お市御寮人
- 著者:舟橋 聖一
- 出版社:祥伝社
- 発売日:1991/12
「戦国一の美女」とまで語りつがれている、お市の方。
兄・織田信長の命により、浅井長政の元へと嫁いだ。金ヶ崎の戦いで夫・長政が死去。本能寺の変により信長が亡き後、柴田勝家と再婚する。しかし、勝家と秀吉の対立が激化し、賤ヶ岳の戦いで秀吉に敗れ、勝家とともに自害をする。
お市は、美貌もさながら聡明でもあった。
兄・信長も「市が男だったなら、良き武将となったであろう」と評価してた程に。
だが、実は彼女の人生については、謎が多い。正確に残された史料が少なかったからだ。
謎多き美女の真相に迫りたい。
愛したのはイケメンか、それとも魔王か。

お市の兄・信長は関東統一の足がかりのため、織田家と浅井家が同盟を結びたい。
それに利用されたのがお市であった。
政略結婚を強いられるが、断るわけのはいかない。当時の女性は、それが当たり前であった。尚且つ、お市は兄・信長を慕っていた。
信長の策略で、浅井長政と政略結婚をするが、案外順風満帆な日々が続いた。
長政は義理堅さと優しさを持った人物だった。さらに、180cmほどの長身でイケメン。
長政とはとても仲の良い夫婦だった。
長政はお市を溺愛していた。軍議にもお市を参加させてはイチャイチャしていた。四六時中一緒にいることが多く、兵や侍女たちに引かれていたそうだ。
時は戦国。順風満帆な日々も長くは続かなかった。
織田家と浅井家は対立し、仲が悪くなる。
織田家が朝倉家侵攻をする。両家は浅井家に援軍の要請をするが、長政は悩む。
昔馴染みの朝倉家か。愛する妻の織田家か。
お市は見透かしたかのように言った。
「あなた様のお好きなようにしてください。大丈夫です。兄はあれでも寛容です。例え、敵対しようにも許してくれるでしょう。」
長政からしたら、お市は葛藤したような素振りはなかったように見えた。そこには、兄弟にしか知り得ないものがあったのだろう。
長政は決心し、盟友朝倉家を選んだ。そして、織田信長と衝突する。
これが後の「姉川の戦い」だ。
このとき、お市の方が浅井の裏切りを察し、兄信長にいち早く知らせた、という逸話は有名である。お市は、手紙では怪しまれるので、小豆を袋に入れて、織田の陣営に、陣中見舞いと称して送った。その袋の上下は縄でくくられており、受け取った信長は、瞬時にして「袋の中のネズミ」の意を悟り、ゆえに危地を脱出できたのだ。
姉川の戦いの後、浅井長政が織田信長に敗れて自刃した際には、お市は織田家に返されて兄・信長の庇護をうけた。
お市の長政への愛は本物だっただろう。だが、信長への愛も本物だった。結局、お市は裏切り織田家を選んだ。その真意は謎に包まれている。
ホトトギスよ。織田家に天下を。

清州会議を経て、豊臣秀吉が織田家の実力者となったため、お市は織田家筆頭家老だった柴田勝家と再婚した。
織田家を秀吉が牛耳るのが許せなかった。
お市は秀吉が心底嫌いであったからだ。
前夫の長政が失ったとき、信長の命でお市の息子も殺された。そのとき、秀吉の手によって殺害をされた。信長を恨むのではなく、息子を実際に殺害した秀吉を恨んだ。
そして何より、信長の意志を受け継いでいるのは夫・勝家だと思っていた。
だが、勝家、お市は秀吉と徹底抗戦するも賤ヶ岳の戦いで秀吉に敗れる。
そして、北ノ庄城で勝家と共に自害をする。
このときに辞世の句を詠み合った。
お市「さらぬだに 打ちぬる程も 夏の夜に 別れを誘う ほととぎすかな」
こう詠んだお市に対して、勝家は、
勝家「夏の夜の 夢路はかなき 跡の名を 雲井にあげよ ほととぎす」
と返した。
ホトトギスは別名「死出の田長」と言われていて、あの世から迎えに来るという伝説があった。
辞世の句の意味としては、
お市「ただでさえ、そろそろ眠る頃合いなのに、天が迎えにきたようです。ホトトギスがこの世に別れを誘っているのでしょう」
勝家「夢の途中だがいい人生だった。ホトトギスよ、俺たちが生きた証を轟かせてくれ」
死を悟っていたお市は、娘である淀殿、お初、お江の三人に織田家の天下を託して逝った。
お市は謎は多いが、確かなことがある。
兄・織田信長を慕い、信長の天下取りの意志を、誰よりも強く受け継いだ女性。
睦まじい仲であった夫が2回も天下人に対抗して滅亡し、最後は自害した事とその美貌から「薄幸の美女」とも呼ばれていたそうだ。
お市御寮人
- 著者:舟橋 聖一
- 出版社:祥伝社
- 発売日:1991/12
モデルプロフィール

- 名前:杉本雛乃
- 生年月日:1997/3/16
- 出身地:神戸
- 職業:東京大学
- 受賞歴:ミスキャンパスコレクション東京初代ファイナリスト
- 趣味:ミュージカル鑑賞
- 最近の悩み:朝寒い
- Twitter:@hinyanmail
(カメラマン:伊藤広将)
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