父が遺したその言葉の意味は?背伸びしないありのままの登場人物に、きっと誰かに共感する 『星やどりの声』

星やどりの声

  • 著者:朝井 リョウ
  • 出版社:KADOKAWA/角川書店
  • 発売日:2014/6/20

 

一週間テーマを決めて本をおすすめしておりますが、今週は、自分自身もこの世界も強くも綺麗にもなりきれていないけれど、それでも前をむく勇気がもてるような小説を取り上げたいと思っています。

夏から秋に、そして冬に。少しずつ寒くなるこの季節は、からだも、心もバランスを崩しがち。そんなあなたに、ちょっとだけ心温まるようなストーリーをお届けします。

雨を受け止めるのが雨やどりっていうだろう。だから今にもおちてきそうな星の光を受け止めるための【星やどり】

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6人兄妹の、6人それぞれの視点で描かれているこの小説。タイトルであり、物語の舞台でもあるカフェの店名「ほしやどり」は、設計士だった父が、そんな思いを込めてつけた名前です。
すでに他界してしまった父の願いをこれでもかというほど詰め込んだカフェ星やどりは、母がお店を切り盛りし、家族みんなの憩いの場所になっています。
本作に登場する言葉の中で、とりわけ印象的なものを取り上げることで、作品の持つあたたかい雰囲気をお伝えしたいと思います。

一番最初の主人公は、大学4年生・長男の光彦です。彼は就職活動中で内定を一社ももらえておらず、人生の岐路で直面した困難に苦しんでいます。そんな光彦は頑に、亡くなった父が好きだった、母が作る“ビーフシチュー”を食べようとしません。彼は、大きすぎる父の背中を、越えなければならない壁のように感じていたのではないのでしょうか。本当は自分にとって大切なものでも、心が弱っている時にはないがしろにしてしまうことがあるでしょう。そんな自分の弱さに向き合う強さをあたえてくれる誰かはあなたのそばにいるでしょうか。

「お父さんとお母さんの子だから、大丈夫。」

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長女である姉からかけられた言葉は、父が生前光彦に託した言葉でした。こんなに何も出来ないのに、こんなにしょうもないのに、大丈夫なんかじゃないのに。そんな気持ちが光彦を覆います。どんな誹謗中傷の言葉よりも、優しさに傷つくことがあるのが人間です。一番近しい家族だからこその難しさがあると思います。

「それでも、私には必要」

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就職活動中も、弟の同級生で、父が昔リフォームを担当したお家の娘・あおいの家庭教師をしていた光彦。人生の先輩として教え導くべきあおいに対しても光彦は弱音をはいてしまいます。
「先生はたばこもスーツも似合わないし猫背だしださいし、今日だってこんな風に遅刻とかするし、お情けで雇われているだけかもしれないですけど、私には必要。」

だめな自分と向き合うのはとても勇気がいることで、なかなか出来ることではありません。弱い自分を認めてしまうと、自分を肯定するのが難しいです。そんな中で、弱い等身大の自分を認めてくれるあおいの言葉はどれだけ光彦の光になったのでしょうか。

物語は6人の兄妹それぞれの視点で、繰り広げられます。家族のもとにいくつかのハプニングがおき、今までの生活とは同じようにはいかないことも出てきますが、早坂家のそれぞれは、各々が自分自身の今を見つめて変わろうと、前に進もうとします。

そんな家族の戦いの先に、父が残した、とてつもなく大きなプレゼントが待っています。

父が残した宝物を知った時、父のお茶目さと、家族への大きな愛を感じます。

ああ、いそうだなと思える登場人物への親近感と、一人一人の弱さと強さと、父の残した魔法。この本には日々を前向きに生きて行くエッセンスがとても多く詰まっています。
さあ、あなたも星の降り注ぐ星やどりを、感じてみませんか?

星やどりの声

  • 著者:朝井 リョウ
  • 出版社:KADOKAWA/角川書店
  • 発売日:2014/6/20

モデルプロフィール

yuka_profile
  • 名前:yuka
  • 生年月日:1993/6/5
  • 出身地:神奈川県
  • 職業:会社員
  • 最近の悩み:寒くて布団から出るのが辛い

(カメラマン・Rimi Sakamoto/個人サイト・http://www.rimisakamoto.net/

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WRITERこの記事を書いた人

渕田 悠子

アッパー系な会社に勤めながらもインドア派を貫く社会人3年目。本の虫だった母の影響で、幼少期からの趣味は読書。読むのはもっぱら小説と漫画で、今のお気に入りは大好きな後輩におすすめされた、よしながふみ先生の『フラワー・オブ・ライフ』と、会社の先輩におすすめされた原泰久先生の『キングダム』。二作とも、私の心を震わせまくった作品です。 皆さんに、心が震える最高な本との出会いを提供できればと思ってます。