大人は、強くもなんともない。
むしろ、子供より弱い。
大人になるときにあらゆるものを失い、空想世界への行き方を忘れ、子供の頃には見えなかった恐怖に怯えながら、迫り来る現実になすすべもなく襲われる。
そんな大人たちの心に寄り添う物語を紹介したい。
きっと、あなたのそばにいてくれる。
夏の水の半魚人
大人になったいま、子供だった日々を思い出すことがあるだろうか。大人の日々と違って、あの頃は毎日が輝いていただろう。
この世界をいちばん謳歌しているのは、きっと子供だ。子供に聞こう。日々を輝かせる方法を。私たちは大人になるとき、何を失ったのかを。
あなたを、少年だった頃に、少女だった頃に、巻き戻す物語。「夏の水の半魚人」。
ぶらんこ乗り
子供にとって、現実と空想の世界に境界はない。自由に行き来する。そう、まるでぶらんこのように。
大人はどうだろう。きっと、空想の世界はちょっと遠くにある。
どうしてかって、空想が現実のものではないと知っているから。一線を引いて世界を分けてしまっているから。
でも、空想の世界に入っていけないわけじゃなくって、それが空想だってわかった上で、ひとつ距離をおいて、受け止めて、入っていく。
大人も、現実と空想の間を自由に行き来するぶらんこに乗れるだろうか。
「ぶらんこ乗り」という物語が、手助けをしてくれる。
ハリネズミの願い
大人になれば、いろんなことを知る。
いろんなことを知っているから、様々な可能性を頭の中で考え、こねくり回し、何をするにも臆病になる。
特に、人間関係においては、それが大きな弊害となる。
子供の頃は、一度でも一緒に遊んでしまえば、それでもう友達だった。何も考えることなく、友達になれた。いい意味で、相手の気持ちを想像しないからだ。
大人になれば、相手の気持ちを勘ぐる。仲良くしたくても、相手にどう思われるのかが怖かったり、自分なんか釣り合わない、拒まれるかもしれないとくじけたりすることもあるだろう。他人の心が恐ろしい。見えないものが恐ろしくなるのだ。
そんな見えないものへの悩みを持つ、ハリネズミの物語がある。
「ハリネズミの願い」だ。
生まれいずる悩み
この世の中に、自分のやりたいことを全うする素晴らしい人生を送れている人が果たして幾らいるだろう。きっと、一握りもいないのである。それが現実である。
それでは、その現実を受け止め納得して人生を生きる人が幾らいるだろう。大人になるということは現実を受け入れることだ、なんて話も聞いたことがある。大抵の大人たちは、仕方がないと割り切り、現実を受け入れて日々を生きている。
だが、その現実を受け入れるに受け入れられず悩む人がいる。子供だ、と笑うだろうか。胸に手を当てて考えて見てほしい。きっと、大人たちの心に眠る悩みの種が疼きだし、今にも芽を出すに違いない。子供が持ち得ない、大人だけの悩みなのである。
そんな大人たちの心に寄り添ってくれる物語が、「生まれいずる悩み」だ。
鍵泥棒のメソッド
大人の悩みは尽きない。
浮かんでは消え、浮かんでは消え、永遠に迷い続ける。
私たちは悩むために生きているのだろうか。いいや、それは違う。生きることは悩むことだ。でも、悩むために生きているわけではない。
それでは、なんのためか。
富や名声を得るためか。自分の存在を認めてもらうことか。かけがえのない友情を築くことか。人を愛するためか。
それが何であれ、私たちは何かのために生き、日々を悩みながら生き抜く。
だが、生きることよりも、悩むことに力を注ぎすぎてはいないだろうか。
もう一度言おう。私たちは悩むために生きているのではない。
悩みを抱えすぎた大人たちの気休めとなる物語。
「鍵泥棒のメソッド」
「読みかけの本があるうちは守られている気がしてた」
(吉澤嘉代子 / 一角獣 より引用)
大人だけの苦悩を跳ね除けよう。
物語は私たちを包んでくれる。
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