動物の武器はなぜ巨大化していったのか『動物たちの武器』

動物たちの武器

  • 著者:ダグラス・J・エムレン
  • 出版社:エクスナレッジ
  • 発売日:2015/6/24

 

本書は動物たちの大きな武器に魅了され、取り憑かれた新進気鋭の生物学者による、生物の進化の謎に迫るポピュラーサイエンス本だ。 

サーベルタイガーの牙は、ヘラクレスオオカブトの角は、シオマネキ(カニ)のハサミは、ヘラジカの枝角は、なぜあんなにも自分の体と不相応なほどの大きな武器を持っているのか。

著者、ダグラス・J・エムレンは、動物たちの武器の巨大化が始まる「謎」を解き明かしていく。

また動物の武器の進化の過程と、人類の武器の歴史が驚くほど酷似していることに気づき、その比較も大変興味深い考察をする。

サーベルタイガーの牙の秘密

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 私たちは無意識に大きな武器を―例えばシカの角―、求めているのかもしれない。

3万年以上前に洞窟の壁に描かれた人類最初期の壁画にはすでに、シカの枝角、マストドンの湾曲した牙、サイやバッファローの角が見られていたそうだ。

ちなみに現在ではこうした角が、企業のブランド戦略にも利用されている。

シングルモルト・スコッチウィスキーのグレンフィディックやダルモア、自動車のポルシェ、ファッションブランドのアバクロetc、角をモチーフにしたロゴを使っている企業は多数ある。

なぜ私たちは角に惹かれるのか。

それはやはり大きいからだ。ではなぜ大きくなっていくのか。

本書によれば、武器が巨大化する理由はいくつかあるが、獲物が近くに来るのをじっと待つタイプ、いわば待ち伏せ型の捕食動物は、ほかの捕食動物よりもはるかに巨大な武器を持つ方向へ進化すると言う。

例えば、サーベルタイガーは、待ち伏せ型の捕食動物である。

木の枝から飛び降りて、無防備な獲物の首に犬歯を突き刺す。このタイプの捕食動物は、獲物を追いかけて捕まえることはしない。その代わり、草陰に隠れるハンターのように風景に溶け込み、じっとしたまま、獲物が近くにくるのを待つ。

不幸な獲物が通りかかったら隠れ場所から突進し、あごで噛み付き、瞬時で相手の行動能力を奪ってしまう。

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カマキリもほとんどの種が待ち伏せ型である。

長い湾曲したトゲのある超大型の前肢を持っているのはそのためだ。

カマキリの初期種はもっと痩せており、地面を這いまわり、獲物を追いかけることもあった。しかし、次第にカマキリはこの祖先から待ち伏せ型へと特化していく。

移動能力を高める淘汰の力は弱まり、より遠くの獲物を確実に捕らえられるように前肢がどんどん大きくなっていった。

この待ち伏せ型の捕食動物が狩りに成功するかどうかは、武器を素早く繰り出し、即座に獲物の行動能力を奪えるかどうかだ。

つまり、狩りの成否を決めるのは、動物全体の移動速度ではない。

本書によると、武器の大きさと移動能力はトレードオフの関係にある。

そのため待ち伏せ型の捕食動物は、移動能力自体は劣るが、その分武器が巨大化していったのである。通常なら武器の巨大化を抑える淘汰の力が緩和され、瞬時の攻撃に適した方向へ淘汰が進むというわけだ。

終わりなき巨大化への道

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また異性をめぐる争いに勝つために武器は巨大化していく。

例えば、カブトムシ。

どのオスの角も長さも1.5センチメートル前後だったとする。この社会的環境においては、取り立てて目立つオスはほとんどいない。だがそこへ、角の成長を促進する変異が現れ、角の長さが2センチメートルの個体が登場したとしよう。このオスは頻繁に戦いに勝ち、かなりの割合でメスを獲得し、同類(2センチメートルの角を持つ子)を一方的に増やしていく。

こうして数十世代のうちに個体群全体が変化する。性淘汰により進化し、個体群全体の平均的に角の長さが大きくなっていくのである。

性淘汰により個体群は、一方向へ終わりなき変化の道を突き進む。生物界に見られる途方もなく大きな武器がそこまで巨大化したのは、主にこうした生殖をめぐる争いが原因であった。

ここで紹介した以外にも武器を巨大化させる理由はいくつもある。

本書を読めば、あの生物の武器はそういう理由で付いていたのかと腑に落ちる。生物の進化の過程に魅了されること間違いなしだ。

こんなお悩みを解決!

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  • 好きな子にどうすれば振り向いてもらえますか……?
    →それこそこの生物の性淘汰から学んでみては。相手にない自分だけの武器をもっと磨いてみるべし!やれることはまだまだあるぞ!

 

動物たちの武器

  • 著者:ダグラス・J・エムレン
  • 出版社:エクスナレッジ
  • 発売日:2015/6/24

 

モデルプロフィール

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  • 名前:北風裕美
  • 生年月日:1996/1/20
  • 出身地:東京都
  • 職業:学習院女子大学
  • 出演歴:Legally Blonde主演
  • 趣味:ミュージカル
  • 最近の悩み:将来のこと

(カメラマン・伊藤広将)

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WRITERこの記事を書いた人

森井 悠太

「本to美女」副編集長。 1990年生まれ。慶應卒。一浪、一留、一休学と余すことなく学生生活を送る。2016年1月から株式会社SENSATIONにジョイン。 芸能事務所のスカウトマンを経験。渋谷でNo.1スカウトマンになれた経験を書き、第10回出版甲子園で準グランプリを受賞。モラトリアム症候群で、某大手IT企業の内定を入社ギリギリで辞退。結果、ニートとなる。その後、銀座で会員制のバーテンダーを経て、「本to美女」に参画。 キャッチコピーはアクティブなヒキコモリ。生粋のHONZ被害者でもある。