姉御肌な鬼嫁 『北条政子』

北条政子

  • 著者:永井 路子
  • 出版社:文藝春秋
  • 発売日:1990/3

 

「御台所」、「尼将軍」で知られている北条政子。彼女は鎌倉幕府を開いた源頼朝の妻である。

北条政子を、一言でいえば「鬼嫁」がしっくりくるだろう。

当時は、女性に権力はなく、夫を支えるのが当たり前。夫を尻に敷くなど言語道断であった。
NOと言えた北条政子は、周りから白い目で見られていたが、頼朝のために献身的に支えた。

北条政子がいなければ、今の女性の威厳はなかったかもしれない。
歴史を変えた、鬼嫁の生き様とはいかに。

頼朝の君、今参ります!

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北条政子は、伊豆(静岡県)の豪族・北条時政の長女として生まれる。
父・時政は、平治の乱で敗れ、同地に流刑人としてやってきた源頼朝の監視役を務めていた。

北条家もそうだが、関東の武士は、荒くれ者が席巻しており、力が法であった。

頼朝は都出身であったため、関東武士にはない育ちの良さ、雅やかさがあり、政子はそこに惹かれていった。

時政が不在の間に、政子は源頼朝と恋仲になった。しかし、その頃は、平家全盛の時代。

源氏であった頼朝との交際に、時政は猛反対した。
しかも、実は、頼朝は政子以外にも、恋人がいた。都では愛人が複数いるのは当たり前であり、頼朝は平然としていた。

政子は、まさか頼朝がそんな男だったと思わず、大激怒するも泣き崩れていった。政子も女の子であったのだ。初めての失恋にも涙する。
だが時政は、見計らってか、政子を平氏に縁がある武将と結婚させようとする。

自暴自棄になっていた政子は、政略結婚を受け入れようとしたが、兄・宗時に止められる。
「政子、本当にそれでいいのかい?」と、兄からの問に政子は気付かされた。
自分の気持ちがはっきりとわかったとき、体は勝手に動いていた。

豪雨が降る中、屋敷を抜け出し、山を越えて頼朝の元へ走った。激怒する父を兄・宗時がなだめ、途中まで弟・義時が連れて行き、兄弟に支えられながら走った。足を挫こうが血が出ようが、一度決めたことを曲げる政子ではなかった。

ついに、頼朝の前に立った政子は、「愛人と別れてもらいます」と鬼の形相で言ったそうだ。

日本三大悪女の一人、冷血な女傑として有名な北条政子。だが、北条政子もまた女性である。本書からは女らしさが強調されており、意外な一面であった。

最後の詞

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源頼朝と北条政子は結婚し、政子は相談相手として頼朝を支え、鎌倉幕府をつくるのに貢献した。

天皇の第三皇子である以仁王が全国の源氏に対し、平氏打倒の命令を出し、頼朝をはじめとする源氏が各地で挙兵する。
源氏は平氏を打倒し、源氏に縁のある鎌倉に幕府を開いた。

頼朝が死ぬと出家し、政子自身が「尼将軍」として、幕府の舵を取るようにになる。

しかし、政子の長男の頼家は二代将軍となるが殺され、次男の三代将軍・実朝も殺された。

頼朝の血筋が絶えたことを知った天皇・後鳥羽上皇は、幕府を滅ぼせると見て、幕府に戦いを挑む。

政子は、朝廷の敵にされて慌てふためく御家人たちを集めると、「最後の詞」と銘打って演説する。

「頼朝の恩義は、あなた方にとって海よりも深く、山よりも重いことを思い返してほしい。
そそのかすものによって今回討伐の命が出たが、これを倒して将軍(頼朝)の意を果たしなさい。
しかしながら、もし上皇方につきたいものがいたら、名乗り出るといい、好きなように上皇の元に行くといい」

これを聞いた者たちは感動し、涙を流し、再び忠誠を誓い、朝廷軍と戦う決意をする。

幕府軍の結束は固く、承久の乱は幕府側の圧勝で終わり、鎌倉幕府の力は、更に強固なものとなった。

たった一回の演説で戦況をひっくり返すのが尼将軍だ。この演説がなければ、江戸時代はおろか現代すらなかったかもしれない。

レディースリーダー北条政子!

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北条政子には、有名な話がある。

幕府を開いて間もない頃、頼朝が浮気をしてしまう。当時、政子のいる関東は一夫一妻が普通であり、価値観の違いから盛大な夫婦喧嘩が勃発する。政子は昔から、レディースのリーダー的姉御肌で物怖じしなかった。

政子が「やっちまいな!」と家来たちと一緒に、浮気相手の家をぶっ壊してしまった。
頼朝は「ごめんなさい!これからは政子一筋です!」と、観念したそうだ。

この夫婦喧嘩が関東武士に受け入れられた。都育ちの頼朝は、関東武士からすると「どこか自分たちと違う」と思っていた。東国の主が怪しかったのだ。

そんなとき、政子が頼朝をギュッと握っていたおかげで、関東武士は喧嘩しても離れない二人を見て安心し結束していった。

歴史というのは、いつも男性が表に出て、歴史を作り続けてきたと言われているが、その裏には必ず女性の意見がある。
愛する人が作った鎌倉幕府を、女性ながらも戦い守り抜いた。女性の威厳を獲得し歴史を変えた。

三大悪女として名高い北条政子だが、少しは払拭できたら幸いである。

北条政子

  • 著者:永井 路子
  • 出版社:文藝春秋
  • 発売日:1990/3

モデルプロフィール

mizutani_profile
  • 名前:水谷花那子
  • 生年月日:1993/9/29
  • 出身地:大阪府
  • 職業:慶應義塾大学
  • 受賞歴:週刊ゴルフダイジェストビューティークイーン2016
  • 趣味:クラシックバレエ・スペイン語・ゴルフ
  • 最近の悩み:学生生活が終わること
  • Instagram:@kanakomizutani
  • LINEスタンプ:https://store.line.me/stickershop/product/1324362

(カメラマン:伊藤広将)

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WRITERこの記事を書いた人

タバオ

大学受験に失敗し、1年浪人するも不合格。コンビニ、土方、ヒーローショウ、環境調査隊、家電量販店のアルバイトを経験するが、やがてはニートにまで落ちる。だが、失うものがないからこそ、開き直れる! 高卒だっていいじゃない。ニートだったからって何なのさ! よく読むのは、歴史小説と漫画。好きな歴史小説『播磨灘物語』、漫画『NHKにようこそ!』。