『使える脳の鍛え方』 科学的根拠のある成功する学習とは

使える脳の鍛え方 成功する学習の科学

  • 著者:ピーター・ブラウン, ヘンリー・ローディガー, マーク・マクダニエル
  • 出版社:エヌティティ出版
  • 発売日:2016/4/14

1.科学的根拠に基づく学習の指南書

本書では学習に関する有用な情報がこれでもかと言わんばかりに盛り込まれているが、一文に要約するとしたら私はこのように書くだろう。

「努力こそが自分の限界を押し広げ成長をもたらすのだと信じて、一歩一歩進め」

昔からの慣習や思い込みが支配的である学習という行為に対して、ワシントン大学セントルイス校の心理学教授であるヘンリー・ローディガーとマーク・マクダニエル、そして著述家・小説家のピーターブラウンが科学的根拠に基づきながらも、読み物としても楽しめる工夫を凝らしながら正しい学習法に関して解説されているのが本書である。

間違った学習法を辞め、正しい学習法の元で成功している人たちを例として挙げることで、ともすれば私たちの日常の感覚と乖離しかねない科学的事実を、身近な出来事として理解できるようになっている。また、各章の最後にはまとめが付いており、正しい学習について振り返りやすくなっている。

本書に散りばめられた数多くの役立つ情報の中から、多くの人が行っている間違った学習法がなぜ効果を発揮しないのか、そして科学的根拠に基づく正しい学習法とはいったい何かについて簡単に紹介しよう。

2.多くの人が陥る間違った学習法

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多くの人は学生時代にテストが迫ってくると、教科書を繰り返し読み、重要だと思われるところに必死にアンダーラインを引いたり付箋を貼って勉強した記憶があるのではないか。何度も何度も繰り返すことで次第に記憶が定着し、テストで高得点をとれると期待してこうした学習法を実践していたのではないだろうか。

短期間に集中して何度も同じことを繰り返す学習法は集中学習と呼ばれ、電話をかける時に電話番号を覚える時のように短期記憶においては効果を発揮するが、永続的な学習には

不向きなのである。学習している間は文章に慣れてスラスラと読めるようになることで何かを習得したように感じるが、それは全くの錯覚であり、明日になればそのほとんどを忘れてしまっていることすらありえるのだ。

集中学習が記憶の定着に役立たないことは、忘却曲線と呼ばれる人の記憶がどれだけ長い間保持されるのかを示したものを見れば納得できるだろう。平たく言えば、短期間で覚えたものは短期間でほとんどすべて忘れ去ってしまうということだ。

3.科学が導き出した正しい学習法

試験が終わった開放感を味わった次の日に同じ問題を解かされたとしたら、あなたは前日答えられた問題のうちいくつに答えられるだろうか。昨日の自分に負けることなく、今日新たなことを学ぶためには、一度学習したことをしっかりと定着させる必要がある。そのために役立つのが正しい学習法である「想起練習」だ。

「想起練習」とは読んで字の如く思い出す練習である。新しい記憶や知識を記憶から思い出すことで持続力のある記憶力を形成することに役立つのである。ただ文字を目で追うのではなく、頭を働かせて思い出す訓練をすることで長期的に記憶を保持するだけでなく、より幅広い問題に応用できるようになるのだ。

こうした思い出す練習としてテストを行うことは非常に有用である。先生が学期末に行うテストの前に、教科書を一章読み終えた時に、この章で理解すべき概念は何か、押さえるべき事実は何かを自問することは、もう一度一章読み直すよりも効果を発揮することが数々の実験で明らかになっている。

さらにこの想起練習は時間をあければ開けるほど効果を発揮するのである。つまり思い出すのに努力を要すれば要するほど学習の効果は高まるのである。

従来有効だと考えられてきた集中練習の問題点のうち、記憶が短期間しか保持できないという問題点を乗り越える正しい学習法として想起練習を紹介したが、学習の効果をさらに高める方法として「交互練習」と「多様練習」がある。

集中練習では同じことを何度も繰り返すが、交互練習と多様練習では様々に異なる課題に取り組むのだ。そうすることで問題を識別する能力を身につけることができ、知識や技術の応用の幅が格段に広がるのだ。

ただし、交互練習や多様練習は集中練習よりも成果が出るまで時間がかかり、進歩している実感が得づらいというのも事実であるので、根気強く取り組む必要がある。成果が出るまでの時期に適切な指導をする役割を教師が担うことができればより良い学習ができるだろう。

4.限界を超えたその先へ

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想起練習や交互練習、多様練習に共通して言えることは、自分の頭を使って困難に立ち向かう努力をすればするほど能力は高まるということだ。私たちの脳や神経組織には可塑性が備わっており、鍛えれば鍛えるほどその能力は高まってくものであり、決して生まれた瞬間に限界が定められているものではないのだ。学習に必要なのは特別な遺伝子や特殊な機器というよりはむしろ自制心や決意、粘り強さなどの努力をする力なのだ。

本書を開くときあなたは何を期待するのだろうか。巷にあふれる楽をして成果を出せる裏技のような記憶術の類だろうか。もしそうだとすれば、本書の明らかにした科学的根拠に基づく学習法はあなたに厳しい現実を突きつけることになるだろう。

しかしあなたが努力を重ね、どうしても超えられない壁にぶつかっているならば、本書は輝かしい未来への一筋の光を示すことになるだろう。

本書で繰り返し述べられているのは、科学的根拠に裏付けられた現在においては最も効果的な努力の方法であり、能力は努力次第でいくらでも高められるという人間の可能性を示す科学のもたらした希望なのだから。

まとめ

1.世の中に出回る学習に関する情報のどれを信じたらいいか分からない

→個々人の経験則に基づく話ではなく、研究者が実験を通して確認した再現性のある事実に基づく情報を探してみよう。専門用語を用いずに平易に書かれた文章を見つけることが必ずできるはずだ。

2.どうしても身につけたい知識や技術があるが、大きな困難が待ち受けている

→直感に反する内容であっても、最も効果的とされているものを試してみよう。自らの限界を超えるためには、先達の教えを受け入れる素直さも時として重要である。

3.自分の知的能力には限界があると感じている

→能力は鍛えれば鍛えるほど高まることが科学によって判明している。正しい努力によって限界を押し広げていくことが可能である。

使える脳の鍛え方 成功する学習の科学

  • 著者:ピーター・ブラウン, ヘンリー・ローディガー, マーク・マクダニエル
  • 出版社:エヌティティ出版
  • 発売日:2016/4/14

モデルプロフィール

miyamoto_profile
  • 名前:宮本さゆみ
  • 生年月日:1988/11/20
  • 出身地:神奈川県
  • 職業:会社員
  • 受賞歴:withgirls TOP7
  • 趣味:カメラ
  • 最近の悩み:くしゃみが止まらない
  • Instagram:@minsayu

(カメラマン・Rimi Sakamoto/個人サイト・http://www.rimisakamoto.net/

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