Think Simple
- 著者:ケン・シーガル
- 出版社:NHK出版
- 発売日:2012/5/23
アップルの哲学が、ここにはある
選択肢を与えられたときに、正常な人は複雑な道よりもシンプルな道を選ぶ
これがシンプルの一番の特徴だと本書は言う。それだけ知らず知らずのうちに多くの人たちを頷かせる力がシンプルにはあるのだろう。
本書はスティーブ・ジョブスのもとでアップルの躍進を見続けてきたクリエイティブディレクターが、アップルの持つ「シンプルの杖」の威力を余すことなく明かしている。”アップル社とシンプルさの相思相愛ぶりは人目を忍ぶものではない”シンプルに愛されたアップルならでの哲学がこの本には詰まっている。
多ければいいわけではない。少人数の法則

例えば、大企業の会議を想像してほしい。広い会議室にたくさんの社員が集まり、プロジェクターやパソコンを使って話し合いをしている姿が浮かぶのは私だけではないだろう。しかしアップルはシンプルさの最重要ルールとして”有能な少人数グループで始め、その規模を守ること”を徹底している。その理由は質の高い思考を養うためなのだという。
会議に出席するには、そこに参加する理由を全員がちゃんと持っていなければならない。情けで招待し会議に参加させるということはあってはならないのだ。それは会議に出席する人材を選ぶということは”人柄の問題ではなく、ビジネスの問題”だからだ。
プロジェクトを始めようとするときに人数が多い方が、多種多様な意見が出るのでは?
そう思う人もいるだろう。アップルの考え方はその逆だ。
関わる人間が多くなればなるほどブリーフィングは複雑になり、メンバーの仕事をチェックして、スピードアップするために必要な手間がかかり、有益なフィードバックにも時間がかかる
というのだ。有能な個人の力が会社全体を動かす。意味のないヒエラルキーを作らずに、信頼できる仲間と成果を上げるための仕事をする。このシンプルさがアップルを成功に導いた軌跡の根底にあった。
無駄なものを排除したミニマムであること
まずはアップルストアを思い出してみてほしい。無駄なものが一切なく、商品が平然と並べられているあの空間。壁や商品が陳列されている空間は限りなく真っ白に近く、余念がない。
これこそジョブスが公言してきたアップルのミニマムさである。”ひとつのことに焦点を合わせたら、それ以外のことには注意を向けない”これだけ聞くと選び抜いたひとつのものごとに対して、ひたすらイエスとおし勧めることだと考えがちである。
だがそれは違う。それは焦点をあてたこと以外に用意されている100のアイデアにノーと言うことでもあるのだ。本書では”私は自分がしてきたことと同じくらい、してこなかったことに誇りを持っている”と述べられている。それだけ選ぶという行為に対して、慎重にそして自信に満ちた選択をしてきたのだろう。
シンプルさはじっとしていられない

何も手を加えないことがシンプルなのではない。シンプルさを維持するためには、常に実験を続けなくてはならない。”シンプルさの力を知る最良の方法は、現代社会でささやかな化学的実験を行うことだ”とジョブスは述べている。アップルの広告戦略では、ジョブスは様々な実験を繰り返す。
常にスマートでタイトなスケジュールを設定して、試行錯誤を繰り返すように動き続ける。こうしてシンプルな思想、商品やマーケティングに反映され、確固たるブランドのイメージを作り上げていくのだ。
シンプルを貫く、アップルの美学
”商売の基本原則のひとつだ。シンプルさは人を引きつける”アップルの成功の裏には、シンプルさを貫くための試行錯誤があったような気がする。本書はジョブスの仕事ぶりや逸話はもちろんのこと、デルとアップルの商法の違いや戦略方法に至るまでなるほど!と思える実話がたくさん組み込まれている。ビジネス書としてではなくても楽しめる1冊だと思う。
シンプルを維持する、ということは決して手を抜くことではない。シンプルにするために徹底して考え抜き実験を続けて最終的に残った価値観や思想が、余分なものが排除されたシンプルなのだ。シンプルさの美学は、とても奥が深い。
Think Simple
- 著者:ケン・シーガル
- 出版社:NHK出版
- 発売日:2012/5/23
今日のポイント
- シンプルを意識して、やるべきことを選んでみる
- 少人数のチームで、徹底的に試行錯誤してみる
- 毎日の仕事や行動をシンプルにするために、動いてみる
モデルプロフィール

- 名前: 福永真依
- 生年月日:1996/11/14
- 出身地:兵庫県
- 職業:慶應義塾大学
- 趣味:ピアノ、バレエ、ダンス
- Twitter:@96_1114mai
- 悩み:恋愛、進路
(カメラマン:伊藤広将)
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