深夜まで続くアルバイトの帰り道、このエッセイを読むのが密かな楽しみだった。『洗礼ダイアリー』。かつてポプラ文庫のWeb astaで2週に1度新しい記事が更新されていた。
ところで、スマートフォンに慣れている人は長い文章を嫌うと思う。Web上に公開されている「〇〇まとめ」「〇〇ブログ」のような記事サイトは、どれもこれも見出しがついて、飽きさせないような写真が掲載されている。私自身も記事を書くアルバイトをやっていたが、編集担当の人から「見出しをどうのこうの」「写真をどうのこうの」という話をよくされた。もはや、ビジュアライズが拘った記事が今の時代の主流なのだ。
それでも、Webで連載されていた『洗礼ダイアリー』を初めて読んだとき、ガツンと殴られたかのような衝撃を覚えた。
洗礼ダイアリー
- 著者:文月 悠光
- 出版社:ポプラ社
- 発売日:2016/9/5
中原中也賞を受賞した、平成生まれの詩人の初のエッセイ集
5000文字くらいの文章が、まるで作文用紙に書いたように綴られている。見出しもグラフィックも何もない。なのになぜ、この言葉たちは頭の中にスッと入っていき、読み出したら止まらなくなってしまうのか。感情や情景が文字だけでダイナミックに伝わってくるのか。そんな文月さんの言葉の摩訶不思議さを体感し、美しい文章を紡ぐことができる人に憧れを抱くようになった。更新のあった日は、新宿から多摩に向かう電車の中で、二度も三度も読み耽っていた。
『洗礼ダイアリー』は中原中也賞を受賞した、平成生まれの詩人の初のエッセイ集。
今の時代の若い人でも「詩人」になるんだ。
そんな世の中から突き刺さる好奇の目線が、「平成生まれの詩人」を生きづらくさせていく。仕事の上では数多くの詩を書き、ラジオでの朗読の機会もあり、詩人としての活動を増やそうとするために「ミスコンテスト」にも出場してきた。でも、周りの一言一言に傷つきやすいし、皆が思っている以上に、あっちこっちで壁にぶつかりやすい。そんな世の中からの「洗礼」が、赤裸々に綴られている。
世の中の「詩人」に対するイメージ。実際に「詩人」である自分。そもそも私は一般的な「詩人」にならなければならないの?演じる必要があるの?そんなギャップに悩まされながら、必死に都会の中心で生き続ける。健気だけども強い生き方に励まされる。
世の中に順応するか、抗うか
自分の想い・考えを外に出すことは恥ずかしい。実際に言葉にしていく上では筆が止まってしまう。それでも自分の経験から抉り出すように紡ぎだされた言葉は、読み手の心を強烈に何度でも殴る。誰もがその言葉のどこかに引っかかると思う。
世の中に順応するか、抗うか。結局は順応しちゃうことになるんだけど、自分を見失わないでおきたい。そんな悩みを抱えている皆さんは、おそらく人生にずっとつきまとう言葉と出会ってしまうかもしれない。
ちなみにWeb astaでの更新は終了した。現在は書籍化され、全国の書店で販売されている。
洗礼ダイアリー
- 著者:文月 悠光
- 出版社:ポプラ社
- 発売日:2016/9/5
モデルプロフィール

- 名前:五十嵐 友泉
- 生年月日:1997/7/12
- 出身地:東京都 渋谷区
- 職業:学生 帝京短期大学
- 受賞歴:すっぴんGirl’sアンバサダー 2期生 グランプリ
- 趣味:ミュージカル観賞
- Instagram:@alohawaii712
- Twitter:@fuwafle15berry
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