30歳だって女子だぞコラ 『ガール』

ガール

  • 著者:奥田英朗
  • 出版社:講談社
  • 発売日:2009/1/15

 

いくつまでを「ガール」と呼ぶか
高校生の時には20歳の女性はとてつもなく大人で、「はたち」という響きに何か特別なものを感じていた。確かに、20歳になればお酒を飲むのもタバコを吸うのも自由。旅行に行くにも親の同意書だっていらない。

けれども、19歳から20歳になったから精神的に大きく成長するなんてことはそうそうない。逆に30代、40代になったとしても自分が年齢を気にさえしなければ、いつまでも「はたち」の気持ちで過ごすことができるのだろう。

「ガール」に出てくる5人の女性は、全員バリバリ働く30代女性だ。周りが出産、結婚していく中で自分はいつまで「ガール」でいられるのか。いていいのか。30代女性のリアルと、希望をオムニバス形式で描いている。

①大企業 30代 石原ゆかり

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大企業で働く30代独身の石原ゆかりは、友人めぐみの話を聞くうちになんとなくマンション購入に興味を持つようになり、本屋で関連本を立ち読みする。

しかし、職場では役員秘書室の星野香織と何かと敵対していた。帰国子女で内巻きカールの髪。若くて可愛いだけで役員のおじさまたちに可愛がられ、まともに仕事をしない。そんな星野香織がどこか気にくわないと思っていた。

ある日どうしても手に入れたいと思ったマンションの内覧へと行くと、そこに祖母と来ていた星野香織と出会う。翌日オフィスで星野香織にマンションの話を聞くと、購入することにしたと言われ、ゆかりは絶望する。一番苦手とする人と同じマンションに暮らしたくなんかない。でもあのマンションに住みたい。ゆかりは三つの選択肢を頭に浮かべる。

  • 諦めて他を探す。
  • 強い意志で無視する。
  • 仲良くなってそれなりの近所付き合いをする。

ゆかりは最初、三を選ぶ。会社でも今までよりも香織に丁寧な態度をとるようにし、頭にきてもなるべく穏便にすませるように努力していた。
しかし、香織が秘書として調整すべき上司の仕事を調整せず、耐えきれなくなったゆかりは、香織の上司に向かって溜まっていたことを全てぶつける。やってしまった、と思うと同時にスッキリとした気持ちのゆかりは気づく。

「自分のファースト・プライオリティは自分を偽らないことだ」
自分に嘘はつかず、気に入らない相手と上手くやれなくても別にいいのだ。
そしてゆかりは新たな部屋探しを決意する。

②広告代理店 30代 滝川由紀子

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広告代理店で働く滝川由紀子の職場は女性が派手なことで有名で、そのせいもあってか30代の由紀子はミニスカートも履くし、白のノースリーブのニットだって着る。決して若作りのつもりはない。まだまだ現役の「ガール」だと思っている。そして40代でありながらヘソ出しのピチTにスキニージーンズを着こなす上司の光山晴美。通称「お光」との新しいプロジェクトを楽しんでいた。

しかし、会社の部下と行ったディスコでは自分の前を素通りし、20代の部下の女子に声をかける男性を目の当たりにし、会社のサークルで行ったスキー・ツアーでは、お光のことを「おばさん」と言う陰口を聞いてしまい、完全に「ガール」としての自信をなくす。

スキー・ツアーから帰ってきて、年相応の落ち着いた格好ばかりするようになった由紀子に同窓会の知らせが届き、気晴らしにと参加する。同窓会は時間が経つとなんとなく、今もバリバリ働いている組と、家庭に入っている主婦組で別れてグループができた。家庭に入っている人に仕事の愚痴をこぼしてもよく分からないし逆も然りだからだ。
 帰りの電車でたまたま主婦組の元クラス委員と乗り合わせる。無視するのも失礼かと思い、声をかけると由紀子は意外な言葉を聞く。

「明日から、しばらくブルーになりそう」
由紀子は驚き「どうして?」と尋ねる。すると、
「だって滝川さんたち、バリバリ働いているんだもん。社会とかかわって、男の人たちと渡り合って…。こっちは狭い地域で家事と育児をするだけだもんなあ。焦っちゃう」

安定した彼女たちを羨ましく思っていた由紀子は虚をつかれた思いがした。
そして去り際の元クラス委員に向けて勝手に言葉が出てきた。
「ねえ。うちらだってブルーだよ。いつまでこういう生活していいかわかんないし。若さなんて永遠じゃない。焦ってるのはこっちだよ」
元クラス委員も「そうなの?」と驚いた様子だった。
「きっとみんな焦ってるし、人生の半分はブルーだよ。既婚でも、独身でも、子供がいてもいなくても」

同窓会でかつての友人、仲間、そして主婦の気持ちに出会った由紀子はのびのびとした心で改めて思う。
「女の子は楽しまなくっちゃ」

ガールで何が悪い!

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社会に出たらバリバリ働いて、自分で自分の人生を切り開いていきたいという人もいれば、ある程度働いて適齢期になったら結婚したいという人もいるし、むしろ大学卒業したらすぐ結婚したい、働きたくなんかない。という人もいる。

今の日本は、社会に出てからの選択肢は有り余るほどにあるように思う。でも、働きながら子供を育てることは本当にできるの? 結婚したら家庭に縛られるの? 自分が選ぶであろう道に対して不安は絶対についてくる。

この本は、そんな不安を「なんとかなる」と思わせてくれる作品だ。結局、自分が輝くことを諦めていないかどうか、それが一番大きい。30代になった時に改めて読みたい。そして「ガール」の心を忘れていないか自分に問いかけたい。

ガール

  • 著者:奥田英朗
  • 出版社:講談社
  • 発売日:2009/1/15

モデルプロフィール

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  • 名前:川原あやか
  • 生年月日:1993/11/16
  • 出身地:福岡県
  • 職業:会社経営
  • 趣味:ディズニーに行くこと
  • Twitter:@ayacho111
  • 他リンク:http://giselle-design.com

 

(カメラマン:伊藤広将)

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