永遠の出口
- 著者:森 絵都
- 出版社:集英社
- 発売日:2006/2/17
今週は心がほっこり温かくなって、また、頑張ろう!と人生を前向きに歩けるような気持ちにさせてくれるような本をご紹介しております。
わたしの人生における好きな本のトップ50くらいの中からテーマに沿った本をピックアップしているのですが、今日ご紹介する『永遠の出口』は私が小学生のときに森絵都さんにはまるきっかけとなった小説です。
卒業などの節目をテーマにした、女の子の小学校~高校卒業までを書いている本書ですが、今回はその中の一つのエピソードであり本のタイトルにもなっている『永遠の出口』をご紹介します。
一年の終わりと始まりが近づいてくるこの季節は、自分を変えるチャンスがそこかしこに転がっている気がします。
本書の主人公・紀子の人生を垣間みることで、チャンスに繋がるものが人生にもたらされるかもしれません。
偶数じゃないとあぶれちゃう、そんなしょうもないことが大切だった小学生時代

みなさんはどんな小学生時代を過ごしましたか?
休み時間は校庭で遊んでいた元気いっぱいの子供?
それとも教室でおしゃべりやカードゲームを友だちとやっていた?
はたまた静かに本を読んでいた?
大人になるにつれ、コミュニティは増えて、自分の生きる場所を自分で選べるようになりますが、子供のときは「学校」がまるで世界の全てのように感じたものです。
主人公の紀子も、学校の中での自分の立ち位置や友人との関係に敏感な小学生でした。
紀子のグループにいた好恵は、割と平凡な女の子なのになぜか男子に人気がある子でした。紀子は大人になってからその人気の理由に気付いたけれど、(リアクションや言動が男の子のツボだった)、当時はキンキンやかましく、ヒマさえあれば男子にちょっかいを出すませがきだと思っていました。
グループのほかのメンバーも同様で、なんとなく好恵だけ浮いていたけれど、グループメンバーが奇数になることで、学内行事のペア組などが困難になることが目に見えていたので、同じグループで行動をともにしていたのです。
今ならしょうもないと思える事だけど、子供のときには人生の一大事のようなことが、みなさんにもありませんでしたか?
紀子にとっては、仲良しグループのメンバーの数はきっと、人生にとっての一大事だったのだと、そんなことが連想されます。
一年に一度の特別な日

私の幼少期は、住むエリアなのかコミュニティの問題なのかわかりませんが、お誕生日会がありませんでした。
でも紀子が生きている本の中の世界ではどうやらお誕生日会がとてもビッグイベントらしいということを読んでいて感じます。
好恵の去年の誕生日会、「お母さんが病気になったから」のひと言でお流れに。紀子含む仲良しメンバーはプレゼントを渡しただけでお茶を濁したけれど…去年がなかったからか、なんとなく今年もないものと思っていたら、好恵から今年の誕生会への誘いがあります。
紀子たちはちょっと違和感があるように感じはしましたが、誕生会という言葉が持つ輝きに心奪われ、違和感も忘れ、プレゼントを買いにいくことに。
そして来る当日。意気揚々とプレゼントを持参した紀子たちですが、通されたのは好恵の部屋で、お料理もお菓子も、ケーキですらも出てこず、家族も誰も挨拶にすら来ない。あれおかしいなと誰もが思っていましたが口にできずにいました。そんな時、好恵は彼女の母に呼ばれて席を外します。数分後戻ってきた好恵の目は赤く、みんなが動揺していると、好恵の母はこう告げたのです。
「うちはね、誕生会はやらないことになってるの。お姉ちゃんも、弟も。だから、好恵が何言ったか知らないけど、今日は帰ってね」と。
歓迎されるとばかり思っていたお誕生会で帰れと言われた事で、紀子たちには恥ずかしさや怒りが芽生えます。
そして、グループのリーダー格の春子を主導に、「お誕生会の恨みはお誕生会で返すべし」ということで、次からグループメンバーの誕生会に好恵は呼ばないことがグループ内で決まります。
しかし、それは紀子にとって最悪のタイミングでした。そう、次に誕生日がくるのは紀子だったのです。
グループ内で話し合った事だし…と、好恵以外をお誕生会に誘った紀子でしたが、ふとした瞬間に好恵が紀子にお誕生会に関して質問してこないかと毎日ヒヤヒヤしていました。
一生に一度の十歳の誕生日

紀子のお誕生会当日。家族が用意してくれた多くの料理と友達からもらうプレゼント。人生で一番幸せな日のはずなのに、今まで好恵に気づかれないようにとただひたすらに過ごしていた日々からの解放感があるだけの、後味の苦い誕生日となりました。
特別なことなんてなにもない。ケーキに蠟燭の火をともし、ハッピーバースデートゥーユーの合唱。みんなからプレゼントをもらい、ようやくご馳走にありつける。母から友人たちへ、プレゼントのお返しが配られる。好恵はそれすらもしてもらえなかった。一生に一度の十歳の誕生日。好恵はどんな思いで、十代の第一歩を踏み出したのでしょうか。
そして交わる二人の気持ち

誕生会が終わり、心に広がるやりきれなさと、疲労を抱えていると、姉が部屋にやってきます。
女の子からプレゼントを受け取ったと渡しにきてくれたのです。
紀子はそれが好恵だと気付き、彼女の家に向かいます。
このストーリーの紹介はここまで。
好恵と紀子はこの後一体、どんな言葉を交わすのでしょうか。
好恵と紀子が交わす言葉や描かれている感情を、ぜひ直接味わっていただきたいです。
小学生ながら、小学生だからこそ、自分の全てをかけて精一杯生きている、
二人の心の叫びや痛みや、喜びや嬉しさがまざまざと感じられる本作。
本書はほかにも9つのストーリーがあり、紀子の小学校、中学校、高校の様々な感情と彼女の成長が描かれています。
あまりにリアリティがあるので、森絵都さんのエッセイ?と思ってしまうほどです。
私が小学生のときに読んだ永遠の出口は、小学校の紀子に共感するもので、そして中学や高校の自分の未来を重ね合わせて想像するものでした。
社会人になり改めて読んだとき、小学校・中学校の時代の思い出がフラッシュバックしました。
それは輝ける思い出ばかりでは決してなく、だからこそあれらの経験を乗り越えていまの自分があるのだと思うと、
いまの試練なんて試練ですらないかも、という前向きな気持ちになりました。
過去の自分と重ね合わせて、過去の友達と重ねあわせて、自分の子供の未来と重ね合わせて。
そんな風に本書を読んでみたら、今までよりも世界が少し、愛おしく感じるかもしれません。
永遠の出口
- 著者:森 絵都
- 出版社:集英社
- 発売日:2006/2/17
モデルプロフィール

- 名前:水谷花那子
- 生年月日:1993/9/29
- 出身地:大阪府
- 職業:慶應義塾大学
- 受賞歴:週刊ゴルフダイジェストビューティークイーン2016
- 趣味:クラシックバレエ・スペイン語・ゴルフ
- 最近の悩み:学生生活が終わること
- Instagram:@kanakomizutani
- LINEスタンプ:https://store.line.me/stickershop/product/1324362
(カメラマン:伊藤広将)
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
最新情報をお届けします