人に言えない恋愛と選択 『不自由な心』

不自由な心

  • 著者:白石 一文
  • 出版社:角川書店
  • 発売日:2004/4

 

人には言えない恋愛と選択

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雲ひとつない晴天なのに、昼からの降水確率は異様に高く仕方なく傘を持って家を出る。こういう日に限ってやはり雨は降らないものだ。それなのに、うっかりと電車の中に傘を忘れた日に限って、ひどい夕立に打たれる。タイミングとは妙なものだ。こちらの気持ちを全く組んではくれない。
人生におけるタイミングもまるで夕立のように気まぐれで、ひとつ違うだけで歩む道は全く違うものとなる。

「不自由な心」は、5編からなる作品集だ。それぞれの主人公が働き盛りのサラリーマンで、人には言えない不倫をしている。 小説だからこそ味わえる、不倫に揺れる心と選択。どういう選択が人として正しいものなのか、考えさせられる物語ばかりです。

「好き」を貫くということ

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最初の物語「天気雨」の主人公は大手メーカーに勤める野島。彼には綺麗な奥さんともうすぐ中学生になる娘がいる。一見幸せそうなどこにでもいる家族。しかし彼は同じ会社の秘書である恵理と不倫関係にある。さらに恵理は以前、取引先の部長である渡辺とも不倫関係にあった。

渡辺は自身が病気をしたことを機に、人生の残りを意識し始めるようになる。そして、自分の妻子と離婚し、残りの余生を恵理と暮らすという決断を下した。そう、恵理に結婚を迫ったのだ。その事がある日、野島の耳に入る。

野島は出世ルートを歩み、どちらも大切にする道を選ぼうとしていたのだが……
物語だからこそ許される恋愛話だが、好きを貫くというのはいささか大変なことなんだと感じる物語。好きという気持ちをどれだけ賭けても返ってくるのか分からない駆け引きは、大人になっても続いていく。この物語の最後の1ページは、野島と恵理の会話で終わる。どんな気持ちで野島は恵理に言葉をかけたのだろうか。私はそんなことを考えた。

3作品目の「夢の空」も働き盛りのサラリーマン、大木が主人公である。大木は福岡出張に来ていた。出張最後の夜にかつての不倫相手だった金親に会う。二人は一緒になることを考えていたほど、深く愛し合っていた仲だった。しかし大木の息子が病気を患ってしまい、二人の恋は思うようには進まなくなってしまった。物語の中では、「どんなに好き合っていても、一緒になれない。そんな恋もあるんだね。」と金親が呟くシーンが印象的に描かれている。

福岡から東京へ帰る飛行機の中で、大木は金親と出会ってからの恋愛をゆっくりと振り返る。時間軸が刻まれているページが読み手の気持ちを少しずつ焦らせてくる。そしてまるでひとつずつ歯車が狂っていった二人の恋愛のように飛行機は…

恋愛に正しさがあるとしたら、不倫は間違った正しさではあると思う。だからこそ胸をしめつけられる、やりどころのない切なさが作中には漂っている。

男性に読んで欲しい恋愛小説

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恋愛小説と言えば、女性目線で書かれた恋物語が多い。女性特有の切なさや甘さに、敬遠する男性も多いのではないだろうか。しかしこの物語は男性が書いた男性目線の恋愛小説である。だからこそ、重たくなりがちな不倫や命といった題材を淡々と扱えているような気がする。また心理描写や情景描写にも作者の色が濃く反映されているのも魅力のひとつである。

恋愛小説を避けてきた男性にこそ、ぜひ一度手に取ってもらいたい。人を愛する、という気持ちが共感できるのではないだろうか。そして、女性の私では味わえない視点でこの物語を読みといて欲しいなぁと思うのです。

不自由な心

  • 著者:白石 一文
  • 出版社:角川書店
  • 発売日:2004/4

モデルプロフィール

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  • 名前:内海友梨子
  • 生年月日:1993/05/03
  • 出身地:宮城県
  • 職業:会社員
  • 受賞歴:平成25年宮城縣護國神社青葉城ミス福娘
  • 趣味/一言:食品サンプル作り もの作りが大好きです!
  • Instagram: yuriko0503

(カメラマン:伊藤広将)

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