「書くのも話すのも危険なもの」をあえて書いた『残穢』。あなたは手に取ることができますか?

小野不由美氏は、私が子供時代に愛読していたホラー小説(「屍鬼」や「悪霊」シリーズなど)を書かれていました。個性的な登場人物がコメディのような会話を交わしているテンポの良さと、相反して身がすくむようなホラー描写に、飲み込まれたものです。

 その小説のあとがきで小野氏は、読者の体験談を募っていました。今回はそのうちの一つをピックアップし、さらにご自身で関わっていかれた体験ルポです。ホラー作家の表現力がいかんなく発揮され、事件が深堀されていくほどにおどろおどろしさが増してきます。さらに、現実にあったことだと思うと、怖さもひとしお。久しぶりに引き戸の隙間や隣家の物音にびくびくさせられました。

残穢(ざんえ)

  • 著者:小野 不由美
  • 出版社:新潮社
  • 発売日:2015/7/29

 転居先で起こる奇怪な現象

「新しく引っ越した家で、変な音がする」。小野氏のもとに届いたこの手紙から、全ては始まります。手紙を送った久保さんは2001年11月に転居し、新しい生活に慣れてきた12月頃から異音を感じ始めたといいます。リビングの仕事机に向かっていると、背後の和室から、畳を擦るような、さっ、という音が聞こえるようになったというのです。

それ以来、リビングで仕事をしていると、同じ物音を聞くことがある。振り返ってみても音を立てるようなものは何もない。見守っていても音がしない。なのに和室に背を向けて仕事にかかると、ささっという小さな音がする。振り返らずに聞き耳だけを立てていると、同じ場所をゆっくりと右から左へ、左から右へ動いて聞こえる。まるで畳の上を何かが往復しているかのようだった。

音の正体は、左右に揺れる“帯”?

久保さんも住宅には色々な音がするもの、と気にしてはいなかったが、振り返った時に一瞬見えた気がしたもの――金糸の刺繍の入った着物の帯のようなものだったといいます。小野氏はふと記憶に引っかかることがあり、過去の手紙を見返してみると、屋嶋さんという女性からも、似た体験談が寄せられていました。それはなんと、久保さんの住む同じマンションのことだったのです。 

久保さんはその部屋を訪ねましたが、住人が変わっており、音を聞いたこともないと言われます。興味を抱いた久保さんは、同じマンションや近所の方に「変なことを経験しなかったか」を訪ねます。すると、そのマンションと隣の団地は、「人が居つかない」と噂になっていました。管理会社に確認しても、事故物件ではないという回答。しかし、その後も次々と聞かれてくる、前住人達の不思議な噂。小野氏と久保さんは、建物と土地の来歴を調べていきます。

 怪異に近づくのなら、それなりの覚悟をすべき

調べる中で知ったのは、その土地で過去に起きた怪奇現象の数々と、その原因と思しき事件でした。しかし、それは怪異の一端でしかないという恐ろしい事実が――。

怪奇現象の調査で名の知れている方を協力者に迎え、謎を追っているうち、小野氏、久保さん、協力者の身に危険なことが起こっていきます。協力者が「書くのも話すのも危険なもの」と言うほどの恐ろしい怪異に触れたからなのか?

怪異を畏れるなら最初から近づくべきではない。近づいたせいで何か起きたら、それは怪異のせいではなく、あえて近づいた自分のせいだ。 

その一連のルポである今作を、あなたは手に取ることができますか?

残穢(ざんえ)

  • 著者:小野 不由美
  • 出版社:新潮社
  • 発売日:2015/7/29

モデルプロフィール

  • 名前:辻井 沙英
  • 生年月日:1997/09/05
  • 出身地:大阪府
  • 職業:慶應義塾大学
  • 受賞歴:Fresh Campus Contest 出場中
  • 趣味/一言:キティちゃんと抹茶が大好きです♡
  • 最近の悩み:サンリオピューロランドに行けてないこと
  • Twitter:@saennukirarinpa

(カメラマン:伊藤広将)

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

本to美女選書

WRITERこの記事を書いた人

神谷京香

子どもの頃は200文字の作文にも苦労していたが、小学5年生の時にCLAMPさんの漫画に出会い、唐突に覚醒。いきなり2000文字以上の大作を書きあげるようになる。幼少時は童話で文字を、小学生の時は漫画で漢字と歴史を学び、高校生になる頃には弁当箱サイズのミステリ小説を読みあさるように。現在はジャンルを問わず活字なら何でも読む節操なし。趣味は寺社仏閣/滝めぐり、猫、夜散歩、声楽、一人カラオケ、日本酒とワイン。