『ゾウの時間 ネズミの時間』が教えてくれた、動物が車輪を使わない理由

ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学

  • 著者:本川達雄
  • 出版社:中央公論社
  • 発売日:1992/08

 

生物を学んで「生きる」意味を知る。
生きることに苦しくなった時、ふと立ち止まって手に取ってほしい本特集。

今週1週間は、生物の「環境・時間・多様性・食・命・進化・歴史」という7つの観点から、生物、生きることについてを学んでいきたいと思います。

生きる意味の直接的な答えは書いていないかもしれませんが、「生きる意味ってなんだっけ」とふと立ち止まって考えるきっかけとなるような、少しだけ元気が出るような本を紹介していきます。

ジャネーの法則

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2016年、7月。気付けば今年ももう半分が終わった。

いや、「もう」半分終わったのかという人と、「やっと」半分終わったという人とがいるかもしれない。

心理学者ポール・ジャネが発案した「ジャネーの法則」によると、人間は、「0歳から20歳」までと、「20歳から80歳」くらいまで年月とでは、体感時間と同じだそうだ。

つまり現在20歳の人は体感時間としてすでに人生の半分終わったことになる。
例えば、50歳の人にとって1年の長さは、今まで生きてきた人生の50分の1である。
一方で、5歳の人間にとって1年間は、人生の5分の1に相当する。

50歳の人にとっての10年間は、5歳児にとっての1年間にあたるのだ。だんだん年を取っていくと、生きてきた年数によって1年の長さの比率が小さくなり、どんどん時間が早く感じるのだ。

これが「最近、時の流れが早すぎて……」の正体だ。

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そこで、本日紹介する一冊はこちら。
『ゾウの時間 ネズミの時間』

時間というものは、唯一絶対不変のものかと思いきや、「動物が変われば、時間も変わる」という。

動物のサイズと時間

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本書の著者の様々な研究から、ある時間と体重の関係が浮かび上がった。

それが、「時間は体重の1/4乗に比例する」という関係だ。

体重が増えると時間は長くなる。体重が16倍になると時間が2倍になるという計算だ。動物によって、時間の流れる速度が違ってくるものらしい。大きな動物ほど、何をするにしても時間がかかるということである。

時間というものは人間でも動物でも変わらず同じものだとばかり思っていたから衝撃だった。

ゾウにはゾウの、ネズミにはネズミの、猫には猫の、カブトムシにはカブトムシの時間と、それぞれの「体のサイズに応じて、違う時間の単位がある」ことをサイズの生物学では教えてくれる。

一方で、一生の間に心臓が打つ総数や体重あたりの総エネルギー使用量は、サイズによらず同じらしい。

ネズミは数年しか生きないが、ゾウは100年近く生きる。しかし、心臓の拍動を測ると、ゾウとネズミはまったく同じ長さだけ生きて死ぬことになる。

小さな動物では、体内で起こる全てのテンポが速いので、物理的な寿命は短いが、一生を生き切った感覚は、実はネズミもゾウも変わらないのである。

動物は、なぜ車輪を使わないのか?

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筆者のアタマにふと疑問が浮かぶ。動物はなぜあんなにも便利な車輪を使わないのだろうかと。

一般的に、車や自転車といった車輪を使うものが人間に好まれるのは、エネルギー効率がすごく良いからである。ただし、これは平らな良い道を行く場合に限りで、少しでも段差があると、たちまちパフォーマンスは低下する。

ここで、人間界ではなく、動物たちの住む自然界に目を向けてみよう。
でこぼこでなく、草や生えていなく、雨が降ってもどろんこにならない場所がどこにあるだろうか。

動物のサイズが小さくなればなるほど、地面は起伏の激しいものとなる。つまり車輪は使えたものではないのである。

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この話は、いかに我々が自分たちの世界しか見えていないかを教えてくれる。

生物学によって、ヒトという生き物を相対化する

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筆者はこう述べる。

時間とは、もっとも基本的な概念である。自分の時計は何にでもあてはまると、なにげなく信じ込んで暮らしてきた、そういう常識をくつがえしてくれるのが、サイズの生物学である。

……人間の考え方や行動なども、ヒトがおのれのサイズを知る、これは人間にとって、もっとも基本的な教養であろう。サイズという視点を通して、生物を、そして人間を理解しようとするのが本書のねらいである。

動物はこういう生活に適応するために、こんな体のつくりになっていて、こういう行動をするのかと、その動物の世界観を読み取って、人間に納得のいくように説明するのが動物学者の仕事だという。

生き物のサイズを考えることによって、初めて人間を相対化することができる。人間が中心ではないことや、人間の時間軸で考えるのではなく、様々なモノサシを持つことで、自然の中での立ち位置を理解することができるのだ。

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そうすれば、人間の世界でも見え方が違ってくるかもしれない。考えが真逆で、馬が合わない相手との世界観もだんだんと理解できるようになる気がしてこないだろうか。

ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学

  • 著者:本川達雄
  • 出版社:中央公論社
  • 発売日:1992/08

モデルプロフィール

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  • 名前:大山あずさ
  • 生年月日:1995/5/18
  • 出身地:群馬県
  • 職業:慶應義塾大学
  • 趣味:おいしいごはんを食べる
  • 最近の悩み:よくわからないアザができる

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本to美女選書

WRITERこの記事を書いた人

森井 悠太

「本to美女」副編集長。 1990年生まれ。慶應卒。一浪、一留、一休学と余すことなく学生生活を送る。2016年1月から株式会社SENSATIONにジョイン。 芸能事務所のスカウトマンを経験。渋谷でNo.1スカウトマンになれた経験を書き、第10回出版甲子園で準グランプリを受賞。モラトリアム症候群で、某大手IT企業の内定を入社ギリギリで辞退。結果、ニートとなる。その後、銀座で会員制のバーテンダーを経て、「本to美女」に参画。 キャッチコピーはアクティブなヒキコモリ。生粋のHONZ被害者でもある。