細い伏線の糸が幾重にも折り重なる。マリオネットを操るその糸を手繰り寄せ、操者を暴くことができるか!?『マリオネットの罠

今週は、夏の夜の暑さをを忘れさせてくれる「ゾクっとするミステリ・ホラー本」をお送りします。

 雨の夜、人家もまばらな国道沿いの林の中でトラック運転手が殺され、血まみれの若い女性が雨の林に消えた――。

殺人事件から1か月ほど後のこと。フランス帰りの研究生、上田修一は帰国挨拶のため顔を出した大学の研究室で、恩師から知人の姉妹へフランス語を教えるよう頼まれます。3か月の住み込み食事つきで100万円という旨すぎる話に乗り、レンタカーで殺人現場近くの勤務場所に向かっていました。着いたのは、高い塀に囲まれた沈鬱で荘厳なレンガの館。しばらく暮らすうちに、地下に幽閉された娘「三女」を探り出してしまいます。

その清楚な姿は無垢な一輪の花を思わせた

 (中略)

 「私は悪い娘なの。本当にそうなのよ。だからこんな事をされても、姉さんたちを恨む気にはなれないわ」

 彼女は大きく一つ息をついて言った。「私、人を殺したの」

20歳の時に下男を殺したと告白する三女。父に「ガラスの人形」と呼ばれた、夢想と現実の間に危うげに立っている少女のような女性に同情した上田は、彼女を部屋から出してしまいます。その直後に彼女は姉と使用人を殺し、姿をくらましてしまいます。そして、堰を切ったように起こる、連続殺人事件。

彼女は何を思い、どこでどうしているのか――?

マリオネットの罠

  • 著者:赤川次郎
  • 出版社:文春文庫
  • 発売日:2016/11/1

動機も関係性もない連続殺人。警察は真相を暴けるか?

三女が館から失踪した後、都会のホテルで弁護士が刺殺されます。それから作曲家、医師が次々に殺されていきます。全て凶器は古美術風の絵が特徴の小柄なナイフ。目撃者によると、直前まで若い女性と話していたらしいと分かります。警察は連続殺人事件として犯人を追いますが、共通の知り合いがいるわけでもなく、動機や手がかりらしいものが全く上がらず、捜査は難航。

人も十人以上惜しみなく(?)殺している。

これは、解説で作者の言として紹介されている言葉です。過去の別の事件を含めれば、確かにそれだけ殺人があったかもしれない、と気付きますが、いざ思いだして数えてみようとなると、なかなか苦労するほど次々と殺人シーンが書かれています。

その全ての犯人と動機、それが物語をひも解く糸になっています。その糸を手繰り寄せると、マリオネットを動かしている操者の姿が浮かび上がります。

終章での解説に肝が冷える!

この作品の章タイトルは、全て舞台になっている場所です。

「第一章 館(やかた)」は、上田がフランス語の家庭教師をしていた館のこと。「第二章 街(まち)」は連続殺人が起こっていく都市のこと。そして「第三章 園(その)」、「第四章 宴(うたげ)」、「終章」と続いていきます。

私には、終章まで「操者」も「動機」も見抜けませんでした。次々に起こる事件(殺人だけではなく)に、全く関連性がないように見えたからです。しかし、伏線は開始30Pも行かない部分から張られています。読後に思わず本を見返して確認してみました。すると、各所で細い伏線の糸が幾重にも張られ続けています。重なりすぎて操者の顔を隠してしまっているのです。

第四章では時間軸で語られていくストーリーに背筋がゾクゾクしてきます。果たして、「宴」で笑っているのは誰なのでしょうか?

そして、「マリオネットの罠」とは何だったのか、あなたは終章を読む前に、気付くことができますか?

マリオネットの罠

  • 著者:赤川次郎
  • 出版社:文春文庫
  • 発売日:2016/11/1

モデルプロフィール

  • 名前:斉藤初音
  • 生年月日:1995/6/16
  • 出身地:大阪府
  • 職業:慶應義塾大学
  • 受賞歴:受賞歴:Miss KJ Contest 2017 ファイナリスト/keiocollection2015
  • 一言:頑張ります!よろしくお願いします。
  • Twitter:@misskj_no2

(カメラマン:伊藤広将)

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WRITERこの記事を書いた人

神谷京香

子どもの頃は200文字の作文にも苦労していたが、小学5年生の時にCLAMPさんの漫画に出会い、唐突に覚醒。いきなり2000文字以上の大作を書きあげるようになる。幼少時は童話で文字を、小学生の時は漫画で漢字と歴史を学び、高校生になる頃には弁当箱サイズのミステリ小説を読みあさるように。現在はジャンルを問わず活字なら何でも読む節操なし。趣味は寺社仏閣/滝めぐり、猫、夜散歩、声楽、一人カラオケ、日本酒とワイン。