子どもの憧れ、大人の自由研究『カブトムシとクワガタの最新科学』

カブトムシとクワガタの最新科学

  • 著者:本郷儀人
  • 出版社:メディアファクトリー
  • 発売日:2012/6/29

 

本日紹介する一冊は『カブトムシとクワガタの最新科学』

少年の憧れの生き物、カブトムシ。

僕もよく子どもの頃、森へカブトムシ採りに行っていた。子どもの頃はすごい好きだったのに、大人になってからさっぱり!という方も多いのではないだろうか。

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本書は、そんな人にこそ読んでほしい一冊。少年の頃に慣れ親しんだ昆虫の生態や行動を進化論でこんな風に説明できるんだと思わず釘付けになった。大人が楽しむ自由研究の本とはまさにこのことだ。

少年の憧れ、カブトムシは、他の虫と比べてかなり研究が遅れている。実のところ、その生態や行動は、まだまだ知られていないことだらけ。

日本では人気のカブトムシだが、特に西欧では、まったくと言っていいほど人々に知られていない。理由は単純で、彼らの身近なところでは生活していないからだ。

海外の生物学者が研究対象にする甲虫は、ダイコクコガネなど「糞虫」と呼ばれる昆虫がほとんど。なので西洋人に日本のカブトムシやクワガタを見せると、「エキゾチックだ!」と喜ばれると著者は言う。

日本人にとって誰もが知っている昆虫が、西洋人には珍しい存在なのだ。

なぜカブトムシのメスは角が生えていないのか?

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 子ども頃、カブトムシのメスはなぜ角が生えていないんだろうかと思っていた。

雌雄で異なった姿形に進化することを、生物学の用語で「性選択」と呼ぶ。カブトムシ以外にも、立派な角を持つシカの多くはメスに角が生えない。オスのクジャクは長くて美しい羽をしているが、メスのクジャクはかなり地味な色をしている。雌雄で形質が違う生き物は自然界に多く存在している。

ではなぜ雌雄で異なるのか。

その要因は繁殖にある。基本的に同じものを食べ、同じ環境に棲む中で唯一オスとメスが根本的に異なる行動をとるのが、繁殖する相手を見つけるとき。

自然界では、オスがメスに対して求愛行動をとったり、メスをめぐって激しい争いをするが、メスがオスに対して気を引くような行動をとったり、オスの取り合いでメスが喧嘩することはほとんどないのである。

これは繁殖相手をめぐる競争でオス・メス間に差がある理由は、生殖にかかるコストが両者で違っているからと言われている。

オスは同性と闘うべく武器を大きく進化させてきたが、メスはオスの取り合いで喧嘩することはほとんどないので、わざわざ大きな武器も華やかさも必要がないのである。 

交尾の後、オスの態度は豹変し……

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 カブトムシの交尾は30分ほどかかりる。そのため交尾中に別のオスがやってきて木からメスもろとも突き飛ばされたりすること多々あるそうだ。しかし、たとえ数メートル下の地上に落下し、かなり衝撃を受けたとしてもまったくメスを放そうとしないのである。

これはカブトムシのオスがどれだけ1回の交尾の価値が大きいかを暗に示しているのかもしれないと著者は言う。なんせオス同士の激しい闘争行動に勝利し、ようやくメスと結ばれたわけなので。

しかし、その後オスの態度は豹変する。オスは交尾器をメスから抜き、両者は体を離す。そして離すやいなや、オスはすぐさま角をメスに突き立てて突進し、餌場から「邪魔だ、どけ!もうお前に用はない!」と言わんばかりに追っ払うのだ。

しかし、オスによる追い出し行動には生物学的にきちんとした意味がある。

オスは子孫を残すコストが小さくて済むのだから、できるだけ多くのメスと交尾するのが、自分の遺伝子を残すうえで有利だ。オスは一匹のメスとの交尾が成功したならば、すぐさま次の新しいメスとの交尾を欲する。

カブトムシの出会いの場は、樹液の出る木しかない。カブトムシのオスはメスを個体識別できないと思われるので、交尾後も同じメスが出会いの場に留まっていたらまぎらわしくて邪魔なのである。

こうして自分の精子を与える機会を少しでも増やすために、メスを餌場から排除する。交尾後、オスがメスに乱暴な態度をとるのは、オスの立場からすると非常に理に適っているのだ。

このようにカブトムシの喧嘩、交尾での行動などその背後に粛然と進化の歯車が回っているのである。もっと早く知りたかった、子どもの頃に知っていればカブトムシ採りでまた違った見え方が生まれ、さらに楽しめただろうにと思うが、大人になった今だからこそ読みたい一冊だ。大人が楽しむ自由研究だと思って読んでいただきたい。

今日のポイント

  1. カブトムシは、実は他の虫と比べてかなり研究が遅れている。
  2. オスは同性と闘うべく武器を大きく進化させてきたが、メスはオスの取り合いで喧嘩することはほとんどないので、わざわざ大きな武器も華やかさも必要がない。
  3. 雌雄で異なった姿形に進化することを「性選択」と言う。

カブトムシとクワガタの最新科学

  • 著者:本郷儀人
  • 出版社:メディアファクトリー
  • 発売日:2012/6/29

モデルプロフィール

sugiyama_profile
  • 名前:杉山りり
  • 生年月日:1993/6/24
  • 出身地:神奈川県
  • 職業:青山学院大学
  • 趣味:ショッピング
  • 最近の悩み:夏休みではしゃぎすぎて、夜更かししがちなこと
  • Instagram:@riryz624

(カメラマン・Rimi Sakamoto/個人サイト・http://www.rimisakamoto.net/

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WRITERこの記事を書いた人

森井 悠太

「本to美女」副編集長。 1990年生まれ。慶應卒。一浪、一留、一休学と余すことなく学生生活を送る。2016年1月から株式会社SENSATIONにジョイン。 芸能事務所のスカウトマンを経験。渋谷でNo.1スカウトマンになれた経験を書き、第10回出版甲子園で準グランプリを受賞。モラトリアム症候群で、某大手IT企業の内定を入社ギリギリで辞退。結果、ニートとなる。その後、銀座で会員制のバーテンダーを経て、「本to美女」に参画。 キャッチコピーはアクティブなヒキコモリ。生粋のHONZ被害者でもある。