あの食材が恋しくなる 『今日もごちそうさまでした』

今日もごちそうさまでした

  • 著者:角田 光代
  • 出版社:新潮社
  • 発売日:2014/7/28

 

私は出会った人に「好きな食べ物」を聞くことが好きだ。
生まれた時から何かを食べ続けている私たちにとって、好きな食べ物ほどその人らしさを感じるものはないなぁと思っているからである。
その答えに、やっぱりねと思うこともあれば、えー!意外!と思うこともある。
角田さんの好きな食べ物はえー!意外!と感じた方だった。
とにかくお肉が大好きで、30才までは野菜やきのこ類が食べられない偏食家だったらしい。
さらに鶏肉はさっぱりとしすぎているから、魚の部類に入ると語る角田さんはとてもチャーミングに感じた。

とうもろこしの「甘さ」

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本書では、春夏秋冬その季節に採れる野菜や、その季節に味わえる旬の味覚がページを捲るごとにいい香りを漂わせている。
あれ?角田さんは野菜が嫌いなのでは?そうなんです。偏食だった角田さんが食わず嫌いをなくし始めたのは30歳を過ぎてから。今ではすっかり、野菜嫌いを克服したそう。それどころか旬の食材一つ一つへの拘りや愛情を持つのはもちろん、自分の目と舌で確かめながら本当においしい食材を見つけている。野菜嫌いだったからこそ味わうことが出来たという「『食べれない』から『食べる』に移行する時の、ダイナミックな感動」が食材ひとつひとつに散りばめられている。

例えば、こんな夏野菜。
野菜の持っている「くせと味の独特な濃さ」が苦手だったという角田さん。私も野菜が嫌いな子供だったので、この表現は本当によく分かる。甘いのか苦いのかはっきりして!!という、あの感覚。
そんな角田さんが昔と比べて「これはちょっと変え過ぎだろう!」と大声で言いたいという野菜とは・・・そう、とうもろこしである。わざわざ食べることのないとうもろこしだが、唐突に食べたくなることがある食材だ。角田さんは4、5年前に久しぶりにとうもろこしを食べ、その甘さに愕然としたと語る。「ねぇキミ。キミ、昔はこんなじゃなかったよね」と。
そういえば最近の日本人は甘い=おいしいという意味になっていることに角田さんは気がつく。テレビのレポートでは何を食べても甘いと表現する。歴史を遡れば、甘いものが日本人にとって贅沢品の時代があった。それ故の甘さ信仰なのか。
角田さんは本当のとうもろこしに出会うべく、自然食品のお店へと出向く。そこで食べたとうもろこしは、やっぱり甘くはなくて安心した。
嫌いな食べ物であっても、「昔の味」はちゃんと覚えているものだ。

食べなかったことを後悔した食材は

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数々の食わず嫌いの中で30歳を過ぎるまで食べなかったことを後悔した食べ物があるという。それが「キノコ類」だ。特に椎茸は「今まですまなかったと心の底から反省するくらい、おいしい」と初めて口にした時のことを語っている。和洋中のどんな料理にしても個性を失わない椎茸。

バターで炒めても、ちょっぴり醤油を垂らしてもバツグンにおいしい。はぁ、いよいよお腹が空いてきたのは私だけではないだろう。

逆に若き日は食べていたのにも関わらず、パタリと食べなくなった食材もある。角田さんにとってそれは、さつまいもだった。子供の頃から二十代半ばまでさつまいもを愛してやまなかった角田さん。特に夜中に食べる「いーしやーきいもー」は禁断の味だったと語る。それなのに気がつけば全然好きではなくなっていた。先日久しぶりに八百屋で見かけたさつまいもはまるで「忘れ去られた昔の恋人」だったと。

角田さんと食べ物のユニークな関係は、頭の中にしまいこんだままだった食べ物辞典を1ページ、1ページゆっくりとめくってくれる。

おいしいものを食べながら、人は怒ることができない

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角田さんは本書のあとがきで”おいしいものを食べながら、人は怒ることができないと聞いたことがある。おいしいもののことを考えながら、怒ることもまた、できないかもしれない”と語っている。この一文から角田さんと食材との関係が伺える。
角田さんと食べ物あるいは食材との関係を読んでいると、まるで人と話しているかのような温もりと想い出を感じる。食べ物と人との間にある愛情や想い出を垣間見たくなる一冊です。

今日のポイント

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  1. 好きな食べ物との想い出を思い出してみる。
  2. 1つの食材にとことん、拘ってみる。
  3. 季節折々の食材を食べてみる。

今日もごちそうさまでした

  • 著者:角田 光代
  • 出版社:新潮社
  • 発売日:2014/7/28

モデルプロフィール

azuma_profile
  • 名前:東ゆき
  • 生年月日:1994/1/21
  • 出身地:大阪府
  • 職業:明治学院大学
  • 趣味・一言:旅行!!♡
  • 最近の悩み:前髪(笑)
  • Instagram:@ykmr121

(カメラマン・Rimi Sakamoto/個人サイト・http://www.rimisakamoto.net/

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WRITERこの記事を書いた人

そらい なおみ

言葉、コラージュ、写真等の作家活動を通じて大切な何かを伝えられたらと思っています。 2015年東京銀座にて個展開催、2016年ロンドンでの企画展参加。ライターとしても精力的に活動中。 幼い頃から「本」を通じて大切な感情を学んできました。その分「本」を通じて「本」に恩返しが出来るといいなぁと思っています。