青春と孤独の間で生きた。ある女子大生の日記『二十歳の原点』

 

1969年6月24日。京都でとある女子大生が鉄道自殺した。

彼女の名前は、高野悦子。まだ二十歳だった。

 

今回、紹介するのは「二十歳の原点」。彼女が二十歳を迎えた日から自ら命を絶つ二日前まで書き続けた日記だ。彼女の死後に遺族によって出版され、当時ベストセラーになった。

 

学生運動全盛期に彼女は大学生活を過ごした。大学内で行われる機動隊と学生たちの乱闘。資本主義に抗い、社会を良くしようとする学生たちの行動は真っ当で純粋なものだと彼女は感じた。彼女も参加し、さらには、純粋な愛や自己を追い求めた。自分とは、愛とは、生とは、死とは…。ひたすら考え、吐き出すようにノートに綴った。

これは、一人の少女の青春と1960年代のニオイが詰まった一冊である。

 

独りであること、未熟であること、これが私の二十歳の原点である。

「二十歳の原点」。この本は、時代を超えて「若者たちの孤独感」を共有できる一冊でもある。

 

20歳の原点

  • 著者:高野悦子
  • 出版社:新潮社
  • 発売日:2003/05

大人にはなったけど、まだ子供。二十歳とはそんな年齢だ。まだセンシティブな時期だと思う。モラトリアムが虚無を呼ぶのか。自己をひたすら内面化しては、未熟さや矛盾を感じて「死にたい」と軽い気持ちで思ったりする。

 

彼女は孤独だった。繊細で人一倍強い感性でひたすら自我を模索した。まるで、自我と居場所を見つけるかのように、学生運動に参加した。

 

私は要するに「心情派全共闘派のインチキ学生」であるのだ。

 

運動に参加する自分の信念のなさも、正直に見つめた。理想とかけ離れた自分が嫌いだった。自己矛盾に悩んだ。バイト先の男の子に恋をし、失恋もした。この空虚感を埋めるかのように、毎日酒を飲み、煙草を吸った。そして、日記を書いた。

 

三月二十七日

私は臆病者だ。与えられた環境の中で生きていく人間なのである。私は自分に自信をもてない人間なのである。臆病者であることが、いいのかどうかわからない。ただ臆病であることを意識すると自分が卑小でつまらない人間に思えてくるのだ。そういうときはたまらなくなる。

 

二十歳の自死

自分の未熟さや孤独とひたすら向き合った彼女は、京都の山陽本線の二条駅と花園駅間で走る貨物列車に飛び込み、自ら命を絶つ。

 

二月六日

「独りである」ことは、何ときびしいことなのだろうか。自殺でもしようかなと思った。そのまま眠ってしまうのが一番良かったかもしれない。でも、その解決を酒に求めた。

 

四月十八日

私は誰かのために生きているわけではない。私自身のためにである。ホテルのソファに坐りながら自殺しようと思った。(中略)けれども、死ぬってことは結局負けだよなあと思った。

 

今までも、本気で「死にたい」と思ってはいなかったと考えられる。でも、なぜ彼女は列車に飛び込んだのか。

自殺した理由は日記を読んでも知ることができない。ただ分かることは、高野悦子という人間はとてもピュアで孤独だった。最後まで、自分自身の甘えや矛盾を受け入れることが出来なかったのだろう。だから、死を選んだのか。

 

現代の孤独

 

現代はSNSの時代だ。知りたい情報はすぐに得ることが出来るようになり、いつ、どこにいても、誰とでも繋がれるようになった。電車の中で新聞や本を読んで時間を潰す人は少なくなった。ほとんどの人がスマートフォンを見つめている。

 そんな現代社会でも、ヒトは孤独を感じる。「死にたい」というツイートは絶えないし、自殺者も多い。クリスマスの日にカップルによって乱発される幸せ投稿は、独り身をより孤独にさせるし、仲がいいと思っていた友人グループの飲み会に、自分だけが誘われなかった事実を知るのは大体、SNSの投稿による。

60年代に高野悦子が感じた孤独と現代人は感じる孤独は、一見、違うようであまり変わらないような気がする。彼女は日記に孤独を吐き出した。今はツイッターに孤独感を呟く。吐露する場所がどこであろうと、自分が孤独と感じたら、それは孤独だ。

 

「二十歳の原点」。この本は、時代を超えて「若者たちの孤独感」を共有できる一冊でもある。

 

20歳の原点

  • 著者:高野悦子
  • 出版社:新潮社
  • 発売日:2003/05

モデルプロフィール

  • 名前:KIHO
  • 生年月日:1991/12/13
  • 出身地:兵庫県神戸市
  • 職業:フリーランスモデル
  • 趣味/一言:フィルムカメラで写真を撮ることが好きです。本もよく読みます。
  • 最近の悩み:夏バテ。
  • Instagram:@mx_kii
  • Twitter:@mx_kii
  • ブログアドレス:http://kiho96.com
(カメラマン:伊藤広将)

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