【AIとの共生】進化した人口知能(AI)は、私たちを支配するのだろうか『人工知能は敵か味方か』

パートナー、主人または奴隷。人間と機械の関係を決める転換点

「漢字が書けなくなった」ということを気にする人は、今ではほとんどいなくなったように思う。文章はワープロソフトやスマホで書くのが当然になり、手書きで漢字を書く機会は、多くないからだ。自分の名前を漢字で書くことさえできれば、それほど大きな問題は生じない。仮に忘れたとしても、スマホで調べて書けばいいのだ。

辞書も、地図も、音楽も。いまや何もかもが、私たちのポケットに入っている。

AIやロボットが、人間のビジネス、教育、ヘルスケア分野に導入されつつあり、AIは私たちの生活に、どんどん深く入り込んできている。AIはどんどん賢くなり、できることは増えていく。使われる範囲は増え続ける一方だ。

そのうち、自分の仕事もAIにとって代わられてしまうのではないか、と誰でも一度は考えたことがあるのではないだろうか。それどころか、そのうち主体的に考えるようになったAIに、私たちの生活は乗っ取られてしまうのではないか。

AIは我々の味方なのだろうか、それとも敵なのだろうか。ニューヨーク・タイムズ紙のベテラン記者であるジョン・マルコフ氏の著書から、AIとどう付き合っていくべきなのかのヒントが得られる。

人工知能は敵か味方か 

  • 著者:ジョン・マルコフ (著), 瀧口 範子 (翻訳)
  • 出版社:日経BP社
  • 発売日:2016/6/17

雇用黙示録 -私たちの仕事を、AIが奪う-

ニューヨーク・タイムズ紙では、AIによる自動化技術の新しい波を受けて、印刷工たちが職を失った。

2008年の景気後退が、コンピュータ・システムによる労働者の置き換えを顕著に加速化したという証拠がある。テクノロジーで置き換えたほうが安ければ、企業が労働者らを雇いなおす理由はないだろう。

現代社会は、産業革命にも似た新たな経済転換の起点にある。インターネットによるクラウドソーシングや労働力の再編成といった社会的力が、現在は想像できない方法でアメリカ経済をつくり替えるかもしれない。すでにインターネットは、「検索エンジン最適化」といった新しい仕事のカテゴリを生み、将来も予想を超えたカテゴリが登場するだろう。

しかし、次の雇用ブームがあるとしても、それはまだ見えない。

テクノロジーは、経済成長の源泉ではなく、それどころかすべてのルーティン化した仕事や、「認知的」作業をする医者、記者、ストックブローカーといった多種の職業の危機も招くものとなっている。

そして、テクノロジーは予想されないところで使われることもある。設計者たちは、開発した機能を、建設的にも破壊的にも利用できる。古くから武器設計の世界では潜在的に予想外の結果を生んできた歴史があり、それは「デュアル・ユース」テクノロジーと呼ばれてきた。たとえば、原子力は、電力と武器の両方に利用される。同じことが、いまやロボットと人工知能のテクノロジーにもあてはまるようになっているのだ。この場合のデュアル・ユースは、武器としてだけではなく、人間を拡張するか置き換えるかという可能性にも言える。

つまり、「雇用黙示録」への恐怖にもかかわらず、自動化、ロボット、AIの社会へのインパクトを考える別の方法もある、ということだ。

AIとロボット技術は確かにかなり多くの職を奪うだろうか、人間性を拡張してくれるという側面もあるのだ。

われわれは、既に支配されている

コンピュータがデスクトップやラップトップの間を行き来し、日常的なモノにも組み込まれると、インテリジェントなわれわれとのやりとりを求めるようになるだろう。

こうしたAIは、われわれの奴隷、アシスタント、同僚のどれになるのか、あるいはそれら3つをミックスした何かになるのか?それとも、もっと不吉なことに、われわれの主人になるのか? 

ロボットと人工知能を社会的関係という面でとらえるのは、最初は無理に思える。だが、われわれにはマシンを擬人化する傾向があるのを考慮すると、マシンは今後自律性を高めていくにしたがって、間違いなく社会的な関係を築いていくだろう。人間とロボットの関係は、従来の奴隷との関係とそう変わらない。奴隷は主人によって非人間化されてきた歴史がある。

現代のパーソナルコンピュータを最初に想像したアラン・ケイは、設計者たちは「召使ではなく同僚として機能するプログラムの開発を目指すべきだ」と主張する。失敗すると不穏な結果を生むことは、歴史が示唆している。インテリジェント・「アシスタント」をつくることは、ギリシャ人を奴隷として彼らに考えることを任せたローマ人の問題を繰り返すことになる、とケイは懸念する。権力を握っていたギリシャ人は、ローマ人に考えることまで任せてしまった結果、独自に考えることができなくなったのだ。

 

おそらく、すでにわれわれも似たような道を滑り落ち始めているのかもしれない。

行先やナビゲーションのエラー訂正をGPSに依存することで、われわれは広く有用なサバイバル技術である空間的な記憶や論理能力を失いつつあるという証拠がどんどん出てきている。

「みんなが「コンピュータは世界を征服するんですか?」と尋ねてくる際には、ほとんどの場合、すでにそうなっている。なぜなら、いろいろな方法で権威をコンピュータに譲り渡しているからだ」とケイは言う。

 

これはもうひとつの大きな問題を示唆する。日々の決断のコントロールを、洗練する一方のアルゴリズムの集合に任せてしまうリスクだ。

「人々は、インテリジェンスが何をすべきかを言いつけてくれるのを待っているのだ、と気づいたんです。どんな食事をとるべきか。どんな人に会うべきか、どんなパーティにいくべきか」と彼は言う。

コンピュータによって大きく考え、親密な関係性を築き、個性や創造性や自由になるよう解放されるのではなく、若者は突然指図されることに飢え始め、自分たちの責任をクラウド上のAIに喜んでゆだねようとしている。

最初は、個々人が嗜好を効率的に共有できるようにスタートしたインターネット技術は、あっという間に嗜好を押し付けるだけの一連のアルゴリズムに転換してしまったのだ。いまやインターネットは、人生のあらゆる指示にシームレスに奉仕する。これは、ごく小さなこと、たとえば個人の欲望や必要性をコンピュータがよく理解して、近くで一番おいしい焼肉レストランを探してくれることから、もっと重要な結婚相手を探してくれるようなインターネット・サービスまである。食べ物やギフト、花に限らず、パートナーまでアレンジしてくれるのだ。

 

しかし、われわれはまだ、どこまでAIに意思決定をゆだねるかを選ぶことができる。

これはわれわれが決めることであり、人間とわれわれがどんな世界を作り上げるのかに関係することだ。決めるのはマシンではないのだ。

人工知能は敵か味方か 

  • 著者:ジョン・マルコフ (著), 瀧口 範子 (翻訳)
  • 出版社:日経BP社
  • 発売日:2016/6/17

モデルプロフィール

  • 名前:川原あやか
  • 生年月日:1993/11/16
  • 出身地:福岡県
  • 職業:会社経営
  • 趣味:ディズニーランドに行くこと
  • Twitter:@ayacho1116
  • HP:giselle-design.com

(カメラマン・伊藤広将)

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