今回は、 自分自身もこの世界も強くも綺麗にもなりきれていないけれど、 それでも前をむく勇気がもてるような小説を取り上げます。
夏から秋に、そして冬に。少しずつ寒くなるこの季節は、 からだも、心もバランスを崩しがち。そんなあなたに、 ちょっとだけ心温まるようなストーリーをお届けします。
『星やどりの声』/朝井 リョウ
6人兄妹の、6人それぞれの視点で描かれているこの小説。 タイトルであり、物語の舞台でもあるカフェの店名「ほしやどり」 は、設計士だった父が、そんな思いを込めてつけた名前です。
すでに他界してしまった父の願いをこれでもかというほど詰め込ん だカフェ星やどりは、母がお店を切り盛りし、 家族みんなの憩いの場所になっています。
本作に登場する言葉の中で、 とりわけ印象的なものを取り上げることで、 作品の持つあたたかい雰囲気をお伝えしたいと思います。
『神様のケーキを頬ばるまで』/彩瀬 まる
大事にしたかったものがわからなくなって、 がんじがらめになって、どうしても抜け出せない。 みなさんもそんな経験が一回くらいはあるのではないでしょうか。
この物語の登場人物も、 とても好きな人にただただ好きになってもらいたいだけなのに、 目の前にいる好きな人のことが全然わからなかったり、 周りの誰も気にしていないような事が気になってしまうくらい卑屈 になってしまっていたり…。そんな彼らの不器用さが、 時には自分を見ているようで痛くて、時に微笑ましくて…本作は、 場面の一つ一つが日常に重なっていくような感覚を覚える物語にな っています。その中でも思い入れの強い場面を紹介していきます。
『砂漠』/伊坂 幸太郎
この記事を読んで下さっているあなたは、大学生でしょうか、 社会人でしょうか。かくいう私は現在社会人ですが、 中高生のときは「大学生」という言葉の響きだけで、 とてもわくわくしたものです。しかし、 実際に大学生になってみると、 なんてことのない日常が待ち受けていました。『砂漠』も、 なんてことのない日常の男女5人の大学生活の物語です。
でもそこには、伊坂幸太郎だからこその、「特別」 が少しずつ散りばめられています。 そうそう大学生ってそうだよね、という日常と、え? そんなことってある?という非日常のバランスが巧妙で、 まるで自分自身が物語の主人公になったようにどんどん引き込まれ て行きます。
今回はそんな不思議で、とても魅力的な『砂漠』 の場面をいくつかご紹介します。
『永遠の出口』/森 絵都
卒業などの節目をテーマにした、女の子の小学校~ 高校卒業までを書いている本書ですが、 今回はその中の一つのエピソードであり本のタイトルにもなってい る『永遠の出口』をご紹介します。
一年の終わりと始まりが近づいてくるこの季節は、 自分を変えるチャンスがそこかしこに転がっている気がします。
本書の主人公・紀子の人生を垣間みることで、 チャンスに繋がるものが人生にもたらされるかもしれません。
『真夜中の五分前』/本多 孝好
自分が一番自分を知っているはずなのに、 誰よりも自分がわからなくなる。 そんな瞬間をみなさんも感じたことがありますか。
理屈ではわかっているけど、心がついていかない。
大好きな人なのにこれでもかと傷つけたくなる。
とても悲しいはずなのに涙が出ない。
そんな瞬間にわたしは、 自分のことがわからなくて怖くなることがあります。真夜中の五分前は、 自分を自分たらしめてるものが何かを考えさせられる作品です。
『黄色い目の魚』/佐藤 多佳子
みなさんは自信を持って、「好き」 と言えることやものがありますか。私にとっては本(特に小説) がそうでした。 今生きているこの世界以外を体験することができる本の世界。 私のことを過去にも、未来にも、連れて行ってくれる魔法。
『黄色い目の魚』は、好きなものを通じて、 高校生の女の子と男の子が、彼ら自身や、 二人の間につける関係の名前を少しずつ変えていく物語です。
『阪急電車』/有川 浩
この文章を読んでくれている皆さんの中にも、 中学や高校の通学や、会社の通勤時に毎日決まった時間・ 決まった車両に乗っていて、なんとなくこの人毎日いるなあ、 なんて覚えてしまった事がある方がいらっしゃるのではないでしょ うか。
『阪急電車』はタイトルの通り、阪急沿線の、 今津線を舞台にした小説です。
さあ今日はどこの駅でどんな人が、 どんな物語を繰り広げているのでしょう?『阪急電車』に乗って、 旅をしてみましょう。
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