禎子の千羽鶴
- 著者:佐々木 雅弘
- 出版社:学研パブリッシング
- 発売日:2013/7/9
オバマ大統領の広島訪問と折り紙の「鶴」

2016年5月27日、アメリカ合衆国の大統領のバラク・オバマさんは広島にいました。核廃絶を訴えるため、現職米国大統領として初めて、原爆が投下された都市広島を訪問したのです。
そんな歴史的瞬間に、オバマ大統領がプレゼントしたのは、4羽の『折り鶴』でした。千代紙でできたかわいらしい鶴は、オバマ大統領が自らの手で折ったものでした。
オバマ大統領が折り鶴を持ってきたのは、『禎子の千羽鶴』の物語を知ったからでした。
戦後もなくならない「原爆症への恐怖」

広島県出身の佐々木禎子ちゃんは1945年8月6日、原爆によって被爆し、放射性物質の含まれた「黒い雨」を浴びます。彼女は当時2歳でした。その10年後に原爆が原因で白血病を発症し、僅か12歳で尊い命を落としました。
アメリカ軍による広島の原子爆弾は、人類で初めて使われた核兵器でした。劣勢にも関わらず降伏を拒否し続ける日本に対し、アメリカ軍は早く決着を着けるため、原爆投下を決めたのです。
8月6日の広島の原爆投下では、爆発による爆風や火事などによって、約14万人の尊い命が奪われました。
核兵器の恐怖は、爆発の破壊力だけではありません。爆発と同時に大量の放射線が放出され、爆心近くにいた沢山の人々が、数日以内に命を落としました。
さらに、その後も残留している放射線が人々を蝕み、病気になって亡くなる人も大勢いたのです。人々はこの病状を「原爆症」と呼びました。
終戦から10年が経った1955年、活発な少女だった小学校6年生の禎子ちゃんにも、放射線による病魔が襲いかかるのです。
鶴に願いを込めて

禎子ちゃんの病状は、どんどん悪化していきました。両親は、「禎子ちゃんには病気のことを言わない」と決めていましたが、少しずつ自分の現状に察し始めているようでした。
ある日、禎子ちゃんの病室に、一羽の折り鶴が届きます。愛知の青少年赤十字部が病気の回復を願って折った鶴でした。
「どうして折り鶴を折ってくれたのかな?」
と質問する禎子ちゃんに、お父さんは、
「折り鶴を1000羽折ると願い事がかなう、昔からそう言われとるんよ」
と答えます。すると、禎子ちゃんの目が輝くのでした。
それをきっかけに、禎子ちゃんは、鶴を折り始めました。
亡くなるまで病室で折り紙の鶴を折り続けました。綺麗な正方形の折り紙が手に入りにくかった時代でしたから、飴や薬の包み紙、レントゲンのフィルム銀紙などの紙を使って、鶴を折りました。50羽折るとまとめて糸を通してつるしていきました。
折り鶴を折っていた理由

ある日、お母さんは、禎子ちゃんが鶴を折る理由を知ります。それは、予想していなかったものでした。
「お父ちゃんには内緒にするけん、お母ちゃんには教えてよ」
禎子は笑顔を浮かべながらこう答えます。
「今折っている鶴にはね、お父ちゃんの借金が早うなくなりますように、ってお願いしてるの。でも、お父ちゃんにいったら気にするじゃろ」”
禎子ちゃんが鶴を折るのに熱中していた理由は、自分の病気の治療費のためにお金に困っているお父さんを助けるためでした。自分の病気が治すためではなかったのです。お母さんは、禎子ちゃんをだきしめ、涙を流しました。
そして1955年10月25日、禎子ちゃんは静かに息をひきとりました。
禎子ちゃんが生前折った折り鶴の数は約2000羽と言われています。禎子ちゃんは、自分の死期を悟りながらも、家族の幸せを一番に願い、折り鶴を折り続けたのです。
『原爆の子の像』と折り鶴たち

平和記念公園には、『原爆の子の像』があります。両手を天に向かって広げる小さな女の子。その後ろに大きな鶴が禎子に寄り添うように羽を広げている像です。少女が折り鶴を大空に羽ばたかせようと支えているようにもみえます。
像の真下の石碑には、「これはぼくらの叫びです これは私たちの祈りです 世界に平和をきずくための」と刻まれています。
『原爆の子の像』は禎子ちゃんだけでなく、戦争や原爆で亡くなった全ての子供たちへの慰めのために建てられました。
平和記念公園の敷地内は、色鮮やかな折り鶴で溢れています。禎子ちゃんの折り鶴がきっかけで、いつしか鶴は、平和の象徴となりました。禎子ちゃんの願いは、今も受け継がれています。
『禎子の折り鶴』の作者である禎子ちゃんのお兄さんは、本の最後にこう語っています。
戦後、70年が経過しようとする今、過去の戦争の過ちは決して忘れてはなりませんが、うらやむような気持ちは絶対に捨てなくてはなりません。
これから先に大事なことは、お互いを認め合い、そしていつくしみ愛おしむ<思いやりの心>をつなげて、人々の間に心の輪をひろげていくことでしょう。
その小さな思いやりの芽こそ、禎子が折り鶴とともに私たちに残してくれたものだと思うのです
禎子の千羽鶴
- 著者:佐々木 雅弘
- 出版社:学研パブリッシング
- 発売日:2013/7/9
モデルプロフィール

- 名前:高村幸恵
- 生年月日:1995/12/21
- 出身地:栃木県宇都宮市
- 職業:首都大学東京
- 受賞歴:ミス首都大ファイナリスト 2016
- 趣味:本を集めることが好きです!
- 最近の悩み:時間が足りないことです
- Twitter:@tba2016_ms_no2
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