植物?動物?いや「政治家図鑑」だ『私を通り過ぎた政治家たち』 

私を通りすぎた政治家たち

  • 著者:佐々淳行
  • 出版社:文藝春秋
  • 発売日:2014/8/28

政治家には「ポリティシャン」と「ステーツマン」の二つに分けることができる。
ポリティシャン=「政治屋」
権力に付随する利益や享楽を追い求めてしまう人。「権力欲の持ち主」

ステーツマン=「政治家」
権力に付随する責任を自覚する人。「権力意志の持ち主」

著者である、佐々淳行は、警察、防衛庁、内閣と、長く「官」や「公」の仕事を務めた。それゆえ、政治家と付き合う機会も多く、様々な政治家の裏の顔を見てきた。

本書は、彼が実際体験した政界の裏話が盛りだくさんに詰め込まれている。言わば、「政治家図鑑」だ。史実の裏側をピックアップして紹介していこう

国益を損なうポリティシャンたち

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良い政治家もいれば悪い政治家もいる。
本書では、実はポリティシャンだったと驚かされる人物もいる。

外交官出身で政策通然とした物言いはいかのもスマート、政治改革の旗手、清廉潔白なニューリーダーで「二十一世紀の総理候補」と期待されていた男がいた。

加藤紘一である。

佐々が特に困ったのが、加藤はあらゆる派閥の会合、夜の宴会に実にこまめに顔を出していた。一晩に七つも八つも掛け持ちするのだ。問題は、その際に大臣公用車を使うことだ。大臣公用車となると、運転手、秘書官、副官、SPとみんな付き合わされることになる。夜遅くまでの宴会行脚のために、運転手やSPは帰宅できなくて、一週間も車庫に泊まらされていた。

そのうち、疲れ果てた運転手が防衛庁正門で衝突事故を起こしそうになるわ、側近一同が揃って転属願いを申し出て来るわで、加藤への忠告、諫言が佐々のところへ回ってくる。

佐々は真正面からこう諫言した。
「私用で公用車を使わないでください。SPや秘書官は週に三、四回も車庫に泊まっている有様です。彼らにも家族がいるんだから、思いやりを持っていただきたい」

それを聞いた加藤は、血相を変えて怒鳴りだした。
「あなたはSPを使って私の私的な行動を探っているのですか!それともSPが言いつけたんですか!?」

佐々が諌めると
「彼らはそれでも給料をもらっているのでしょう?」と大声で言った。そして、SPが言いつけたとして、側近一同を解雇してしまったのだ。

権力に付随する利益を貪っていた。まさに、ポリティシャンだったのだ。

NOと言える政治家

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私利私欲に目をくらませるポリティシャンもいれば、れっきとしたステーツマンもいる。何かとお騒がせな石原慎太郎だ。

佐々と石原には交流がある。佐々の実体験により、ステーツマンとしての石原が窺える。

まことに優れた先見性を持っている。
都知事選のとき、石原は「横田基地の返還交渉を行う」公約があった。佐々はそれに反対したが、選挙で圧勝する。

横田基地は広大に空域を支配していて、羽田空港に大きな障害を与えていた。横田基地は輸送航空団であり、広い面積はいらなかった。

アメリカに、基地を縮小して土地を返還、空域を日本の管制化に移せと主張した。
佐々が裏から手を回し、アメリカ副大統領と懇談させ仲をとりもち、会談をセッティングした。

本来なら、外務省、運輸省、防衛庁がやらなくてはならない。アメリカにNOと言えないのが日本政府であり、アメリカに対し石原以外に大胆な提案をする者はいなかった。
石原だけが、首都の空の将来構想を描き、周到に準備し、理をもって交渉した。

この交渉により、2008年に横田基地の空域を20%返還した。20%といえ、このおかげで、第三、第四滑走路の建設が可能になった。今、羽田空港から国際定期便が発着しているのも、この交渉の賜物である。

“私利私欲”がないステーツマン

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今、佐々が見て、ステーツマンであると考えている政治家は、現内閣総理大臣の安倍晋三だ。
彼には、“私利私欲”がない。と、佐々は豪語する。

日本国憲法の改正手続に関する法律や海洋基本法の制定。教育基本法の改正、「防衛庁」から「防衛省」への昇格など大きな仕事を矢継ぎ早に実現したものの、就任一年目に辞任したことは多くの方の記憶にあるだろう。

だが、再び総理大臣に返り咲く。ここまで位人臣を極めると、“私利私欲”はなくなるものだ。「この国の舵を取るには、何をするかが最善か」というステーツマンとしての意識や義務感が高まったと、佐々は言質を取った。

第二次安倍政権は、「アベノミクス」と呼ばれる経済政策を実行し、円高に歯止めをかけて景気回復に力を注いだ。実際、円は下がって株価は上昇した。
そして、日本の政治家たちが半世紀以上も「先送り」してきた国家安全保障の仕組みを、急いで整えた。

歴史上、重大な政治決断は、独断専行か、それに近い「少数決」で決められてきた。ルビコン川越えを決断したシーザー、桶狭間決戦を決行した織田信長、終戦の聖断を下した昭和天皇は、「満場一致」はおろか少数決ですらない「独断専行」だった。

同じく、安倍総理の国家安全保障会議の設置は、まさに「満場一致」国家に「少数決」を導入した勇気ある決断だったのある。

自分が認識している政治家像と、実際に接してきた人が見る人物像とでは、どれだけギャップがあるのか。この「政治家図鑑」には、まだ知りえない裏話が眠っている。しかも、著者の言うところのステーツマンの裏話だ。子供の頃は、動物図鑑、植物図鑑を見てきた。今、大人となって「政治家図鑑」を見るのも、また一興なのではないか。

私を通りすぎた政治家たち

  • 著者:佐々淳行
  • 出版社:文藝春秋
  • 発売日:2014/8/28

モデルプロフィール

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  • 名前:さや
  • 生年月日:1994/6/7
  • 出身地:佐賀県
  • 職業:学生
  • 趣味・一言:演歌!・最近はマンガです(笑)
  • 最近の悩み:髪がはねるのでその扱い
  • Twitter:@kichohana_saya

(カメラマン:伊藤広将)

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WRITERこの記事を書いた人

タバオ

大学受験に失敗し、1年浪人するも不合格。コンビニ、土方、ヒーローショウ、環境調査隊、家電量販店のアルバイトを経験するが、やがてはニートにまで落ちる。だが、失うものがないからこそ、開き直れる! 高卒だっていいじゃない。ニートだったからって何なのさ! よく読むのは、歴史小説と漫画。好きな歴史小説『播磨灘物語』、漫画『NHKにようこそ!』。