読書でクールダウン。季節外れに『雪を作る話』

雪は天からの手紙

最近すっかり暑いですよね。これから梅雨に入ると思うと身も心もどんよりしてしまいそうですが、エアコンをつける前に、読書で涼んでみませんか?

今回ご紹介するのは平凡社のSTANDARD BOOKSシリーズより、中谷宇吉郎先生の随筆集、『雪を作る話』。

ハードカバーのオシャレな新書。このシリーズ、装丁が可愛いんです。何冊かそろえて並べたくなります。

本書の冒頭、「自然の恵み――少国民のための新しい雪の話」で中谷先生は、師匠である寺田寅彦の言葉を引用しています。

「どんなに精巧につくられた造花でも、虫眼鏡でのぞいてみると汚らしいが、どんなつまらぬ雑草の一部分でも、顕微鏡で見ると、実に驚くほど美しい」

中谷先生は深く感銘を受けたようです。

先生が世界で初めて作製に成功した人工雪の結晶は、天然の産物と見まがうほどの美しさ。

科学という武器を携え、雪の女神に挑戦状をたたきつけたのです。

挑戦状というと少々攻撃的かもしれませんが、先生は天から降り注ぐ雪という手紙への返信を書き綴るべく、雪山に繰り出しました。

そこでの苦悩と葛藤の日々が、本書の前半部分で描かれています。

はぁぁー。なんだか寒くなってきた!

雪を作る話

  • 著者:中谷宇吉郎
  • 出版社:平凡社
  • 発売日:2016/2/13

簪を挿した蛇

大自然の洗礼を受け身体の限界を感じながらも、最高の作品を創造した中谷宇吉郎先生。

続いては、そんな先生にとっての科学の原点を、46歳の時に執筆されたエピソードから探っていきます。

「簪を挿した蛇」なんて誰も見たことないでしょう。

でも、これが先生にとっての科学の母胎であると言います。

このエピソードは、先生が自身の少年時代を振り返る形で描かれています。

小学校のすぐ後ろにあった錦城山という小高い山に、「簪を挿した蛇」が居るというような噂があったようです。中谷少年も他の少年少女と同様、その伝説を疑わなかったのだとか。

小学生時代の中谷少年といえば、「生活の中に科学を取り入れるようなことなど、無縁な話であった」と振り返っています。完全に自分の手から離れて掴みどころのない理科を教わったというのだから驚き。

しかし、そこで芽生えたのが天邪鬼の心。誰も教えてくれなかったから、不思議が不思議のままだったのです。それに挑んだのが、科学者となった中谷先生でした。

科学は不思議を解決するためのものではありません。

平凡な世界の中に不思議を見出すことこそが重要なのです。

科学者は、「簪を挿した蛇」の真相を解明しようとすることではなく、「簪を挿した蛇」そのものを不思議に思うことから出発するのです。

自然を愛する心。美しいと感じる心。

深いことは考えず、美しいと思ったものには誰でも目が留まります。

それをよく観察し、その美しさに感動することが、中谷先生にとっての科学のあり方でした。

ちっとも堅苦しくなんてないでしょう?

神たる自然に授かったものをどう感じるか。そこに潜む美しさには気づけそうですか?

感性を磨くことも一種の科学。科学とまでいかずとも、準備としては必要なこと。

石川県加賀市には、『中谷宇吉郎 雪の科学館』があります。

そこでは、子供たちの感性を育むべく、雪や氷にちなんださまざまな活動を行っています。

科学者、随筆家、そして教育者としての中谷宇吉郎の意志は現代にも脈々と受け継がれているようです。

何か月も先にはなりますが、今年も雪が降るでしょう。

その時、中谷先生のこのエピソードを思い出したならば、それはほんのひとつまみでも、科学の教養が結晶となって自分の中に存在している証。

 

何気ない世界の中にも、美しさを見出し、挑戦していった科学者がいたということを、忘れないでいただけたら嬉しいです。

雪を作る話

  • 著者:中谷宇吉郎
  • 出版社:平凡社
  • 発売日:2016/2/13

こんなお悩みを解決

①暑い

雪山でのスリリングな研究生活を垣間見てみましょう。涼しくなれますヨ。

②科学の知識が皆無

難しいことなんて考えず、まずは美しいと思ったものを観察してみましょう。

③科学者を知りたい

中谷宇吉郎といえば、世界で初めて雪の結晶を作った科学者として有名です。覚えましたか?

<あわせて読みたい>


科学者とあたま

  • 著者:寺田寅彦
  • 出版社:平凡社
  • 発売日:2015/12/14

モデルプロフィール

  • 名前:鈴木康代
  • 生年月日:1997/6/14
  • 出身地:宮城県
  • 職業:大学生
  • 受賞歴:ミスオブサークル協賛賞、non-no読者モデル
  • 趣味・一言:読書、カラオケ
  • 最近の悩み:甘いものが好きなのにダイエットしないといけないこと
  • Twitte:@yaya_tter
  • インスタ:@yaya_stagram

(カメラマン:伊藤広将)

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