こんなにおもしろい詩もあるのです
まず「ハニーシロップ・オン・ザ・ロード」の一節を紹介します。
ミツバチのすきっぷーーんぷんぷーんすきっぷーんぶーんすきっぷーーーーーんぷん粉ぷんぶぶぶんぷーんぶん文武ぶんぶんぶんぶんぶんぶぶ舞舞舞ぶいんぶいんぶいんぶんぶんおいしいミツバチぶん分ぶん分ぶぶぶぶ相応ミツバチ相応ぶんぶんミツバチぶぶぶぶぶぶミツバチぶぶぶついでにおならもぶーんぷーんぷんするミツバチ撫撫撫ミツバチ撫撫ミツバチ撫ミツバチなでミツバチなでなでなでかわいいミツバチのかわいいなでなでしたいミツバチのかわいいミツバチのだいじに思ってるミツバチのかわいがるだいじなミツバチのだいじなだいじなハチミツを。。。。。。。
びっくりしましたか?すこし文字がぎゅうぎゅうにつまっているので読みにくく感じたかもしれませんが、声に出して読んでみると、ミツバチの羽音とハチミツを奪おうとしているさまがユニークに描かれていることがわかります。これが本日紹介する、疋田龍之介の詩の世界です。
歯車vs丙午
- 著者:疋田龍之介
- 出版社:思潮社
- 発売日:2012/11
落語のエッセンスをふんだんに
突然ですが、落語を聞いたことがありますか?いま日本テレビの長寿番組「笑点」が再び盛り上がり、手塚治虫文化賞の新生賞にアニメ化もされた雲田はるこさんの「昭和元禄落語心中」が受賞するなど、落語は静かにブームとなっています。
疋田龍之介は、現在「笑福亭智丸」という名前で、落語家として活動しています。そんな背景もあってか、彼の詩は落語のエッセンスをちりばめたものになっています。長編の詩が多いので、一見読みづらいようにも感じるのですが、じっくり読めば新作落語を読んでいるようで、笑いがこみ上げます。また古典落語の影響を受けたものも多く見られます。「詩で笑えるの?」と思われるかもしれませんが、笑えるんです。
言葉遊びで心を軽くしよう
詩集に入っている詩は、タイトルも面白いものが多いです。たとえば「豆腐冥府」「犬でもできる。」「豆腐系譜」「百脚御殿」「剥がし剥がされ燈るのさ」とこんなかんじ。まさに言葉遊びの名手です。現代詩には重いものが割りと多いので、疋田さんの詩は貴重です。
あら、不可思議な摩訶ざわざら
義母にゆっくり、ざらら
ざわざらざっわーん
絶ちますよ、
枝垂れた触角、
ねっとりまわすよ、
湿った櫛の隙間を嗅がされても!
今なおこぼれる露も!
むせぶ嗚咽も!
(「剥がし剥がされ燈るのさ」)
こちらも音読をしてみてください。できれば少し速度をはやめに読むとよいでしょう。すると、マシンガンのように打ち出される言葉たちが不思議と心地よく思えてきます。
疋田さんの詩の特徴は「考えなくてよいこと」。考えなくても楽しい。心軽やかに、躍り始めませんか?(もしくは)心が軽くなり踊りだしたくなるはずです。
新作落語を詩として読む くすっと笑って午後は明るく
この詩集でいちばん小説的な1編「蕎麦道拷問」はほんとうにおもしろい1編です。
お蕎麦が大好きな人はいますぐおそばを食べたくなるし、アレルギーの人には「閲覧注意!」とよびかけたくなるほどに、お蕎麦が迫ってきます。お蕎麦が迫ってくると言うのもおかしな解説ですが、まさに迫ってくるのです。
嵐の後の連れてこられた極秘の空間/アレルギー性蕎麦粉飛び散る巨大工場/また理不尽な往復蕎麦ビンタが炸裂する/蕎麦でできた猿轡が味覚以外全て圧迫/しなやかな蕎麦の鞭はO脚に敏感だ/眼球を粉のみで覆う力技に続いて/舞踊する鋭い蕎麦の針…/膨れ上がる蕎麦の焔…/執拗な蕎麦の鉤爪…/こうやって何度繰り返したか/改めて蕎麦道拷問が再開される/同胞たちはすでに絶滅させられた/痛烈に美味しいことは認めるが/答えるべき情報はなにもない/本当になにが望みなんだ/もう蕎麦はやめてくれ……/頼むからこのくらいにしてくれ、
もし「なにかおもしろい話を」と求められたら、この詩集を持参して朗読してみてもよいかもしれません。ちょっと落ち込んだときや軽くなにか読みたいとき、マンガやラノベを読むのもひとつですが、この詩集も選択肢の一つとして考えてみてはいかがでしょうか。食感はかるいのに栄養素満点!そんな1冊です。
歯車vs丙午
- 著者:疋田龍之介
- 出版社:思潮社
- 発売日:2012/11
こんな悩みを解決!
くよくよしてしかたがない時、言葉遊びの世界に浸れば気分が爽快になって、新しい気持ちが生まれそうです。
モデルプロフィール

- 名前:千石菜摘
- 生年月日:1996/8/24
- 出身地:青森県
- 職業:フリーター
- 趣味・一言:ダンス、散歩、詩、読書/お芝居が好きです!
- 最近の悩み:チョコレートが辞められません。
- Insta:@sengoku34
- Twitter:@sougosuzukis
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