生きることはひりひりと痛いけどいつかは朝が来る『夜空はいつでも最高密度の青色だ』

 

詩を読んだことはありますか?

 

突然ですが、詩を読んだことはありますか?「読んだことないな」という人がほとんどではないでしょうか。教科書で宮沢賢治や中原中也、谷川俊太郎くらいは見たことがある、知っているという人は多いかもしれません。けれども、何かの曲を聞いて「この歌詞いいよね」と話したり、ラップを聞いて「このリリックすごい」と思ったりしたことはあるはず。それはならば、きっと詩は近くにあります。みなさんのこころにぐっと響く詩集をご紹介します。

夜空はいつでも最高密度の青色だ

  • 著者:最果タヒ
  • 出版社:リトル・モア
  • 発売日:2016/4/22

異例!詩集が映画化される

最果(さいはて)タヒさんの詩集『夜空はいつでも最高密度の青色だ』が、映画化されました。監督・脚本は石井裕也さん、出演は石橋静河さん、池松壮亮ほか。書店で売られている詩集のカバーは映画のシーンを切り取った写真をあしらったものに変わっています。詩集には数編の詩が載っていて、ぼんやりとした一貫性はありますが、それ自体がストーリーではありません。これが映画化されるのは異例中の異例といえます。都会の片隅で孤独を抱えて生きる現代の若い男女を追った作品になっているようです。

「生」と「死」をつねに背負う

タイトルに「青色」が入っていることからもわかるように、この詩集には「青」の気配が漂っています。夜空が青いことはわかりますし、反対に昼間の空も当然青いのです。「地球は青かった」という有名なことばもありますし、わたしたちを取り巻く世界の多くは「青」だといえます。

この詩集には「生」や「死」をどこかに感じさせる表現がよく登場します。そして、よくよく読むとそれ自体が青色なのではないかと思わされます。

きみが、あの子をかわいいと言う根拠が、ただの劣等感であればいいのに。

死んでしまったものでもきれいな糸になったりする、絹と蚕。私がさみしいとき、私からなにかが死んでしまっても、汚されてもいいから、だれかにとって意味のあるものが抽出されていけばもうなにも気にしなかった。生命感があふれるひとほど、フィクションに見える感覚。ゆめかわいいは、死後みたいな、色。今も、地上のどこかでは雨が降り注いで、瞳のいくつかは閉じられている。死ぬと、いえば簡単に、孤独を手に入れられていた。君をなでる透明の風に、いまさら、なりたくなんてない。

(「ゆめかわいいは死後の色」)

ここでは「蚕」と蚕が吐いた糸から作られる絹糸までが生きることや死ぬことの象徴のひとつとして捉えられています。そしてきれいな糸になるためには、生きるのではなく、死ぬほうがよいのだということが語られ、若者の切なさがじっとしみこんでくるようなのです。

大人になることのさびしさとか人との付き合い方とか

昨今「陽キャ」「陰キャ」ということばが登場して、普段の生活で人々はなんとなくカテゴライズされたり、自分から好みの枠の中へ入っていったりする傾向があるように思えます。「コミュ障」ということばが使われるようになってからもずいぶん経ちます。

友人や恋人との付き合い方は難しく、困難を極めます。「いったい、いつからそうなってしまったのかな」――そんなことを考えることもあるでしょう。そうした気持ちも詩には表れています。

きみが見ている日差しが、夕日であろうが朝日であろうが、

それが君のためだけに注がれているものだと信じていいよって、

言えるひとになりたかった。

自分がただの人間だって、

思い知らなくちゃいけないなんて、誰が決めたの。

宇宙になったつもりで、すべてを信じて、

わたしのこと好きでも嫌いでもない、

埃を見る目で見てくれてよかった。

きみにやさしくない人を、きみが無視する。

それだけで春がきたらいいのにね。

 

(「プリズムの詩」)

 

「自分がただの人間だって、/思い知らなくちゃいけないなんて、誰が決めたの。」

大人になると、自分がただの人間だと思わねばならないシーンがあります。アイドルになりたかったり、仮面ライダーになりたかったり、ヒーローになりたかった子どもたちは、それでも夢を持って前に進んでもらいたい。

世の中は切なくて理不尽で、みんな弱いから「死のうかな」とか本気でないのに思ってしまいがちだけれど、それでも生きていく世界。そんな物語が詰まった一冊です。

夜空はいつでも最高密度の青色だ

  • 著者:最果タヒ
  • 出版社:リトル・モア
  • 発売日:2016/4/22

こんな悩みを解決!

なんとなくゆううつな時にこの本を開いて読んでみてください。同じような痛みを抱えているだれかの姿が現れて、ひとりじゃないんだと楽になれると思います。

モデルプロフィール

  • 名前:石井晴菜
  • 職業:金融業界
  • 出身:神奈川県横浜市
  • 趣味・一言:ゴルフすることにハマってます
  • 最近の悩み:ゆったりとした話し方を直したい
(カメラマン:伊藤広将)

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