私たちって何なんだ。どこにいるんだ。思考を巡らす楽しさを味わってみない?『到来する共同体』

この本を勧めてもらったのは、五か月前、教育哲学を専攻する先輩から。その先輩もアガンベンについて記事を書いているので、ほんの触りの部分だけを、先輩をはじめとする哲学を本格的に研究されている皆さんに怒られないように紹介していきたい。ジョルジョ・アガンベン。1942年生まれの美術や美学に精通しているイタリアの哲学者である。パリ国際哲学学院を経て、ヴェネツィア建築大学などで教鞭に立っている。

『到来する共同体』はアガンベン自身が美学者から政治哲学者への移行期に書かれた書物で、日本語版は上村忠男訳によって2012年に編纂されている。非常に小さいサイズの書物で、厚さも手帳並。大学生が電車の中でこの本をバッグの中から取り出したら非常にオシャレだ。装丁も美しく知的でスタイリッシュに見える。

だが、この著書にはアガンベン自身の思考が凝縮されている。残念ながら、紹介する私自身も「ついていけない」ほどの言葉の深みだ。恐らく一年…二年…アガンベンが紡ぐ言葉と必死に格闘していく中で、日常を豊かにするような気づきが生み出されていくのだろう。悩みを増やしたくない皆さんにはおススメしないが、悩みたい皆さんには非常にお勧めだ。

到来する共同体 新装版

  • 著者:ジョルジョ・アガンベン (著), 上村忠男 (翻訳)
  • 出版社:月曜社
  • 発売日:2015/2/10

「なんであれかまわない単独者」

『到来する存在はなんであれ構わない存在〔essere qualunque〕である』。

本著の前半は、現在の私たちの存在のありようとして望ましい「なんであれかまわない単独者」の形而上の思索が行われている。そして中盤~後半は資本主義の登場によって「なんであれかまわない単独者」が伝統的な運命・個人的な伝記から解放されることにより、真の自由の獲得がもたらされたこと。後半は、「なんであれ構わない単独者」の集合が国家と対峙する大きな共同体と化したことが、中国の天安門になぞらえて紹介されている。 本著の見どころは「なんであれかまわない単独者」とはどういう存在なのか、という問いに対するアガンベンの思索であるが、私の浅い人生経験からは完全にアガンベン自身が述べようとしたモノ・コトを完全に把握することは困難だったため、ぜひ購入してその目で確かめてほしい。

親に「帰って墓の前で手を合わせなさい」と言われた時

一方で「なんであれ構わない」現代人が抱える伝統的・宗教的なものに対する嫌悪感については考えさせられた。

こんな経験をしたことはないだろうか。お盆の時期になると、両親から「帰って墓の前で手を合わせなさい」とLINEが飛んでくる。都心に住む私は、わざわざそんなことのために実家に帰るのかと思い、「最近勉強が忙しくて」と返事をする。なぜなら一家の宗教的伝統行事を守るよりも、交通費の往復20000円が惜しいからである。日本においても高度情報化が進み、資本主義の論理が介在した「情報」が私たちを取り巻く。気づいたら私たちは伝統を信じなくなり、現代的な価値観(主に経済的な)に基づいて動くようになった….そう考えると国家主義の伝統的アイデンティティに国民が染まりあがった時代が本当に存在したのかと、現代人である私はにわかに信じがたい。

とはいえ、スピリチュアルなものを信じる人間が依然として存在する点では、「資本主義によって現代人は宗教・伝統的なものと分離された」と考察することは時期尚早にも思えてしまう。例えば神をあまり信じない私でさえ、大学受験の際には天国の祖父や祖母が見守ってくれることを望んだし、なんだかんだ嫌々墓参りに行ったとしても、実際に墓前では襟を正し、祖父・祖母に日頃の報告をするのである。

グローバル化によって国家に所属する伝統的な価値観が薄れてきたとしても、日本人のスポーツ選手が活躍していると、やはり嬉しい。そんなことを考えるうちに、実は都合の良い時だけ「伝統」を重んじるのが、なんであれ構わない単独者の特徴なのではないかと、勝手に思索を巡らせてしまった。極めて失敬である。

 

到来する共同体 新装版

  • 著者:ジョルジョ・アガンベン (著), 上村忠男 (翻訳)
  • 出版社:月曜社
  • 発売日:2015/2/10

    モデルプロフィール

  • 名前:小林真琴
  • 生年月日:1989/02/05
  • 出身地:秋田県
  • 職業:フリーモデル、ブロガー
  • 趣味:ソフトテニス、ライブ鑑賞、カラオケ、メイク
  • Twitter:@maccori_1
  • Instagram:maccori1
  • Blog:まっこりのにこにこぶろぐ

(カメラマン:伊藤広将)

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