『スプーンと元素周期表』小さな原子の大きな物語

化学の羅針盤 〜周期表〜

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水兵リーベー僕の船七曲りシップスクラークかスコッチ暴露マン徹子にどう会えんが‥

わずかな違いはあれど、化学の時間に周期表を暗記する方法の一つとして上記の呪文を聞いたことのある人は多いはずだ。

その意味するところを、その裏に隠された物語を知らない人にとっては、周期表は無意味かつ乱雑に元素を並べただけの表だとしか思えないだろう。しかし周期表は、物質の成り立ちやその性質および反応を知る上での羅針盤となりうる。

ここで化学の知識がない人のために簡単に周期表の説明をしよう。

実は周期表にはいろいろな種類があり、皆さんが一番目にするだろうものは1869年にロシアの化学者ドミトリ・メンデレーエフによって提案されたものなのだ。本文では彼の考案した元素を原子量の順に並べた表を周期表と呼ぶこととしよう。

周期表とは、この世界のありとあらゆる物質を構成する小さな粒である元素を性質が似たもの同士が並ぶように作成されたものだ。性質の例としては、金属光沢があることや他の物質との反応性の高さなどが挙げられる。そしてメンデレーエフが言うように、元素を原子量の順に並べるとその性質が周期的に現れるのだ。原子量とは元素の重さと考えてもらうと分かりやすいだろう。

つまり皆さんが目にする周期表は、物質を構成する小さな粒である元素を、その重さに従って並べると、似たような性質を示すものが周期的に現れることを表現したものなのだ。
だからこそ並び順が重要なのであり、暗記してしまうことが好ましいとされているのだ。

原子と元素の違いや、原子を構成するさらに小さな粒である陽子・電子・中性子、さらに小さなクォークなどについて関心のある方は是非とも本書の参考文献として挙げられている書籍をあたってほしい。

メンデレーエフが現在の最もメジャーな周期表の原型を考案するまでの科学者たちの試行錯誤の過程や、新たな元素の発見者としての名誉を手にするための科学者同士の争いといった周期表の裏に隠された物語が本書に綴られている。

一つ一つの元素に関する発見秘話や、科学の発展の歴史は理科系の知識のない人でも楽しめるように、難解な表現は極力噛み砕いた形で紹介されているのが本書の特徴の一つだ。

そんな化学をめぐる物語の一部を紹介しよう。

僕たちは星屑で出来ている

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元素をめぐる謎の一つとして挙げられるのは、元素はどのようにして出来たのかと言う問いだ。様々な性質を示す様々な元素がいったいどこから来たのかは永らく科学者たちの頭を悩ます難問であった。
そしてその問いの答えは地球の外、宇宙にあったのだ。

皆さんは核融合反応という言葉を聞いたことがあるだろうか。原子力発電などに利用されている化学反応の一種だ。実はこの反応は人間が起こす場合だけでなく自然に起こる場合も多々あるのだ。そしてその自然に起こる場合の舞台となるのが、宇宙空間に浮かぶ恒星の内部なのだ。

恒星とは太陽のように自ら光を発する星のことで莫大なエネルギーを放出している。そのエネルギーを生み出しているのが他でもない核融合反応だ。核融合反応は簡単に言うと、一つの元素が異なる元素に姿を変える反応のことだ。

この核融合反応によって、宇宙の誕生初期には存在していなかった重い元素たちが作られたのだ。核融合反応が進み、恒星が寿命に達すると超新星爆発という爆発を起こし、内部に蓄えられた元素たちが宇宙空間に解き放たれるのだ。

そしてこの時宇宙に飛び出した元素の一つが僕たちの体を構成する炭素だ。
つまり僕たちの体は、決して気障な台詞などではなく、科学的な事実として、星屑から出来ているのだ。

小さな粒である元素の謎を解き明かす過程で、とてつもなく大きな宇宙を舞台に思考を発展させていく化学の持つ豊かな想像力は、凄まじいものと言えるだろう。

こうして誕生して元素たちの織りなす物語が本書の中にふんだんに散りばめられている。

個性的な元素たち

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本文で紹介した元素の誕生秘話は、あくまで準備体操に過ぎない。やっと役者が揃ったに過ぎないとも言えるだろう。

身近な元素から一瞬しかその存在を保てない奇妙な元素まで様々な元素たちが本書には登場する。元素の発見にまつわる逸話や、科学者たちの人生、世界に与えた影響などを通して人類の発展の歴史を垣間見ることができるだろう。

本書を読み終えた後、身の回りにあるありとあらゆるものたちはあなたの目にどのように映るだろうか。
今までのような混沌とした世界から、秩序に基づく美しい世界がそこにあることに気づくのではないだろうか。

きっとその時には、周期表がこの世界を見渡す羅針盤となりうることを納得してもらえることだろう。

今日のポイント

  • 蓄積した知識は整理することで知恵となること
  • 身の回りのものを様々なスケールで見直してみると思わぬ発見が得られること
  • ものごとの裏に潜む歴史に想いを馳せること

スプーンと元素周期表

  • 著者:サム・キーン
  • 出版日:2015/10/6
  • 出版社:早川書房

モデルプロフィール

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  • 名前:加藤早希
  • 生年月日:1994/07/15
  • 出身地:千葉県
  • 職業: 東京理科大学
  •  受賞歴:ミス理系コンテスト2015ファイナリスト
  • 趣味:グーグルストリートビューで散歩をすることが好きです。
  • Twitter:@shrtnn32

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