメーションづくりができる環境を整えていったのです。

ジョブズが亡くなった後には、本社ビルが「ザ・スティーブ・ジョブズ・ビルディング」と改名されるくらい、ピクサー社員のなかでスティーブジョブズという人間の存在は大きかったようです。

この本のなかでは、ピクサー社長のエド・キャットムルがスティーブ・ジョブズとの長いようで短かった親交を赤裸々に語っています。アップルに関するどの書籍よりも、スティーブ・ジョブズの人柄がくわしく描けているのでは?

自己中心的で傲慢、人を平気で侮辱するジョブズの人柄はよく知られています。そんななかでも、自分に反論してくる意思の強い持ち主にだけは、しっかりとした礼儀をみせるというジョブズの人間的な魅力を親友のエド・キャットムルは語ります。

相手を罵倒して、その人の意志の強さを確かめていくというジョブズのやり方につぶれていく社員がいるなか、経営面でピクサーを守ってくれたと。

ジョブズがいてくれたからこそ、今のピクサーがあるのだとも。

世界中からクリエイターが揃うピクサースタジオ。今も私たちに夢と希望に満ちた素敵な映画を届けてくれます。本音を語らせる環境こそいいものを作る唯一の方法。そう語る現社長のエド・キャットムルはピクサーを創立時から知り、今も優秀なアニメーターたちと映画作りに励んでいます。クリエイティブ心に満ちた会社の環境を作り出すことが、人を魅了するものを生み出す秘訣なのではないでしょうか?

<合わせて読みたい>



ペーパーバック版 スティーブ・ジョブズ 1

こちらの本でもピクサー創設時の秘話やジョブズとピクサーの関係が細かく書かれている。
アップルとピクサー…世界を変えていった人たちの真の姿を知ることが出来ます。

悩みを解決する3ヶ条

  • 悩みを解決するポイント会議室の机を取っ払え!本音が言える場所からクリエイティブなものが生まれていく
  • 問題が発生しても犯人捜しより、問題解決に努める。スケープゴートは社員の意識を下げるだけ
  • 試作品を多く作り、人一倍に失敗をする。ピクサーでも長編映画の前に短編映画をいくつか作り、技術開発に努めている。短編での失敗が次の長編で活きてくる。

ピクサー流 創造するちから―小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法

  • 著者:エド・キャットムル、エイミー・ワラス
  • 出版社:ダイヤモンド社
  • 発売日:2014/10/3

モデルプロフィール

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  • 名前:小林舞
  • 生年月日:1995/01/23
  • 出身地:埼玉県
  • 職業:立教大学
  • 趣味:ピアノで弾き語り
  • Twitter:@chanmai7123

(カメラマン・横須賀馨介)

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WRITERこの記事を書いた人

kikuchan

6月9日(ロックな日)生まれ。 映像制作会社勤務。TSUTAYAから年賀状が届くほどの映画マニア。年間350本の映画鑑賞。 「映画ばかり見てないで、勉強しなさい」と言われて育つ。 学生時代は映画の新人賞受賞。文学だけでなく、あらゆる本を読むようにしてます。 好きな本:『竜馬がゆく』『スティーブ・ジョブズ』 趣味:座禅