ただただ純粋に人を好きになったことはありますか?『すべて真夜中の恋人たち』

すべて真夜中の恋人たち

  • 著者:川上 未映子
  • 出版社:講談社
  • 発売日:2011/10/13

ただただ純粋に人を好きになったことはありますか?

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真夜中の空気。面倒なことや上手くいかないこと、忘れてしまいたいことがごちゃごちゃになって、全部放りだせたら良いのにそうもいかない。それなのに、少しだけこんな矛盾ばかりの向かう先すら分からない感情が許された気がする、真夜中の空気。その空気感がこの作品には漂っている。
物話は、周りに流されながら生きてきた地味でぱっとしない主人公冬子を中心として進んでいく。仕事ばかりで恋愛から遠ざかっていた冬子はある日、自分よりずいぶん年上の三束に出会い、恋をする。

恋をする、という表現が正しいのかさえ分からない、今までの自分が自分でなくなる初めての感覚に冬子は戸惑う。生活の節々に好きな人を感じたい。好きな人の好きなものを知りたい。もしも、どこかで偶然出会えたら。芽生えた恋心の純粋さと歯がゆさに、女性ならきっと共感するだろう。

それと同時に、こんなにも純粋に素直に人を好きになれたことはあるだろうか、そんな想いにかせられる。冬子の恋の行方は…そんなことよりも、冬子の恋心をじっくりと何度もなぞりたくなる、恋を始めたばかりだったあの頃の感覚で。

物語に登場する女性に注目!

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女性の恋愛や生き方に正解なんてない。全部が痛々しいほど、今を生きる女性の正論であり、正解なんだろう。この物語に登場する女性像は、全員が本当に等身大である。冬子の会社の先輩である聖は、冬子とは正反対の性格で誰にでもはっきりものを言えるタイプで派手で明るく、仕事もテキパキとこなすキャリアウーマンである。

恋愛面では、人を好きという感情が分からないし、面倒だからと恋人は作らない。また冬子の同級生は結婚をして子供が居ながらも、実のところ夫婦仲は上手くいっていないと不満を漏らす。一見幸せそうに見える女性の裏側に潜むナイーブな感情が、上手く取り上げられている。10代や20代の恋愛ではなく、歳を重ねた男女関係だからこそ、甘い蜜だけではない。どの立場のどんな決断もきっと、正しい。
自分ならどうするだろうか、そう考えながら読んでみるのも楽しいかもしれない。

自分で自分の気持ちに決断を下すということ

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この物語の核となるのは「自分で自分の気持ちに決断を下す」ということはどういうことなのか。それが物語の中の冬子の変化を通じて感じることが出来るような気がする。周りに流されても、それなりに生きていくことはできる。自分の気持ちに蓋をしたり、見てみぬふりをしても問題はないだろう。

しかしちゃんと自分の想いに向き合うということは、これから先の自分の未来を自分で決められるということである。より良い未来を選ぶ選択肢を自分が一番分かっているはずなのだ。果たして冬子は、どんな決断を下したのだろうか。最後の1ページに描かれた彼女の感情がすべてではないだろうか。

今宵も真夜中を越える、越えなければならない、すべての女性に読んでもらいたい一冊です。

すべて真夜中の恋人たち

  • 著者:川上 未映子
  • 出版社:講談社
  • 発売日:2011/10/13

モデルプロフィール

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  • 名前:橋本莉乃
  • 生年月日:1994/7/18
  • 出身地:北海道
  • 職業:大学生、声優
  • 趣味:アニメを見ること、ラムネを食べること 
  • 最近の悩み:卒論が終わらない
  • Twitter:@hashimotorinoo
  • Instagram:@hashimotorino

(カメラマン:伊藤広将)

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