その服は似合いすぎます。『試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。』

試着室で思い出したら本気の恋だと思う

  • 著者:尾形真理子
  • 出版社:幻冬舎
  • 発売日:2014/2/6

言葉が刺さる、5つの短編集

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「言葉に頼りすぎると 退屈な女になっていく」
「幸せだけ 女って上手に隠せない」
東京の街を歩いていて、なんとなく胸に残るこのフレーズを見たことがある人も多いのではないでしょうか。ルミネの広告で使われたこのコピー。本書はこのフレーズを考えた尾形真理子氏が作者である物語です。

主人公はマンネリ、不倫、年の差、元彼、ギャップ、といった恋愛にまつわる様々な悩みを抱えた5人の女性。舞台は渋谷にあるセレクトショップ「closet」。不思議な魅力を持つ店員との会話の中で、それぞれがそれぞれに合う服と、悩みに対する思いを見つける、女心をくすぐる物語です。
今回はその中から2つの短編をご紹介します。

あなたといたい、と ひとりでへいき、を いったりきたり。

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家系的に代々続く、赤ちゃんたらこみたいなぷっくらとした指がコンプレックスの土谷メイコ。メイコはそんな自分の指を初めて褒めてくれた良太郎と高校時代から付き合って、10年という関係になる。東京でネイリストをしているメイコは、オーナーから新店のチーフ就任の話をもらうが自信がないことに頭を悩ませ、地元ラブの良太郎へ不満とマンネリを抱いていた。そんななか休日の気晴らしと渋谷へいき、オーナーが以前教えてくれたセレクトショップ「closet」を訪れる。

最初メイコが手に取ったのは、グレー地に紫とピンクの花柄が愛らしいスカート。小花柄のスカートはメイコの定番アイテムだ。さっそく試着してみるがなぜか、何かしっくりこない。でも答えがわからないメイコに店員が言う。

「お似合いになり過ぎることでしょうか?」

そして店員は、小花柄のスカートとカタチは全く一緒だが、無地で色も黒に近いチャコールグレーのスカートを持ってくる。メイコが普段着ることのないようなスカートだ。その大人っぽいスカートに挑戦してみてメイコは気付く。挑戦は新しい自分を見せてくれることに。

「人と比べておしゃべりが上手じゃないとか、社交的じゃないなんて、そんなの言い訳だ。向き合おうとしているかどうか。まずはそこなんだ」

「別れる勇気もないくせに、惰性で付き合っていたのは、わたしのほうかもしれない。新しい色を何度でも重ねていく手間と気持ちを、わたしは面倒くさがっていた。」

そして思い出す。自分と同じように手にコンプレックスを持っている人に、可愛いネイルをすることでも少しでも自信を持ってもらえたらと志したネイリストという仕事への愛情。良太郎への気持ち。チャコールグレーのスカートはメイコに自信と意志を与えてくれた。

好きは、片思い。似合うは、両思い。

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正しい子と書いて、マサコ。そんな自分の名前が嫌いなマサコは仲間の輪からはみ出ることはせず、人と違う道を選ぶのを避け、「平凡な子」として29年間生きてきた。そんなマサコが魅力を感じるのは、「正しさ」ではない。人とは違う才能。クレイジーなクリエイティビティ。オンリーワン。
マサコが同棲しているのはまさしくそういう男。最近売れてきている写真家の芸(たくみ)だ。彼のそんな人とかぶらない名前も好いている。

芸との会話の中で結婚が決まり、今の受付嬢の仕事を辞めて芸のマネージャーになろうかと密かに考えていたマサコは、芸に写真展のパーティーに招待される。パーティーでマサコは芸のマネジメントをしているという女性に出会う。名前はダリア。赤のスリップドレスがよく似合う。マネージャーがいると知らなかったマサコは、ダリアの非平凡さにどうしようもなく嫉妬する。ダリアに負けない脱平凡な服が欲しいと雑誌をめくる中で見つけたニットドレスが売っているお店、渋谷の「closet」へマサコは出かける。

「変な人みたい」

ニットドレスを試着したマサコの最初の感想だ。どうしようもなくいたたまれない気持ちのマサコは店員に言う。ここからの会話が私は好きだ。
「普通じゃない服を探しているんです」
そんなマサコに対して店員は、聞く。
「どんな洋服が好きですか?」
“マストバイ!”や“鉄板アイテム!”の売り文句につられ服を買うことが多いマサコは正直にこう答える。
「わたしをかわいく見せてくれる服が好きです」
「かわいく見せてくれる服が私も好きです」
人懐っこく笑った店員が持ってきたのはコサージュだった。
そして、マサコの左耳の後ろにコサージュをつける。

「かわいい…」
思わず声が出た。コサージュそのものというより、自分自身が。存在感があるのに主張しすぎない感じ。奇をてらわない、素直な感じ。

店員が提案したのは、新たな洋服ではなく、マサコが持っている洋服に合うコサージュ。そしてマサコは自分の中に納得する答えを見つける。

「人と違うのが『個性』ではなく、自分らしいのが『個性』なんだ」

等身大の女性

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5つの短編集全てに、主人公がどんなファッションが好きでどんな服をいま着ているのか、詳しく描かれています。その姿を想像していたら勝手に、あっ、ルミネエストだったら何階あたりのブランドだな。この人は多分、ルミネ1より2派だな、なんて想像してしまうのがまた面白いんです。

自分に当てはまるシチュエーションがなくても、なんとなく読者にもしっくりくる。明日はおしゃれしよう、自分を可愛くしよう、そんな風に思わせてくれる作品です。

試着室で思い出したら本気の恋だと思う

  • 著者:尾形真理子
  • 出版社:幻冬舎
  • 発売日:2014/2/6

モデルプロフィール

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  • 名前:水谷花那子
  • 生年月日:1993/9/29
  • 出身地:大阪府
  • 職業:慶應義塾大学
  • 受賞歴:週刊ゴルフダイジェストビューティークイーン2016
  • 趣味・一言:クラシックバレエ・スペイン語・ゴルフ 
  • 最近の悩み:学生生活が終わること
  • Insta:@kanakomizutani
  • 他リンク:https://store.line.me/stickershop/product/1324362

(カメラマン:伊藤広将)

 

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