【AIとの共生】私たちは、人口知能とどう暮らしていくのか『AIと人類は共存できるか?』

未来の私たちはどんな生活を送る可能性があるのか。

科学者が予想不可能、という未来。それをこの本は小説という形で垣間見せてくれる。ネタバレしない程度に、少しだけ内容を見てみよう。

AIと人類は共存できるか?

  • 著者:人工知能学会
  • 出版社:早川書房
  • 発売日:2016/11/12

早瀬耕「眠れぬ夜のスクリーニング」×東京大学特任講師・江間有沙

ホワイトカラーのほとんどの仕事は、2040年までに人口知能に置き換えが可能だと言われている。社員のほとんどをコンピュータに置き換えたいと、真剣に考えている経営者や株主がいるのは、まぎれもない事実だ。

プログラマとして働く奥戸理来(おくどりく)は、周囲の人間の何人かが、アンドロイドではないか、と疑い始める。

自分を診察する診療内科医の女性には人間らしさが足りない。会話の間の、あの沈黙は大容量のデータベースから答えを探していたからではないのか。

 

人口知能によってわれわれの社会がどう変わっているか、について、東京大学特任講師の江間有沙氏は、仕事が奪われるのではないか(経済)、人口知能が人を傷つけた時の責任は誰が負うのか(法)、人口知能によって人が操作されないか(倫理)。など、様々な論点がある、という。

しかし、どの分野にどのような影響をもたらすかは、そもそも「私たちがどんな欲望をもっていて、技術がどのようにかかわってくるか」という問題でもある。

科学技術は、豊かになりたい、金持ちになりたい、といった私たちの欲望を実現しようとするものだからだ。

私たちが恐れるべきなのは、人口知能ではなくて我々の欲望なのだということに、改めて気づかされる。

藤井太洋「第二内戦」×電気通信大学大学院情報理工学研究科教授・栗原聡

2020年に、銃規制法案に対する意見の対立から、2つの国に分断されてしまったアメリカ。『第二内線』の探偵ハルは、どんなテクノロジーを使って、敵国に乗り込み、依頼を解決するのか。

長谷敏司「仕事がいつまで経っても終わらない件」×国立情報学研究所・相澤彰子 

AIによる、世論の予測と誘導は成功するのか。

政治に活用されるAI。改憲の是非を問う、無能な総理大臣に振り回されるエンジニアたちの姿を、深刻かつ面白おかしく描く。AIと仕事をするとき、人は自らの役割をどこに定めるのか。

『人間は機械との競争より、無茶振りをするボスの下での、機械との共同作業こそ恐れるべきである』。

個人的には、来てほしくない未来ではある。

吉上亮「塋域の偽聖者」×筑波大学システム情報系助教・大澤博隆 

未来のチェルノブイリ原発を舞台に、宗教とAIの関係を扱ったストーリー。

チェルノブイリを故郷とする、盲目の美しい娘を連れたガイドのイオアンは、爆発事件に巻き込まれ、娘は誘拐される。二人は、危機を脱し、生き残ることができるのか。

人口知能は、彼らとどんな関係を結ぶのか。

科学技術が進歩していくと、その試みの失敗や悪意の転用が、思わぬ結果を生むことがある。その時に起こる災害から、AIは人を救済できるのだろうか。未来の私たちは、何を信じればいいのだろう。

そして、AIはどこまで、「人間らしく」あるべきなのか。AIの自我、AIの信仰は。

いずれにしても、これらの社会に入り込んでくる高度なAIたちをどのように解釈し、未来の子供たちに残していくかは、ストーリーの司祭の言うとおり『受け取る側、人類の側の責任』になるのだろう。

倉田タカシ「再突入」×公立はこだて未来大学教授・松原仁 

『再突入』は、芸術と人間と人工知能の関係を考察したストーリー。

「たくさんの人間に評価されないといけないという理由がわからないんだよね。ちょっと倒錯的にすら思える。それが、ほとんどの人間に共有されてた価値観なんだってことは、わかってるんだけど」

と、2146年の若いアーティストは言う。

2015年に、AIが書いた小説が第3回星新一賞予選を通過したことが話題になった。人工知能はコンピュータに人間のような知能を持たせることを目指しているが、知能を理性と感性とに便宜的に分けると、これまでの研究は、もっぱら理性に集中していた。最近将棋や囲碁で人間のプロ棋士に勝つコンピュータが出てきたが、これは理性の代表例だ。理性に集中していたのは、理性の方が世の中の役に立つ機能に関係が深いことはもちろんだが、コンピュータで感性を扱うのはとても難しくて手を付けにくかったのも理由である。

人口知能の理性の研究がかなり進んでくると、研究者たちはそろそろ感性の研究も本格的に進める時期になったと考えた。そこで、小説をコンピュータに創作させることを選択した。小説がコンピュータにとって非常に難しい対象だからだ。

これが、人工知能に小説を書かせることになった理由である。

このプロジェクトは、「人工知能が芸術を創作し、人間がそれを鑑賞する」ことを目的にした。

この本では、星新一賞の予選を通過したショートショートも掲載されているので、ぜひそちらにも目を通していただきたい。

AIと暮らす未来

AIと一緒に暮らすことになる世界は、もうそこまで来ている。その時の私たちの人生がどんなストーリーになっているのか。どんなストーリーがあり得るのか。

そのヒントを得ることが、できるかもしれない。

AIと人類は共存できるか?

  • 著者:人工知能学会
  • 出版社:早川書房
  • 発売日:2016/11/12

モデルプロフィール

  • 名前:吉田葵
  • 生年月日:1995/10/7
  • 職業/大学:慶應義塾大学
  • 趣味/一言:ボクシング観戦/ボクシングファンになってください!
  • Instagram:@aoiyoshidaaaaa

(カメラマン・伊藤広将)

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