芸術とはビジネスである『芸術起業論』

芸術起業論

  • 著者:村上 隆
  • 出版社:幻冬舎
  • 発売日:2006/06

 

芸術とはビジネスである。世界に通じる芸術とは何か?なぜ日本のアートシーンが世界に通じないのか?日本を飛び出して世界で戦ってきた現代芸術家の村上隆さんだからこそ語れる話が満載の美術書でした。

いや、もはやビジネス書でした!

芸術の顧客はいったい誰なのか?芸術で食べていくにはどうすればいいか?
芸術=マネーと言い切る村上さんの価値観に驚きが隠せません。日本の芸術家は商売意欲が低く、芸術を純粋無垢に信じる姿勢を取りがちと語る村上さん。彼は自由につくりなさいと教える日本の美術界に怒りを覚えています。

自由につくりたければ、ただの趣味人で終わればいい!芸術家にも金が必要であるという事実から目を背けるな、と言っています。

この本は芸術家による美術書ではなく、芸術家によるビジネス本なのです。

芸術とはビジネスだ

日本人アーティストがなぜ、これまで欧米で認められてこなかったのか?
それは、欧米の芸術の世界のルールをふまえていなかったからと。

日本の美術シーンは、自由気ままに作品をつくり、自己満足に浸り過ぎなのです。音楽、映画、小説……何に対しても、日本でウケるミュージシャンも海外では無視されてしまいます。欧米の世界で本気で勝負したい芸術家は、欧米の芸術のルールをしっかりと学ぶべきなのです。

そして、欧米では芸術作品は金になってはじめて評価されます。日本では、自称芸術家が自己陶酔に浸って作品をつくっていますが、欧米ではオークションで高値がついて、はじめて芸術家として認められています。

日本の芸術家は自己陶酔しているのに対し、欧米の芸術家は極めて客観的です。欧米にはしっかりとした美術評論家も多くいて、作品の良し悪しを評価し、芸術家の表現の幅を広げてくれています。

作品の価値は発言で高めるべき

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村上さんは「芸術作品の価値は発言で高めるべき」と語っています。
ピカソの絵だって、どこかのお偉い方が、「この絵は凄い!」と言った瞬間に何億円という価値になるのです。

世界で戦っていくために自分という人間の価値にどうブランドを築き上げていくのか?
このことが、作品自体よりも芸術家として生き残るうえで最も大切なことだったと語っています。
欧米での芸術家の収入源は、社会的に成功した富裕層の人々にあります。

「自分は芸術をわかっている」と思い込んでいる金持ちたちが、作品を買ってはじめて芸術家の収入が生まれるのです。そのことを考えると、作品の価値は、作品自体よりも芸術家の知名度や発言力にかかってくるのです。

いかに「村上隆」という名前にブランディングをつけていったのか……?
村上さんは翻訳者選びに力を注いだと言っています。自分の価値観をきちんとした英語で伝えられる人物を探し、そして、欧米人にむけて自分の作品を売り込んでいく。それが、もっとも重要なことだった。

芸術家は営業をしなければならない。他人に評価されてはじめて芸術家として認められる。ビル・ゲイツのような大成功を収めた大富豪は、最後に人のこころを映した芸術作品に手を出していく。
いくら社会的に成功しても人間が最後に追い求めるのは人のこころだと。

人の業というものを生業にして、芸術作品は生まれ、ビジネスの一部として売買されていく。
この繰り返しを理解していないと何も始まらない。

「自己満足に浸りたければ、勝手にやってろ!」と村上さんは若い芸術家に語っています。

 人のやらないことをやる

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アメリカでの成功の秘訣は至って明白です。人のやらないことをやること。
欧米の人々は、人のやらないことや開拓精神そのものに興奮するものだと。

「世界で唯一の自分を発見し、その核心を歴史と相対化しつつ、発表すること」

これが世界でウケる秘訣だと村上さんは語っています。
世界の芸術には文脈やルールというものが存在します。そのルールをしっかりと学んだうえで、自分にしかできないこと。異性への下心や世の中に対する不満でもなんでも良いのです。女の子に対するスケベな気持ちでもいいのです。

自分の中のドロドロした部分をほじくり出し、世界の美術の歴史と相対化しつつ作品を作り上げること。
自分にしかできないものを発見することが大切なのだ。

世界の美術界で戦っていくためには何が必要か…。
村上さんは優秀な翻訳家たちとの営業力と歴史をしっかりと学ぶ姿勢と語っています。
自分に陶酔して作品を作りたければ、ただの趣味人です。アートの世界にも営業というものが必要なのです。

世界で戦ってきた村上さんでも、30半ばまで、コンビニで売れ残りの弁当をもらう生活をしていました。いつか世の中に自分の作品を認めさせてやるという思いだけで生きてきたと。残念ながら村上さんは日本の美術界では理解されませんでした。しかし、欧米にわたり、今の村上隆ブランドが生まれています。

私は年間350本の映画を見るほどの映画オタクなのですが、基本的に洋画しかみません。
邦画が嫌いなのです。村上さんが言っているように、自由につくる風潮、金儲けのエンターテイメントよりも映像作家個人の主張を尊重する日本の映画業界に嫌気がさしています。

映画は人を楽しませてこその物なのです!映画も金儲けのひとつなのです!
それなのにエンターテイメントとして扱わず、内面をむき出すという自己満足に陥っている邦画が大嫌いです。

やはり、芸術とはビジネスであるべきなのではないでしょうか?

世界で戦う村上隆さんからは学ぶべきことがたくさんあります。

最前線のアートシーンがうかがえる本でした。

今日のポイント

  • 作品自体よりも、作品を売り込む営業力を身につける必要性を理解する
  •  他人の意見をよく聞くべし。作品を評価するのは他人である
  •  オタクでロリコンなら、犯罪と思われるぐらい心の核心部分を作品に込める。そして、しっかりと芸術界のルールと相対化していく

芸術起業論

  • 著者:村上 隆
  • 出版社:幻冬舎
  • 発売日:2006/06

モデルプロフィール

Yamaguchi_profile
  • 名前:未来
  • 出身地:神奈川県
  • 職業:大学院2年生
  • 趣味:クラシックバレエ
  • 最近の悩み:学校が忙しいこともあり、なかなかお休みが取れないこと

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WRITERこの記事を書いた人

kikuchan

6月9日(ロックな日)生まれ。 映像制作会社勤務。TSUTAYAから年賀状が届くほどの映画マニア。年間350本の映画鑑賞。 「映画ばかり見てないで、勉強しなさい」と言われて育つ。 学生時代は映画の新人賞受賞。文学だけでなく、あらゆる本を読むようにしてます。 好きな本:『竜馬がゆく』『スティーブ・ジョブズ』 趣味:座禅