友人や、同僚、クラスメイト、etc.…。あなたがよく顔を合わせる人たちのことをどれくらい知っているだろうか。もしくは、あなたはどれくらい本当の自分を彼らに見せているだろう。
『パレード』は、吉田修一が山本周五郎賞を受賞した作品で、2010年には藤原竜也主演で映画化もされている。
都内のマンションの一室で共同生活を送る良介、琴美、未来、直輝の男女4人。そこへサトルが加わり、物語は動き始める。そして最後に待ち受けていた展開とは……。
パレード
- 著者:吉田修一(著)
- 出版社:幻冬舎
- 発売日:2004/4/1
都内のマンションで共同生活を送る若者たち
21歳の良介は経済学部に通う大学3年生。いわゆるお気楽大学生で、年上に可愛がられる憎めないキャラ。23歳の美女、琴美は、若手俳優と熱愛中。週に一度かかってくるかもしれない電話を待つために無職で家でダラダラしている。未来は24歳のイラストレーター兼雑貨屋店長で、酒に溺れがち。ジョギングが趣味の直輝は映画配給会社に勤める28歳だ。最近ルームシェアに加わったサトルは18歳の男娼で、謎が多い。
そんな4人プラス1人の共同生活は、ゆるく、居心地の良さを感じさせるもので、優しく怠惰でもあった。
演じることによって成り立つ人間模様

しかし、完璧なバランスを保っているかのように思える共同生活も、実はお互いに見せたいところだけを見せて都合の悪いことは隠したり、見て見ぬ振りをしているから成り立っていることがだんだんと見えてくる。
“一緒に住んでいるとはいえ、琴ちゃんや未来、直輝さんの前でも、そんなおセンチで深刻な自分は見せたくない。それに、この部屋での、この共同生活は、そういったものを持ち込まないからこそ、成立しているんじゃないか、とも思う。話したいことではなく、話してもいいことだけを話しているから、こうやってうまく暮らせているのだと。”
たぶん私たちが暮らしているこの部屋も、そんな場所なのだと思う。嫌なら出ていくしかない。いるなら笑っているしかない。もちろん人間なのだから、誰だって善意も悪意も持ち合わせている。たぶん未来にしろ、直輝くんや良介くんにしろ、ここでは善人の演技をしているのだと思う。まさにこれを「上辺だけの付き合い」と呼ぶのかもしれない。でも、私にはこれくらいが丁度いい。
実際、演技をしたり、お互いに都合の悪いことは見て見ぬふりをすることは人間関係を円滑に保つためには必要なことでもある。共同生活をしながらも、親友であるわけでも家族であるわけでもない人たちとの関係とあれば、琴美が言うようにそれくらいが丁度いいのだとも思う。自分の過去や内面に秘めている思いとかそういったもの全てを、周りにいる人全員に打ち明けたりしていたらそれこそ大変だ。
だから、むしろ彼らの気持ちを理解できるといった心持ちですいすい読み進めることができる。
垣間見える闇と衝撃のラストに、人間関係の怖さを垣間見る
しかし、章ごとに異なる登場人物たちによって語られるその日常の中に、ところどころ暗い影のようなものが混ざっているのを感じることに気づく。相当オープンな人でない限り、そういった影は表には出さないものだ。だから、自分も、当たり前のように見たい部分だけを見ている人間関係に身を置いていることを忘れていた。
そして衝撃のラストに、自分の身近にいる人たちの顔を思い浮かべながら、居心地がよくて気軽な人間関係が孕む恐怖のようなもの感じた。
「隣で笑っている人のこと、私はどれだけ知っているのだろう」と、普段は通り過ぎてしまうような疑問を投げかけてくれる一冊だ。
パレード
- 著者:吉田修一(著)
- 出版社:幻冬舎
- 発売日:2004/4/1
モデルプロフィール

- 名前:ミライ
- 生年月日:1994/12/22
- 出身地:沖縄県
- 職業:バイト
- 一言:自分探しにはまってます!
- 最近の悩み:お酒が弱い
- Twitter:@mirai_menu/Instagram:_mi_ra_1222
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