戦時中のこどもたち『ガラスのうさぎ』

ガラスのうさぎ

  • 著者:高木 敏子
  • 出版社:金の星社
  • 発売日:2005/06

戦後71年を迎え、戦争経験者は減少の一途をたどっています。今、日本人の約5人のうち4人は戦後生まれです。

そして今存命でいらっしゃる戦争経験者のほとんどは、当時20歳以下の「こども」でした

今回ご紹介する『ガラスのうさぎ』は、児童文学作家の高木敏子さんの戦争体験を描いたノンフィクション小説です。

71年前の子供たちは、戦争に対してどう思い、どのように戦時下を生きたのでしょうか。当時小学生だった「敏子」の目線から、「戦争が子供をどのように変えるか」を見ていきます

戦時中のこどもたち

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

1941年太平洋戦争(当時の大東亜戦争)が始まると、子供たちは少国民と呼ばれるようになりました。少国民は、「天皇の国の年少の民」という意味です。

開戦直後の勝利はつかの間、次第に敗色がただよい始め、戦地に居ない銃後の人々(女性、子ども、老人など)の生活がみるみる苦しくなっていきす。
そんな中、子供たちも大人と同じように、日々をどのように生きていくかを必死に考えなければなりませんでした。食料、衣服は配給制。お菓子など、もちろんありません。服も買えないので、ほぼ全て手作りでした。

子供たちは、毎日のように出征兵士を見送りに家の前まで行き、声高らかに兵士を送る歌を歌いました。

苦しい生活に、抵抗も疑問もありませんでした。子供たちにとって、戦争は当たり前のものになっていたのです

声高らかに、みんなでうたった。なんの不自然さも抵抗もなく、むしろ力強く、せいいっぱいうたった
わたしたちは、「日本の国は、米英軍(アメリカ、イギリス軍)からアジアや日本を守るために戦っているのだ、アジアの子供たちは、みな兄弟なんだ、一億一心となって、米英軍の侵略をふせがねばならない。みんな、国を思い、天皇陛下に忠義をつくせ」と教えられていた。
そして皇国(天皇のおさめる国)日本を守るために。みな兵隊さんになっていくのだと、ただ純粋にそう思っていた

ガラスのうさぎ

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

戦時に生きた「こども」の一人である敏子には、ガラス工芸家の父、病弱な母、2人の兄、2人の妹がいました。 貧しくも幸せな生活を送っていた高木家でしたが、戦争が始まると兄が出兵したり、敏子が学童疎開(児童を空襲が少ない農村へ避難させること)をしたりと、家族がバラバラになってしまいます。

そして、昭和20311日、敏子の人生を大きく狂わせる出来事がありました。それは、東京大空襲です
敏子は神奈川県に疎開していたため無事でしたが、母と二人の妹の行方が分からなくなりました。父と共に東京に戻り、必死に探し回っても3人を見つけることはできませんでした。

焼け野原となった東京。敏子は自宅と思わしき焼け跡の瓦礫の中から、溶けてぐにゃぐにゃに歪んだ「ガラスのうさぎ」を見つけます。それは、家の床の間に飾っていた大きな硝子の置物でした。

ガラスが溶ける温度は、約700度。母と妹の生存は絶望的でした。

強い子供でなければ、生きられなかった

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

昭和20年8月、児童疎開を続けていた敏子の元に一本の電報が届きます。父と二人で、新潟で暮らすことになったのです。これまでずっと1人だった敏子は、父と毎日一緒に居られることが楽しみで仕方ありませんでした。

しかし、駅で新潟に向かう列車を待っていた時、アメリカ軍の飛行機の機銃掃射を受けます。飛行機が過ぎ去った後、父の姿を探し続けます。目に入ったのは、父の変わり果てた姿でした

「お父さん、お父さん、どうしたの。」と父の肩をゆすった。でも父の大きな体は、びくっとも動かない。右のこめかみのところから、血がどくどく流れている。青黒い顔をして、目はあいたまま返事をしない。
父は死んじゃったのかしら。そんなはずはない。わたし一人をのこして死ぬわけがない。わたしは下くちびるを痛いほどかんだ。

父を目の前で亡くした敏子はひとりぼっちになりました。この時、敏子は13歳でした

いま、戦争で苦しむ少年少女に思いを馳せる

敏子は、父の葬式とその後の手続きを一人で済ませました。親を失っても気丈に振る舞う敏子には、感心させられます。しかし、子供がここまで大人な振る舞いをしているのを見ると、虚しさすら感じてきます。

敏子だけにとどまらず、当時のこどもたち全てに言えることです。当時の子供たちは、我慢強く、気丈に振る舞い、運命を淡々と受け入れなければなりませんでした。
子供らしさを押し殺して、強くならなければ、戦時中を生き抜くことができなかったのです

現代にも、戦争によって苦しんでいる子供たちが大勢います。地雷を受けて体が不自由になった子、身寄りがなく戦争孤児となった子、放射能兵器の被曝に苦しむ子、誘拐され兵士となった子……。
『ガラスのうさぎ』を通して日本の子供たちの戦争体験を知る。それは、「戦争に夢や希望を奪われ、苦しんでいる現代の子供たち」について考えることにも繋がると思うのです。

 

ガラスのうさぎ

  • 著者:高木 敏子
  • 出版社:金の星社
  • 発売日:2005/06

合わせて読みたい

浮浪児1945‐: 戦争が生んだ子供たち

  • 著者:石井 光太
  • 出版社:新潮社
  • 発売日:2014/8/12

終戦直後、12万人以上の戦災孤児が生まれた日本。その中心、焼け跡の東京に生きた子供たちは、どこへ“消えた”のか?本書は、五年の歳月をかけて元浮浪児の方々の証言を集め、あの時代から現在までを結ぶ歴史に光を当てたものです。

モデルプロフィール

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

名前:浅井麻里
生年月日:1988/6/25
出身地:名古屋
職業:フリーモデル、ブロガー、ライター
受賞歴:WSD(早稲田)アイドルプロジェクト (一般ネット投票1位&審査員特別賞&グランプリ)
趣味・一言:ディズニーに行くこと(ランド&シーの年パス持ち3年目、カリフォルニアとハワイと香港のディズニーにも行きました!)、旅行
最近の悩み:旅行好きで写真を撮りすぎて、ブログとかにアップする写真整理ができない!
Twitter:@v_Maari_v
Insta:mari_asai_625
Blog:Mari Asai OFFICIAL BLOG

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

本to美女選書

WRITERこの記事を書いた人

湯川 うらら

本to美女編集長 湯川うらら 麗らかな春の日に生まれました。「一瞬一瞬を全力で」がモットーの、本to美女編集長/インタビュアー/キャトグラファー。著者の半生から学び、登場人物の人生を味わい尽くす……「本」は、人類と共に時代を紡いできました。週1回はブックカフェに通い、気になる本を味見するのが楽しみ。実用書から漫画まで、守備範囲は幅広い。色々な人の話を聞いて、人生を豊かにしたい、誰かを幸せにしたい。 猫の島へ単独潜入するほど、生粋の猫好きで、SNSはネコ写真でいっぱい。一年中もふもふしていたい。