科学を文学し、芸術を科学する『科学者とあたま』

科学者とあたま

  • 著者:寺田寅彦
  • 出版社:平凡社
  • 発売日:2015/12/14

ハイカラトリップ

今回は平凡社STANDARD BOOKSシリーズから、寺田寅彦先生の随筆集をご紹介させていただきます。

以前はこのシリーズから中谷宇吉郎先生の随筆集を紹介させていただきましたが、相変わらず、装丁が可愛くないですか!?

カバーをつけてしまうのがもったいなく思えて、私はむき出しのまま持ち歩いています。

教養アピールグッズとしても素敵。

 

この本と私の出会いは、クリスマス間近の特に何の変哲もない日のことでした。

今でも年に1度は手紙を交わす、中学時代にお世話になった司書の先生から、この本と、あと先日ご紹介させていただいた中谷宇吉郎先生の随筆集が、クリスマスカードとともに郵送されてきたのです。

とーってもメッセージ性が高くて、かつての教え子や後輩へのプレゼントには丁度いいと思います。

あなたもこれを機に、カフェで友達を待つ間や、通勤の電車の中、スマホから本に持ち替えてみてはどうでしょう。

短いエピソードが詰まっているので、ちょっとした時間でも本の世界にトリップできます。

 

さて、皆さんは寺田寅彦先生のことをご存知ですか?

寺田寅彦先生は、中谷宇吉郎先生のいわゆるお師匠様にあたる、戦前の立派な科学者。

本書では明治生まれの寺田先生の生活の様子を垣間見るような、まるで日記を読んでいるような気分になれます。

 

というのも、あの夏目漱石と交流があったからか、文章が洗練されいます。

じつは寺田先生、随筆家としても多くの著作を残されているんです。

物知り顔でやたら横文字ばかり並べる現代のイケイケ科学者よりもよっぽど、私たちに身近な言葉で科学を綴ってくれています。

頭のいい人、悪い人

今回は、収録されている随筆の中から、55歳の時の「科学者とあたま」(1933年)、51歳の時の「化物の進化」(1929年)、42歳の時の「自画像」(1920年)を紹介させていただきます。

では早速、頭がいい人と悪い人の違いについて考えてみましょう。これは「科学者とあたま」のなかで挑んだテーマです。

 

ある日、寺田先生と親しいある老科学者が先生に、

「科学者になるためには『あたま』がよくなくてはいけない。」とおっしゃったそうです。

それに対して先生は「科学者はあたまが悪くなくてはいけない」という命題を提示しています。

ちなみに先生は「頭のいい人には恋ができない」とも述べております。

・・・どういうこと?

確かに、矛盾はしています。でも、恋は盲目なのです。

損しても、遠回りしてもいいから手に入れたい。そんな気概を求められるのが恋なのです。

科学もしかり。真実を追い求めるために、がむしゃらになれる人こそが科学者。

つまり、時には賢くないやり方を選ぶことも意図はない人のことを、頭がいい人と呼べるのです。

本気で燃えるような恋をしたいなら、バカになりましょう!

自画像も化物も科学

科学者としての在り方に対する先生のポリシーは、「自画像」にもよく表れています。

ここでのお題は「いかにして満足のいく自画像を描くか」です。

 

「さっきは輪郭のバランスが悪かったから今度は・・・」

「パーツで見ればよく書けているけど、全体像が・・・」

創作活動では次々と課題が生まれるものです。

これって、まるで科学ですよね。

気づいたこと、面白かったことを書き留めて、次に実践。終わりなき追及です。

直したくないところを直して別のやり方で試してみる勇気こそ、科学者に必要な要素。

作業を進めていく中で、時々昔のことを思い出してみたり、気分に流されてみたり。

「今日は気が乗らないし、うまく描けないし・・・」なんてことがあれば、「なんだか今日はうまく書けるぞ・・・!」なんてことも。

創作活動は果てしないです。

 

お気づきとは思いますが、科学も同じく、果てしないものなのです。

例えば、「化物なんてたかが迷信でしょ?」なんて思っている人たちを、寺田先生は一蹴しています。曰く、「化物がないと思うのはかえって本当の迷信である」というのです。

化物という存在が成立するのは、それを怖がる人たちがいるからです。

たとえ化物の正体を突き止めたとしても、全ての人たちが化物を怖がらなくなる日なんて来ないでしょう。だから、化物がないと思うことの方があり得ないのです。

 

他にも例えば、虹はその発生の仕組みが解明されていますが、見た時に思わず感動してしまうでしょう。神秘的な現象が神秘的に感じられることには変わりありません。

不思議だから、もっと知りたい。納得がいかないからもっと突き詰めたい。

ひとたび興味がわいたら、自分なりの答えを得るまでバカみたいにしがみついてみるのも、悪くはありません。

昔から変わらず、日常のあらゆるところに、科学は潜んでいるのです。

こんなお悩みを解決

①教養をひけらかしたい

戦前の科学者の言葉を引用出来たらかっこいいですよ。ぜひともやってみてください。

②頭が良くなりたい

矛盾しているようですが、まずはバカを極めましょう。頭悪く突き進みましょう。

③身近な科学を探したい

身近な題材を科学者の目線で扱っているのが、寺田先生の真骨頂。実はあなたも既に科学者?

科学者とあたま

  • 著者:寺田寅彦
  • 出版社:平凡社
  • 発売日:2015/12/14

モデルプロフィール

 

(カメラマン:伊藤広将)

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