救済か、無差別殺戮か。『ネズミに支配された島』

ねずみに支配された島

  • 著者:ウィリアム ソウルゼンバーグ 
  • 出版社:文藝春秋
  • 発売日:2014/6/13

 

今週のテーマ:生物を学んで「生きる」意味を知る。
生きることに苦しくなった時、ふと立ち止まって手に取ってほしい本特集。

今週1週間は、生物の「環境・時間・多様性・食・命・進化・歴史」という7つの観点から、生物、生きることについてを学んでいきたいと思います。

転校生は敵か、味方か。

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小学生の頃、転校生はヒーローだった。

毎日決まった時間に学校へ行き、決まった時間に帰る。そんな繰り返しの日々の中で、日常をカラフルにしてくれる、刺激ある非日常を与えてくれる存在が転校生だった。

どこからか漏れた情報で、女子なのか男子なのかを知り、どんな人がやってくるのかココロを躍らせる。

もし転校生が自分たちとは違う方言を話す人だったならば、瞬く間に渦中の人となる。
方言をいじられ、真似され、祭り上げられる。束の間の人気者の出来上がりだ。

そんな転校生効果も、1週間もすれば収束していく。そしてまた普段と変わらぬ日常へと戻っていく。

しかし、これは小学生の話であって高校生ともなると話が変わってくる。

一般的に高校生は異物を嫌う。特に自分のテリトリーに入ってくる人を排除しようとする。

クラスにはヒエラルキーがあり、派閥がある。ここからは俺のテリトリーだと言わんばかりに不可視のテリトリーが教室にひかれる。

途中からやってきた転校生は、一歩間違えば排除の対象になりかねないのである。

危険を顧みずクラスの秩序を壊すか(失敗すれば仲間はずれが待っている)、空気のような存在でゆっくりなじんでいくのを待つか。それが転校生という突然やってきたものの宿命だ。

ネズミに支配された島

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そんな秩序ある世界に侵入し、無秩序を作ってしまったがゆえに殺戮させられたある動物がいる。

本日紹介する一冊は『ネズミに支配された島』

人間によって本土から持ち込まれた動物のせいで、島の秩序が壊れ、島に侵入した捕食者によって先住者は絶滅の危機に瀕する。そんな動物たちの救出作戦と捕食者の殲滅の命が下される。

捕食者のいない島の生物は、大陸で進化した捕食者が侵入すると瞬く間に絶滅の危機に追い込まれてしまうのだ。

ニュージーランドで自然保護活動の象徴となっている鳥・カカポ。地球の片隅の島で絶滅に向かっている。そんな動物たちを救い、捕食者を殲滅しようとする人たちの物語だ。

オセアニアでは、人間が連れてきたネズミのせいですでに2000種類近くの動物が消えたと書かれている。

救済か、無差別殺戮か

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本書ではそんな捕食者であるネズミを殲滅させるため、ネズミ駆除作戦が実行される。人間たちが連れてきたのに、いざ問題が起こると駆除するというなんとも自分勝手な話だが、考えさせられるのはここからだ。

絶滅に向かっている動物にしてみたら「救済」かもしれないが、ネズミにとってみればただの「殺戮」なのだ。

それでも、ネズミを駆除しなければ、島は絶滅する。ネズミだらけの島になってしまう。保護活動家は、新しい殺鼠剤で、一匹残らずネズミを殲滅しようとする。結末はぜひ本書を読んで知ってほしい。

今週、『ゾウの時間 ネズミの時間』を紹介したが、そこでも多様性について考えるきっかけがあった。今まで我々が使ってきた時間は、絶対唯一のものではなく、人間にあてはまるものであって、ゾウにはゾウの時間が、ネズミにはネズミの時間があることを知った。

ある者にとって転校生がヒーローで、ある者にとっては排除の対象だったように、何が敵で、何が味方なのか。どこまでが救済で、どこからが無差別殺戮なのか。生物の「多様性」について非常に考えさせられる一冊だ。

今日のポイント

  1. 捕食者のいない島の生物は、捕食者が侵入すると瞬く間に絶滅の危機に追い込まれる
  2. 正義だと思っていたものも、考え方によっては悪になりうる
  3. 答えはなかなか出ないかもしれないが、生物の多様性について考える

 

ねずみに支配された島

  • 著者:ウィリアム ソウルゼンバーグ
  • 出版社:文藝春秋
  • 発売日:2014/6/13

モデルプロフィール

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  • 名前:佐藤七海
  • 生年月日:1994/11/30
  • 出身地:新潟県
  • 職業:跡見学園女子大学
  • 受賞歴:跡見学園女子大学Campas Queen Contest 2015 準グランプリ ミス大島椿賞 
  • 趣味:音楽を聴く
  • 最近の悩み:食欲が止まらない
  • Twitter:@15atomimiss2
  • Instagram:gaugau.kg73

(カメラマン:横須賀馨介)

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WRITERこの記事を書いた人

森井 悠太

「本to美女」副編集長。 1990年生まれ。慶應卒。一浪、一留、一休学と余すことなく学生生活を送る。2016年1月から株式会社SENSATIONにジョイン。 芸能事務所のスカウトマンを経験。渋谷でNo.1スカウトマンになれた経験を書き、第10回出版甲子園で準グランプリを受賞。モラトリアム症候群で、某大手IT企業の内定を入社ギリギリで辞退。結果、ニートとなる。その後、銀座で会員制のバーテンダーを経て、「本to美女」に参画。 キャッチコピーはアクティブなヒキコモリ。生粋のHONZ被害者でもある。