『何者』就活が原因で友だちを失う?大人には分からない就活生のリアルな心情!

就活How to本には載っていない就活生のリアルというものが存在します。例えば、説明会で隣の席で仲良くなってそのまま飲みに行ったり、同じ業種を狙うから情報交換という名目でLINEのグループが出来てそこで筆記試験の内容や、面接官の人数や次回の面接の日程を人より先に聞くなどの情報合戦があります。

私自身、昨年就活をしていたのでよく友だちとESをお互いに見せあってダメだしをしたり、時には試験に落ちた愚痴を聞いてもらったり。

就活というのは、ある種経験した人にしか分からない辛さというのがあり、両親や学校の先生の大人には分からない就活生の世界が存在します。就活生同士の友だちは、情報面だけでなく、同じ悩みを抱えた同士として本当に救われます。ですが、就活をきっかけにその大切な友人関係が壊れてしまうことも・・・。

今回は最年少直木賞を受賞した、朝井リョウさんの『何者』を読んで、就活では必ず一度は悩む友人問題についてご紹介します。

あなたの周りにもきっとある!SNSで起きる就活あるある

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就活の情報共有ということで仲良くなった、主人公・拓斗と友人・光太郎、ヒロインの瑞月と同じ学生の理香と隆良の5人。ボランティアや留学などを経験したリア充な子や、音楽が好きでサークルにハマって留年をしてしまった少し残念な就活生、自由な時間を大切にしたいからといってあまり積極的に就活をしない人等、同じグループでも全然違う者同士。

はじめは、一緒にWEBテストの勉強をしたり、情報を交換し合う、どこにでもいる就活生の友だちグループ。ですが、互いの履歴書に書かれている海外留学の経験や、サークルの部長、難関企業のインターンシップ参加の肩書の数々を見て、仲間ではありながらもライバルであることを認識し、徐々に嫉妬や焦燥感に駆られ距離が離れていきます。

この『何者』で最も面白いのが、本の中で登場するTwitterを通して客観的に本人たちの心の声が見えてくるところ。

RICA  KOBAYAKA@rica_0927 1時間前

今日もキャリアセンターでESを見てもらってから面接の練習。色んな人からアドバイスをもらえて、ヤル気アップ!このあとは瑞月たちと集まって就活会議、仲間がいるって心強い!

宮本隆良@tajayoshi_miyamoto  45分前

いま俺の周りにいる人々は地図を失っているように見える。大きな波に呑みこまれて、本来の目的を忘れている。がんばるがんばるって、何のために?誰のために?目的がブレた状態でがんばりすぎたって、そんなの意味がない。黒やグレーのスーツの中に、水色のシャツは少々目立ってしまった。

ついさっきまで一緒に就活の情報交換をした仲間が、Twitterにまるで自分に向けての悪口を書いているのです。他の友人たちも、「Twitterに頑張るとか言ってるけどWEBテストにすら受かってないじゃん」と陰で罵られているシーン等、怖いけれど、リアルにありそうなシチュエーション。誰も声を大にしては言わないけれど、みんな心の中ではどこか思っていることを語ってくれるような小説です。

主人公はあなたかもしれない。

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主人公の拓斗は、周りの状況や人を見ながらつねに客観的な意見を持ち、読者の気持ちを代弁してくれます。

理香「やっぱり語学力生かせるとこに行きたいかな。あと、入社したら即戦力としてバリバリ働きたいかも」即戦力かーと、光太郎も赤らんだ顔で言う。「俺、そんなにいきなり即戦力になる自信ねぇなあ」「私、忙しいのとか結構好きなタイプなんだ」理香さんも光太郎に負けじと顔を赤らめる。相手の気分をよくさせつつも決してわざとらしくない光太郎の一言は、こういうシチュエーションではとてもよく作用する。

主人公はこんな風につねに周りとの距離感をとって人間観察をしています。ですが、後半40ページから、語り手であり、読者と最も近い距離に居た主人公の本当の心の闇が現れます。

「拓斗君は自分のこと観察者だと思ってるんだよ。そうしていればいつか、今の自分じゃない何者かになれるって思ってるんでしょ」「ほんとは、誰のことも応援してないんだよ。(省略)拓斗くんは、みんな、自分よりは不幸であって欲しいって思ってる。その上で自分は観察者でありたいと思ってる」

友人に言われたこのセリフ。本をずっと読んでいて、拓斗に気持ちを重ねていた読者としては、まるで自分に言われているかのような錯覚に陥ります。

頭では大切なことだと持っていても、周りにどう思われるか、落ちたら恥ずかしいからと言った理由で行動に移せない主人公の気持ちは、周りからの視線が気になって、やりたいことが行動に移せなかったという経験をしたことがある人なら、このセリフがきっと胸に刺さります。

『何者』は小説の世界だけではない、私たちのリアルである。

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就活を通して私たちは何になりたいのか。子供のころ描いていたお花屋さんや、アイドル、スポーツ選手になる夢は知らず知らずの内に忘れて、気がついた時には22歳で、ある日突然今後の人生を決めなければない就活が始まります。

小さな頃の夢とは少し違っても、就活がうまくいけば、きっと「何者」かになることができると信じて、そのために泥臭くて、みっともなくても頑張り続ける就活生の気持ちが痛いくらいに描かれています。

「笑われることだってわかってるくせに、そんなことしているのは何でだと思う?」「それ以外に私に残された道はないからだよ」「ダサくてカッコ悪い自分を理想の自分に近づけることしか、もう私にできることはないんだよ」

みんな同じ濃紺のスーツを着て、面接官の記憶に残るために、まるで自分がすごく優秀な人物であるかのように振る舞い、時にはウソだってつきます。そんな泥臭く頑張っている友人をみると「あんなに頑張っても落ちてるくせに」「よく、あんながっついてるみたいな恥ずかしいことできるよね」と思う時があるかもしれません。

特に就活中は、自分よりダメだと思っていた友人が先に内定貰うと、悔しかったり、「あんな会社じゃあ」と文句を言いたくなります。私も一緒に就活をしていた友人が先に内定をもらった時に、素直に「おめでとう」と言えず、「あんな田舎の会社、私は受けるのだって無理」なんて失礼なことを思っていて、主人公の拓斗の気持ちがすごく分かりました。

それでも、どんなにカッコ悪くたって、周りからバカにされても、自分の夢を叶えるために努力することは大切だと教えてくれます。ラストには「ダサくたっていいんだよ」というエールをくれる小説です。

あなたの悩みを解決する3ヶ条

  1. 就活を通して友人との関係性がハッキリ見えてくる
  2. 就活の時の友人は、ライバルであり、そして仲間である。周りは気にせず、自分は自分と割り切って就活をすること
  3.  どんなに格好悪くても、努力することは決して恥ずかしいことではない

何者

  • 著者:朝井リョウ
  • 出版日:2012/11/30
  • 出版社:新潮社

モデルプロフィール

yuri_profile
  • 名前:ゆり
  • 職業:キチョハナカンシャ/就活生
  • Twitter:@kichohana_yuri

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WRITERこの記事を書いた人

山下未帆

小学生5年生の時に、家族と1年間オーストラリアでバックパッカーをして放浪の旅をして過ごす。父の仕事は報道関係で、取材中ソマリアの海賊に銃で撃たれた話などを聞いて、自分も普通のOLでは満足できず記者を目指す。好きな本と漫画は『トッカン特別国税徴収官』、『闇金ウシジマくん』。資格集めが趣味で、化粧品検定1級、アイスマニア検定などを保持するも役に立たないものが多い。