薩摩のシンデレラガール 『天璋院篤姫』

新装版 天璋院篤姫

  • 著者:宮尾 登美子
  • 出版社:講談社
  • 発売日:2007/3/15

 

江戸のために命を懸けて戦った女性。

「篤姫」

彼女は、薩摩藩島津家の一門に生まれ、本家の養女となり、将軍家に嫁ぎ、江戸幕府第13代将軍徳川家定御台所となった人物。

新政府軍に対し、江戸城無血開城をし、江戸を守った。
彼女がいなければ、江戸はおろか、現在の日本もなかっただろう。

将軍家を騙せ!

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13代将軍徳川家定は、二回も奥さんを病死で他界している。
家定「体の弱い公家の娘はもう嫌だ。強い女性がいい」
母親が薩摩藩出身ということもあり、島津家に徳川家の嫁候補として声がかかった。

島津家は大変喜んだ。将軍家と縁戚になれる千載一遇のチャンスだ。
ところが、当主・斉彬には、丁度いい年齢の娘がいなかった。

そこで、白羽の矢が立ったのが篤姫だった。
分家の篤姫を自分の娘として嫁に出すことにした。

こうして、篤姫は薩摩藩・島津斉彬の養女になる。

篤姫「斉彬様。私は貴方様の実の娘ではありません。もし、幕府に実の子ではないとバレてしまったら、私は側室にされてしまいます。」

斉彬「案ずるな篤姫よ。「実の娘」だと報告書を作って、幕府に送る。」

篤姫「将軍家を騙すのですか!?」

斉彬「うむ。側室だと、幕府に対する影響力が弱くなってしまうからな。
日本を一つにまとめるのが私の夢。どうしても成し遂げたいのだ。
篤姫よ、一緒に叶えてもらうぞ」

篤姫「わかりました。お任せて下さい。殿方の落とし方は書物にて勉強しました。必ずや、あの男を落としてみせましょう」

斉彬「そこは心配していない。お前は、何事にもぶれない一本筋の通った芯がある。人と接するのが大変うまいしな。期待しているぞ」

二人とも頭がいいんだか悪いんだか。絶対、成功するもんだと思って、嬉々として踊っていた。
かくして、島津家は「篤姫は実の子どもだ」と幕府を騙す大博打に出る。

書物だけの知識で、上手くいくわけがなかった。
焦る篤姫。だが、義父との夢を叶えればならない。
篤姫は必死に演技をし、欺むこうとする。

そして、父・斉彬の根回しが功を奏する。
篤姫の拙いが必死な演技に、将軍・家定の心は射止められてしまった。

篤姫が分家の娘だとわかったのは、晩年期のことであった。
見事、この二人は将軍家を騙し続けたのだった。

こうして、篤姫は第13代将軍徳川家定の妻となったのである。

一通に託された、100万の命

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「江戸無血開城」
勝海舟の尽力で戦争にならずに済んだ。と、教科書には載っているだろう。
実は、その背後で篤姫が無血開城に大きく尽力していた。

ペリー来航や安政の大獄があり、徳川幕府の力自体がどんどん弱くなっていく。

次第に倒幕の流れに傾いていく。
新政府軍が江戸総攻撃を計画する。
篤姫はもちろん、幕府も対処できなかった。

この時、将軍は朝敵とされ、男の政治が機能しなくなっていたのだ。

篤姫「この江戸が戦場になれば、100万人の命が危機脅かされる。それは避けねばならない。私がやらねばならぬ。義父との夢を今こそ叶えなくてどうするか!」

篤姫は「平和な日本を築く」ということが、父親から託された夢だった。
それを彼女はずっと心に秘めていた。
だから、彼女は江戸無血開城に動き出す。
人々の血を流さず、平和を取り戻すために。

新政府軍の江戸総攻撃はもう間近。

新政府軍の先頭に立っていたのは、西郷隆盛だった。
皮肉にも篤姫と同じ薩摩出身である西郷。
だが、結果的にこの皮肉が平和へと導いた。

新政府軍のほとんどが、西郷率いる薩摩藩出身であった。
できれば、薩摩の姫である篤姫を戦争に巻き込みたくはなかった。

それに気付いていた篤姫。
篤姫は西郷隆盛に手紙を書く。薩摩のお姫様から手紙を頂くほど光栄なことはない。
さらには、手紙の中身が西郷の心を打つようなものだった。
西郷はこの手紙を読んで涙を流した。

薩摩藩のお姫様が正室に入っていた事が、総攻撃をかけてきた薩摩藩の兵には非常に効果的に働いた。そうでなかったら止まらなかったかもしれなかった。

篤姫は、たった一通の手紙で100万人の命を救ったのだった。

夫も父もいない。一人になっても最後まで奔走して、平和のために戦って、徳川のために戦って、現在の東京までつながる江戸の町を守った。

もし、斉彬と篤姫が夢を誓い合っていなかったら、江戸の町は大きく荒れて被害が出ていたかもしれない。
そうなると明治国家の建設も大きく遅れていた。現在の東京の発展もなかったかもしれん。

新装版 天璋院篤姫

  • 著者:宮尾 登美子
  • 出版社:講談社
  • 発売日:2007/3/15

モデルプロフィール

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(カメラマン:伊藤広将)

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WRITERこの記事を書いた人

タバオ

大学受験に失敗し、1年浪人するも不合格。コンビニ、土方、ヒーローショウ、環境調査隊、家電量販店のアルバイトを経験するが、やがてはニートにまで落ちる。だが、失うものがないからこそ、開き直れる! 高卒だっていいじゃない。ニートだったからって何なのさ! よく読むのは、歴史小説と漫画。好きな歴史小説『播磨灘物語』、漫画『NHKにようこそ!』。