『テラフォーマーズ』から生物を知り、生物多様性について考える

テラフォーマーズ 1

  • 著者:貴家 悠 (著), 橘 賢一 (イラスト)
  • 出版社:集英社
  • 発売日:2012/4/19

 

昨日、高井研氏の『生命はなぜ生まれたのか』を紹介したのだが、

人類が誕生した謎に迫る 『生命はなぜ生まれたのか』

2016.09.08

ちょうど今年の6月だっただろうか、NHKの人気TV番組「SWITCH インタビュー達人達」で高井研氏と今日紹介する『テラフォーマーズ』の原作者・貴家悠さんが対談をしていた。

この番組は異なる分野で活躍する2人の達人が対談する番組なのだが、地球生物学者と漫画原作者の対談が面白すぎたので、ちょっとした遊び心でこの並びで紹介することにした。

さて、本書は人類の火星移住計画のため、火星にある黒い生物を送りこむことに……

その生き物とは、そう、ゴキブリだ。

しかもそのゴキブリが謎の進化を遂げ、人間に襲いかかってくる。普通の人間ではまるで歯がたたないので、ゴキブリと闘う人間は昆虫の姿に変異できるバグズ手術を受けることに。ある者は、オオスズメバチに変異し、毒針が使えるようになったり……と、そんな人間と想定外の進化を遂げた人型ゴキブリとのSFバトル漫画だ。

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テラフォーマーズは今年映画化され知っている人も多いと思うので、内容はこれだけにし、ストーリーをより楽しむための+αを書くことにする。

ただのよくあるSF漫画と思うなかれ。本書こそ生物を知る、また生物多様性について考えさせられるにふさわしい一冊なのだ。

最強の蟻にして最強の昆虫

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本書には、本当に様々な虫(正確には虫に変異した人間)が登場する。

オオスズメバチ、クモイトカイコガ、サバクトビバッタ、ネムリユスリカ、パラポネラ、ハナカマキリ、エメラルドゴキブリバチ、ミイデラゴミムシ、メダカハネカクシ、ニジイロクワガタ、クロカタゾウムシ、オニヤンマ、マイマイカブリ、ゲンゴロウ、オケラ、アシダカグモ……etc

バグズ手術を受けた人間が昆虫に変異するときに入る虫の説明が、生き物を知るいいきっかけになる。

ゴキブリの瞬発力については最早言うまでもないが、実は最大筋力でも恐ろしい力を秘めている。力持ちの代名詞であるカブトムシは自重の50倍以上の物体を牽引するが、ゴキブリも足場などの条件が合えば同等の牽引力を発揮する。だが、全ての生物を人間大の大きさにそろえれば…カブトムシやゴキブリより更に上____自重の100倍近い物体を持ち上げる生物がいる…蟻である。

南米にグンタイアリという蟻がいる。その行列に踏み込んだ生き物は蛇であろうとネズミであろうと集団で襲い掛かり食い殺すという非常に獰猛な蟻であり、地元の人間の間でもグンタイアリの集団と出くわすのは危険と言われている。

だが、そのグンタイアリの行列が唯一避けて通る昆虫がいる___

「パラポネラ」

それが「最強の蟻」にして「最強の昆虫」

その獰猛さと一咬みでまるで銃で撃たれた様な痛みを与えることから、

弾丸アリと通称される

こんな風に人間が昆虫に変異するタイミングで、変異する昆虫の説明がされるのだ。

進化はまさに今起きている

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特殊な昆虫の力を手に入れた人間は、人間型に進化を遂げたゴキブリにも優勢に見えたが、人間と戦っていくうちにゴキブリは、人間が繰り出す技を使えるようになり、更に進化と遂げる。

読んでいたら「テラフォーマーズに出てくるゴキブリの進化ぱねぇwww」という感じだが、

1995年に、新聞等の印刷報道、文学、作曲に与えられる米国で最も権威ある賞ピュリッツァー賞を受賞し、あのダーウィンが進化論を発見するきっかけとなったフィンチという鳥について書かれた『フィンチの嘴』によると、「生物の進化とは、遠い過去の出来事や絵空事ではなく、現在も目にする事ができる事実である」と言う。

どういうことかと簡単に言うと、

例えば、干ばつがあった年は、干ばつでも生きていける種になるよう進化し、大雨ばかりだった年は大雨に適応できる種になるよう進化するのである。

つまり、進化というと何世代に渡って徐々に変わっていくと思われがちだが、実は、生物はまさに現在も変化し、進化を続けているというわけである。

このテラフォーマーズに出てくるゴキブリがまさにそうであるように、だ。

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以前に『ねずみに支配された島』という本を紹介したことがある。

救済か、無差別殺戮か。『ネズミに支配された島』

2016.07.09

簡単に内容の説明をすると、島に人間によって持ち込まれたネズミが、島の生物を食い荒らし過ぎて多数の動物が絶滅の危機にある。そんなネズミを殲滅しようと動き出した人達のノンフィクション物語なのだが、テラフォーマーズを読んでいて、『ねずみに支配された島』を読んでいて感じた違和感と同じものを感じた。

人間たちが連れてきたにも関わらず、いざ問題が起こると駆除するというなんとも自分勝手な話で、絶滅に向かっている動物にしてみたら「救済」かもしれないが、ネズミにとってみればただの「殺戮」なのだ。

テラフォーマーズに出てくるゴキブリもそうだ。人間の勝手な人類火星移住計画によってばら撒かれたゴキブリが、いざ手に負えなくなると駆除するという、なんとも自分勝手な話。

SF漫画なのでここまで考える必要はないが、ぜひこれを機にいろんな生物が出てくるテラフォーマーズと、昨日紹介した『生命はなぜ生まれたのか』や今週紹介した(今週は「生物の進化を学んで「ヒト」を知る」というテーマで7冊紹介している)進化や生物についての本を合わせて読んでみることをオススメする。深海や生物、地球外生命、そして進化について知るいいきっかけになるはずだ。

今日のポイント

  1. 進化はまさに今起きている。
  2. 救済か殺戮。物事は両面で考える。

子どもの憧れ、大人の自由研究『カブトムシとクワガタの最新科学』

2016.09.07

動物の武器はなぜ巨大化していったのか『動物たちの武器』

2016.09.06

テラフォーマーズ 1

  • 著者:貴家 悠 (著), 橘 賢一 (イラスト)
  • 出版社:集英社
  • 発売日:2012/4/19

モデルプロフィール

nakayama_profile
  • 名前:中山美織
  • 生年月日: 1993/12/13
  • 出身地:東京都
  • 職業:早稲田大学
  • 受賞歴:ミス理系2013特別賞
  • 趣味:アニメ、映画鑑賞、一人旅
  • 最近の悩み:実験に飽きた
  • Twitter:@miori_micharyo
  • Instagram:@miori_micharyo

(カメラマン・Rimi Sakamoto/個人サイト・http://www.rimisakamoto.net/

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WRITERこの記事を書いた人

森井 悠太

「本to美女」副編集長。 1990年生まれ。慶應卒。一浪、一留、一休学と余すことなく学生生活を送る。2016年1月から株式会社SENSATIONにジョイン。 芸能事務所のスカウトマンを経験。渋谷でNo.1スカウトマンになれた経験を書き、第10回出版甲子園で準グランプリを受賞。モラトリアム症候群で、某大手IT企業の内定を入社ギリギリで辞退。結果、ニートとなる。その後、銀座で会員制のバーテンダーを経て、「本to美女」に参画。 キャッチコピーはアクティブなヒキコモリ。生粋のHONZ被害者でもある。