おとなの教養―私たちはどこから来て、どこへ行くのか? (NHK出版新書 431)
- 著者:池上彰
- 出版社:NHK出版
- 発売日:2014/4/9
現代教養、リベラルアーツといった学部を設置する大学が近年急増している。現代教養といっても、一体どのような学問を指すのか疑問に思うところである。本書の著者である池上彰氏によれば、7つの学問を通して最終的に「自分自身を知ること」こそが現代教養であるという。
池上氏が提唱する自由七科とは、
①宗教
②宇宙
③人類の旅路
④人間と病気
⑤経済学
⑥歴史
⑦日本と日本人
である。この7つは全て異なる分野のように見えるが、実は繋がっているのだ。
例えば、宇宙は現代科学が発展する前は神が創ったものとされていた。当時、宇宙は科学で考えられていたにも関わらず、宗教的要素がそこには介在していたのである。
今回はこの7つの中でも主に、「宗教」と「日本と日本人」の2つに絞り紹介したい。
科学と神

まず一つ目の宗教であるが、そもそも宗教が生まれたきっかけはその土地ごとに根差した環境や風土が基盤となり出来たものだ。現代では気象に関する知識もあり、異常気象の原因がすぐ判明する。
しかし、昔はそんな考えに及ぶこともなく、人を超える存在によって起こされたものと理解した。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教が全て砂漠地帯で生まれた宗教という事実からも、風土と宗教の関係がうかがえるだろう。
一方で、日本は自然豊かな風土であり、砂漠とは対照的に生きることにおいて余裕が持てている。その点を考えると、我々は八百万の神といってあらゆる自然に神がいると考える多神教であるというのがわかる。
宗教に対し親しみのない人もいるかもしれないが「神がいつも見ているから、悪い行いをしてはいけない」という考え方があるからこそ、倫理が保たれているのだと考えられる。
宗教絡みの紛争は世界のどこかで起きているが、宗教ごとに考えを持ち信じることが生きる糧に繋がっているように感じる。いくら科学が進歩しようとも、「神頼み」という言葉があるように、人知を超える存在を思い浮かべすがることはある。
自分が関心のある宗教に限らず調べることで、このように知らない世界を見ることができるのである。
自分のアイデンティティとは

二つ目は「日本と日本人」について。私は文化や日本人という定義について友人と話し合う機会が頻繁にあったのだが、日本人いうのは極めて不明確であることに気づき驚いた。
例えば、純日本人ではあるが、顔立ちはイタリア人の場合彼は日本人ではないのか。反対に、純アメリカ人ではあるが、顔立ちが日本なら彼は日本人なのか。考えれば考えるほど「日本」という定義に疑問が湧いてくるのである。
昔から日本列島が存在し、そこに人々も生きていた。しかし時代が移り変わり、いろいろな民族や人種が混ざり合って現代の日本ができている。もはや、どこにも混じりけのない日本人はいないのだ。そうした定義をたどっていくと、日本も日本人もアイデンティティがないことになる。
それでは、「日本」とは一体何なのだろうか。日本はなぜ日本なのか。
一度は深く考えてほしい。
自分たちとは異質な人たちと接触して初めて、彼らと我々は違うと認識できる。中国や韓国など、アジアの中でも日本は他国と異なる要素があるから存在を改めて確認することができる。同様に自分が何者なのかは、他者と様々な要素を比較して認識してきたと言える。つまり他者が存在することによって自分が何者か、日本がどんな国かを認識可能なのだ。
日本や日本人に限らず、自分自身が何者なのかを問い詰めてみても良いのかもしれない。
探求すること

自分自身を理解することで、現代教養七科目を基盤としたあらゆる物事への視野が広がり理解が深まると筆者は言っている。
自由七科を学ぶことで、自分がなぜ今ここに存在し生きているのか見えてくるだろう。そして今後自分も周りも一体どこへ向かっていくのか自分自身で考え、探求することが現代教養の学習のゴールである。
悩みを解決する3ヶ条
- 知らないものを調べて世界を広げてみる
- 自分というアイデンティティを深く調べる
- 探求することで教養を知る
おとなの教養―私たちはどこから来て、どこへ行くのか? (NHK出版新書 431)
- 著者:池上彰
- 出版社:NHK出版
- 発売日:2014/4/9
モデルプロフィール

- 名前:さき
- 生年月日:1991/03/06
- 出身地:東京都
- 職業:OL
- 趣味:ゴルフ
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