絶望読書
- 著者:頭木弘樹
- 出版社:飛鳥新社
- 発売日:2016/5/7
願いが叶って幸せな結末を迎えるハッピーエンドの小説も、苦難や失敗を乗り越えた成功者の本も、本屋に行けば数え切れないほどある。
でも、そういう本を読むほどつらくなる時や、ポジティブなものに癒やされない感情というものは、誰しもが持っているのではないだろうか。
悲しいときには悲しい音楽を聴くように、絶望したときには絶望の本を読むことが、私たちの救いになる。
そんな読書について考えるのが、頭木弘樹『絶望読書』だ。
あまり本を読まない人ほど、絶望のときの読書を知っておくといいかもしれない。
いつか人生に訪れるかもしれない絶望に備えるために。
同じ物語をずっと生きられるとは限らない

人は誰しも物語の中を生きている、と著者はいう。
まだ世の中の全体像を把握することが難しい子どもたちは、物語を聞きたがり、物語の世界を通じて現実を知っていく。
自分が生きていくのに必要な物語を手に入れた大人は、自分の信じる何らかの物語(例えば、社会的に成功してお金持ちになるとか)を生きている。
ところが、人生には想定もしなかった絶望的な出来事が起きることがある。
すると、目の前で起きているのは間違いなく現実なのに、多くの人は「こんなのは自分の人生ではない!」と思ってしまう。それはつまり、自分が思い描いた脚本を生きている、ということだ。
しかし、現実の世界では同じ物語をずっと生きられるとは限らない。
著者は、大学3年生のときに難病を患い、「一生治らない」と宣言されたという切実な実体験を持つ。あらゆる選択肢が目の前にあり、人生はこれからだと思っていた矢先、すべての道が閉ざされ、闘病生活がスタートする。
そんな絶望的な出来事があっても、私たちはなんとか脚本を書き直して、その後の人生を生きていかなければならない。
そういう状況に直面したときこそ、人は最も物語を必要とするのではないかと著者は言う。
人生の脚本を書き直すための、参考となる物語が必要になるのだ。
「絶望の期間」に、絶望の本が心の救いになる

著者は、絶望は「瞬間」ではなく「期間」だと説明する。
そして、いちばん大切なのはこの「絶望の期間」の過ごし方だという。
人は絶望したとき、なるべく早く立ち直ろうとする。
しかし、立ち直りを焦ることは危険だ。悲しい気持ちを抑えてなかったことにしようとすると、その時は大丈夫でも、数年後に急にとても強い悲しみとなって表れることさえある。
だからこそ、絶望をなかったことにするのではなく、しばらくは焦らずに「絶望の期間」を耐えて過ごす必要がある。
著者が長期入院していたとき、少しでも元気づけようと、お見舞いに明るく前向きな本をたくさんもらったが、読めば読むほどかえって気持ちが沈んでいき、逆効果だったという。
このとき本当に必要なのは、絶望に寄り添ってくれるような物語だ。
孤独な「絶望の期間」の中で、誰にもわかってもらえないどころか、自分ですらよくわからない感情に寄り添い、言葉で表してくれる。
そういう本が、人生の脚本をなんとか書き直していくためには必要なのだ。
フィクションだけがネガティブな真実を描ける

「絶望の期間」を過ごすために必要なのは、本だけに限られるわけではない。
著者は、映画やドラマなど、絶望の“物語”であれば、何でもよいのだという。つまり、必要なのはノンフィクションではなく、フィクションである。
なぜなら、自分と同じような状況に置かれているノンフィクションの手記を探そうとしても、困難を乗り越えて成功した人の話しか本になっていないからだ。
しかし、実話だったら日の目を見ないようなネガティブな真実を、物語は描き出してくれる。
本書では、第二部でさまざまな絶望の種類に合わせ、映画やドラマも含めて共感できる物語が紹介されているので、気になる方はぜひ本書を手にとっていただきたい。
ひたすら絶望についての話が続く本書だが、もちろん絶望せずに生きられるに越したことはない。
けれど、もしあなたがいつか「絶望の期間」を乗り越える必要があるときが来たら、そのときは教養や娯楽のためではなく、生きるための「絶望読書」もあるということをぜひ思い出してほしい。
絶望読書
- 著者:頭木弘樹
- 出版社:飛鳥新社
- 発売日:2016/5/7
モデルプロフィール

- 名前:Haruna
- 生年月日:1996/2/13
- 出身地:東京都
- 職業:学生
- 趣味:コスメが大好きです
- 最近の悩み:就活
- Instagram:@hrp__213
(カメラマン:伊藤広将)
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