青春ってなんだ?
高校生くらいのとき、どんな生活でしたか?まじめに勉強して、時々は友達と寄り道をするけれど、とくに「やんちゃ」をすることなくおとなしく過ごしていた人が多いのではないでしょうか。けれども、漫画やドラマに描かれるのは、高校生の大恋愛や、犯罪に巻き込まれたりする姿。「フィクションだから」と思って楽しむものの、ほんとうの自分たちの姿がそこにないことを感じたことはありませんか?
お話しの世界にあこがれて、ひたることでわたしたちは青春を疑似体験しようとします。多くの人は自分がその世界を享受することで満足しますが、ときどき自分でつくろうとする人たちがあらわれます。尾久守侑さんもそのひとり。詩集『国境とJK』は、現代詩で甘酸っぱい青春を追求しようとしています。
国境とJK
- 著者:尾久守侑
- 出版社:思潮社
- 発売日:2016/12/14
甘いアイドルみたいな詩を読みたい
アイドルブームはまだまだ続いていて、テレビやネットの動画で女の子たちが歌い踊る姿を目にすることが多いでしょう。多くは放課後の「わたし」と「ぼく」が主人公。尾久さんの「純情三角」という詩も、まさにそうした世界を描いています。
ひとりでみていたプラネタリウム
少しでも星を巻き戻せたら
十八歳の純情に
カッターナイフを押し当てて
選んだ色は
捨ててしまえたのに
かわいた部屋で目が覚めた
アスピリンをつめたい水でのみくだす
午後三時のバスルーム
ながい黒髪に
はさみをいれる、なんども
なんどもばらばらと、黒髪はおちて
ショートカットのわたしにも
近づいてくる朝
(お湯がわきました)
バスタブから響く妙に明るいメロディが
今朝は純情の壊れる音に聴こえた
■AR現代詩!?
タイトルにある「国境」と「JK」には、深い意味ないと考えたほうがよいでしょう。ここにある「国境」は戦争や平和に直接的につながるものではなく、ごくごく個人的な越えたい壁を表すものとしてとらえたほうがしっくりきます。
気温はたちまち上昇する
夏だ
シャツの袖口をまくった袖に
つめたいゆびが触れていて
それが誰のゆびか、知っている気がした
ポカリ、つくってきたよ
運動場のスピーカーからひびく声
ピッチャーのマウンドでぼくは
触れられたゆびに
何かを問いたかったけれども
あんなに明るい子だったのにね
こわいわね
おばさんたちの世間話だけが
すぐ横を通り過ぎて
いない人の話をしならんだ名ランド顔がいっせいに
色々に変な表情をして
秋になった
校庭に、色のないセーラー服が
いくつも脱ぎ捨てられていて
それに触ったら、どうなるかしれないと
よけながら校舎の入り口に歩いた
(「YUKI NO ASA」)
たとえばポケモンGO!をプレイするみたいに、高校の前に立ってスマホをかざしたら、こんな風景が登場するのではないだろうか。そんな、ありそうでなさそうな世界。紙の上のARと言ってもよいかもしれません。
■大人になればみんないっしょ
いちばんさいごには、「ヲタクになれなかった君たちへ」という詩のようなあとがきが置かれています。いまは精神科医になった尾久さんは、いまでも「ヲタク」(たぶんドルヲタ)だと自称します。
一方で、ともだちはみんなヲタクをやめてしまったということ。けれども、それは些細なことだと尾久さんはわかっているでしょう。ヲタクでいる尾久さんはアイドルの世界を表現するような詩集をつくりました。ヲタクになれなかったともだちも、また別の世界で活躍しているはず。大人になれば、みんな同じなのです。
国境という壁を越えることをJKという身代わりにたくしているようにみえて、尾久さんの等身大の心も詩のすべてに通底しています。それを探しながら、青春を追体験してみてはいかがでしょうか。
国境とJK
- 著者:尾久守侑
- 出版社:思潮社
- 発売日:2016/12/14
こんな悩みを解決!
勉強ばかりしていて暗い高校生活だったのが恥ずかしいと思ってしまった時、青春映画のようなこの本を読んで、疑似体験してみるとよいかもしれません。
モデルプロフィール

- 名前:Arly
- 生年月日:1991/4/1
- 出身地:三重県
- 職業:モデル
- 受賞歴:ミス三重大、ミス伊勢志摩
- 趣味:カラオケ、カメラ、写真、お買い物
- 最近の悩み:蚊によく喰われる
- Twitter:@ALICA9141
- Instagram:arly0401
- HP:metyion.wix.com/arly
- Blog:http://s.ameblo.jp/metty0401/
(カメラマン:伊藤広将)
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